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今日、初めて地球に降り立った。

遠くから見たときは碧と蒼の中々美しい星だった。(我が故郷セイバートロンには敵わぬがな)だが間近で見ると思ったより雑多なものだ。
ワサワサと生える草を掻き分け森林を進んで行く。落ち合う場所はもう少し先だ。
同じように見えて同じではない木々の間を摺り抜ける。あと少しだ。
いつになく心が躍るのが自分でも分かる。浮かれきっているのだ。
自覚は有るのだがなと言いつつ顔が緩んでしまう。
尤も他人から見たら変化している事にも気付かないだろうが。

明るい拓けた地が目前に広がる。
青々とした深緑の大地を翔ける鳥。がらりと雰囲気の変わる崖から荘厳なる滝が降りて、太陽に照り弾む湖は輝いている。その水辺でたむろする鹿達。なんと神秘的な光景だろうか。
だが、それが目的ではない。果たして居るのかと周囲を散策する。
誰も見当たらない。
あの約束は嘘だったのかと意気消沈しているとカツンと肩を叩かれた。
振り返ろうとすると緩やかに首を…急所を捕まれる。
もしかしなくても、彼女だ。


「どうだった?この風景。私の秘密の場所なんだ」


口を開いて早々に言うのは久しぶりだとか元気だったなどの挨拶ではなく感想を求めるもの。
それが一層彼女らしさを際立たせて、寧ろ安堵した。
彼女は変わってはいないのだと。


「…美しい光景だとは思うが、トールと一緒に見ないと味気無いな」

「相変わらず私を喜ばせるのが上手ですこと」


ケラケラ笑うトールは本当に嬉しそうだ。
首から手を離され漸く彼女と向き合えた。


「久しぶりだなトール」

「レーザーウェーブ、久しぶり!」


トールサイバトロンだった。
そして私ことレーザーウェーブはデストロン。
相容れない…相容れてはいけない筈だった。


「ずっと言おうと思ってたの……ごめんね」


突然トールが謝ったがソレの理由が分からない。思いつく事をつらつらと並べてみる。


「何がだ?私の作ったエネルゴンクッキーを平らげてしまった事か?それともいつだったか仕事の成果をパーにしてくれたことか?」

「なっ!…ち、違う。確かにそれもだけど、400万年も一人にさせてしまった方!」


ああ…そっちか。


「構わないさ。トールが生きていてくれた。メガトロン様も生きていて…私はそれで満足だ」

「だって…私はただスリープ状態だっただけ。でもレーザーウェーブはずっと皆を待ってセイバートロンに居たんでしょう?」


辛い思いをさせていたと思うと…とトールは俯く。
それがどうにも愛しく左手で彼女を抱き寄せた。驚いた様に体を震わせ更に頑なに謝り続ける。
本当に良いんだ。


「ちょっと不安だったときも有ったな。このまま一人でセイバートロンに居るのではないかと考えた時期もあった。…でも、結局は生還を信じた」

「うん…ありがとう」


どうかこの幸せな時間が崩されませんように。





20110810

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