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サイバトロン星に無表情に、無感動に、整列した傭兵の集団を見る男が一体いた。正確さを求めるならばその肩には鳥型の者がいる。
ディセプティコンの最高にして最悪の情報収集能力とそれに比類し得る頭脳を持つ男。そしてその配下であり共謀者である鳥。
サウンドウェーブとレーザービークだ。
時々レーザービークはサウンドウェーブに顔を寄せコソコソと何事かを囁き、無言で頷けば口元を醜く歪ませる。
一瞬静まったかと思えばけたたましい嘲笑の声が上がった。
傭兵達はそれを忌まわしく思うでもなく避けることも、かといって賛同もせず黙する。これはこの男に付け入る隙を与えない現状では最良の策であった。
しかし最良は最高になれない。
バイザーの奥より放たれる光が興味を失い冷たいものを含んで行く事を止められる筈もない。
その度に目を弧の形にしてゆく鳥が大層恐ろしい。
傭兵団の中でも一際若い集団、そのリーダーであるロボットの体は冷え切り、無様に震えていた。
ああ恐ろしい、と隣に座る者に縋るような目線を送る度に団の、延いては自身の命を短くしているなどとは本人だけが気付いていない。


「閣下に」


サウンドウェーブが口を開くとただでさえ張り詰めていた空気が緊迫する。


「お伺いを立てるとしよう」


取り次いでおこう、などの裁量だろうと予測していた一同は目を見開いた。
閣下に…容赦などなくただ一度の失敗をも許容しないという噂のメガトロンに伺いを立てるなんて死に直結する返答も同然であった。
微かな期待を踏みにじられ、震える。
鼻で笑うなどの反応すら見せず踵を返す。
そんなとき傭兵の中から声が上がった。


「情報参謀殿。それは私の話を聞いた上で判断して頂きたい」


進み出て話し出したのは傭兵の中でもトップクラスの実力を持つが故に認められない女。名をナイトレイという。

振り返りはしないが立ち止まると、聞いてくれる合図だと判断しナイトレイがその"話"を始める。
纏めて言ってしまえばこの集まりの原因となった、作戦の失敗について。





話を終えてから漸くサウンドウェーブは振り返った。
その感情を含まない視線をナイトレイは正面から受け止める。
そんな長くもない時間を永遠に思い、見返す。


「つまり、作戦の失敗は…ディセプティコン側のミスが原因か」

「その通り。我々は契約通りの働きをしたまで」

「…そのことも伝えておこう」


サウンドウェーブの言葉を聞き、周囲は目を丸くした。
メガトロンは信頼する情報参謀の言葉を聞いて傭兵団への処分はなくすだろう。そのくらいの分別はある。(平常心であるならば、だが)
ざわめきそうになるがナイトレイの手がスッと上がると落ち着きを見せた。


「手間を掛けさせて申し訳ない」


ナイトレイ自身も気を抜けば安堵の溜め息をついてしまいそうになる心を落ち着けようと頑張っていた。


「…名乗れ」

「、ナイトレイ…という」

「覚えておこう」


文句を言うレーザービークを一瞥し今度こそ立ち去った。

完全に姿が見えず、検知されないであろう距離になって漸く一同は肩の力を抜いた。
ナイトレイの肩を労るようにかつんと叩いた者もいる。
それで漸くナイトレイは笑みを浮かべた。





サウンドウェーブとレーザービークは聞こえないだろうと思って油断した傭兵達の声を聞いていた。
この程度の距離、なんてことはない。
バイザーの奥に隠れた本心を探るようにレーザービークが覗き込む。


「サウンドウェーブよぅ。何であんなこと言ったんだア? アンタはそんな事で情けを加える様な奴だったか!?」

「………分からないか」

「あ?」


目論みが失敗し機嫌の悪いレーザービークとは正反対でサウンドウェーブは上機嫌だった。
いつもだったら口答えするのかと静かな脅しに入るのに、不思議そうに肩の鳥を見遣る。
そこでレーザービークは気がついた。


「あの娘を…気に入ったってのか」

「美しい声をしていた。度胸がある」

「…ふぅん」


そんなもんかね。
クツクツと嗤うサウンドウェーブに胡乱げな目を向ける。


「壊してやろう」

「…は、ハハハハ! そうだよなァそうこなくちゃな!」


ああ楽しみだ。





後書き
こんにちはかぴばらです。
出会いの話です。
ナイトレイは忘れられたと思ってるしサウンドウェーブは特に掘り返すことのない過去。
本編に繋がるきっかけでありますがこれがなくてもいずれ何かが起こったかと^^

というわけで、リクエストありがとうございました!

20120225

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