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「かっこいいな…」
トールはどどんと大胆に路駐されているソレに近づいた。
見れば見るほど惚れ惚れとしてしまう。
ちょっとぐらいの事では傷一つ付かなさそうなボディ。
暗い色を中心とした塗装には渋みが感じられる。
「君みたいなのに一度でいいから乗ってみたいよ。…おお錆も全くない!キチンと手入れされてる…あ、」
褒め言葉をつらつらと重ねるが突如止めた。
気になる点を発見したのだ。
「細かい所には砂埃が溜まっちゃってるな…」
バンパーなどの細かい所は何故か汚れている。
トールはキョロキョロと辺りを見回した。
「うん…うちの前で路駐してるんだし、これぐらいいいよね。駄目って言われても困るけど」
一人頷くと一度家に戻り車磨き布を持って来た。
そして意気込んで掃除に取り掛かる。
「…こんなものかな」
よし、と彼女が満足したときにはもう1時間程経過していた。運転手は未だ帰ってこない。
作業中も注意を払っていたが気配のかけらも無かった。
よっこいせとおっさん臭い掛け声で体を起こす。玄関へ向かう途中背後から光が当たった。
振り返る。
「御苦労だったな」
巨大なロボットがいた。
あれか、トランスフォーマーか。混乱する頭で、ニュース等に良く出る集団を思い出す。
サイバトロンかデストロン、どっちだろう。
脳内の自分が囁く。
一人は「きっとサイバトロンよ。だってデストロンがこんなところに来るわけないじゃないの」、もう一人は「コレはデストロンだろう。この流れ的に」ときた。
トールの結論は。
「こんな悪人面のサイバトロンはないだろうよ…」
「根拠はともかく正解だ。人間」
正解だけど嬉しくないと、げっそりしながらトールは呻いた。
「何なの一体!?」
「俺はコンバットロン部隊に所属するオンスロート。貴様の褒め言葉は中々効いたぞ」
質問にも答えず淡々と喋るオンスロートに頭を抱えたい。
そうかしまった聞かれてたというか彼に直接言っていたのか、と気付いて顔色が悪くなる。
「っち、煩いな…聞こえているスタースクリーム。もう少し落ち着きというものを覚えろ。………おい人間」
スタースクリームという者と通信しているのかトールではない、此処に居ない誰かへ言葉を返すオンスロート。
その間もトールは驚愕で足を動かせられなかった。
視線を漂わすと破壊された庭が見える。
急に話を振られて、上擦った声を返してしまった。
「へ、あ、はい」
「度胸も中々だ。気に入ったぞ」
単に話し掛けられたから返事しただけだというのに何故か気に入られた。
今日は厄日でないか。
「名乗れ」
「トールですが、」
何の用だったのですか。
今度こそと決意を固めて仰ぐとオンスロートは見えないながらも満足げな表情で。
「また来る。トール、今度はもっと全身頼むぜ」
最後だけちょっとワイルドに決めると心なしか、本の僅かに照れてトランスフォームして去ってしまった。
いや待って何だったの。
途方に暮れるトールは取り敢えず結論を出した。
変形出来るってのも、どっちの姿もかっこいいからまあ良いや。
20110809
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