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通路向かいからやって来る男を見てトールは俯いていた顔を上げた。


「オ、オンスロート…」

「………」


震える声で声を掛けてもオンスロートは何も返さない。それどころか彼女の存在など無かったかのように横を通り過ぎた。
目を大きく開き、通り過ぎた男の背中を何も言えず視線で追いかける。
オンスロートは、振り返らなかった。
だからトールの表情が歪んだ事に気付かない…気付けない。





「あーあー…何やってんだ、おれたちのリーダー殿はよぉ」


その様子を曲がり角からこっそり覗いている集団が居た。
コンバットロンだ。
一番下にスィンドル、押し潰すようにブロウルが上、更に上からボルター。それらの背後で呆れたようにしているのがブレストオフだ。


「そんなに気にしなくてもいいだろう」


ブレストオフが不満気に口を尖らせる。ばぁかと言ったのはあのブロウルだ。


「こんな面白そうな事、放っとけるかよ」


バカにバカと言われた。
衝撃でブレストオフは固まった。
しかし彼の様子をちらりとも確認しない他三名が丸くなって会議を始めるので慌てて輪に入り込む。


「俺的には、敢えてこのままにして楽しむのも有りだと思うのだが」


のっそりしながら物騒な意見を述べるボルターには真っ先にスィンドルが反対した。
うんうんとブロウルが隣で頷く中、真剣な表情で提案をする。


「ここでオンスロートに恩を売るのもいいんじゃないかと思うんだけど?」

「オンだけにか」

「…ブレストオフ……」

「なんだその哀れみの目は!?」

「すまない…まさかお前がそんな事を言い出すとは思いもよらず…な」

「ああ。あのお貴族様趣味のブレストオフが下手くそなりにでも冗談を言う日が来るとは、明日はコンボイが降る…あ、いやこりゃいつも通りだ」

「誰か純粋にオンスロートの心配をしてやれよ…」


流石に哀れみを覚えたブロウルであった。
気を取り直してブロウルは手を打ち鳴らし皆の注目を集めた事を確認して先日ビルドロンのグレンを中心にして共に考え、まとめた意見を伝える。
それを聞き、グレンが考えた作戦なら大丈夫なのだろうと不承不承に頷く一同の前で満足げに腕を組んだ。


「ボルターはトール、ブレストオフはオンスロート。スィンドルは舞台セットな」

「任せてくれ!」

「し、仕方ない。俺が居なきゃ話が進まなさそうだから参加してやろう」

「はいはい、了解。そのまま空から連れて来てやろうか?」

「誘拐チックだな…」

「なにか言ったかスィンドル?」

「いいや何も言ってないがね?」


ボルターとスィンドルの軽口の裏で、ブレストオフがブロウルに尋ねる。


「お前は何をするんだ?」

「おれ? おれは…現場総監督って感じ」


ケロリと答える彼に、グレンの英断によくやったと言ってやりたい本心を抑え、そうかとだけ答えた。
このバカに役割を与えれば自覚も無く作戦をめちゃくちゃにしてくれたであろう。何時もオンスロートの立てた作戦でポカをやらかすのがこのブロウルだ。普段ならそれもまた予想通りとオンスロートが冷静にカバーするが、この作戦に彼は居ない。
全く、壊すのはサイバトロンの連中だけにして欲しいものだ。





オンスロートの不機嫌さを察した者たちは攻撃参謀の逆鱗に触れないようにそっとその場を立った。
そしてそれを当然のように受け取り空いた席へと腰を下ろす。背に凭れて足を組み、片手で肘をつき反対の手でカツカツと椅子を叩く。
これは冷静さを欠いた時の癖だ。
昔から何度も直そうとしているのだがどうにも上手くいかない。溜息を吐いて数分もしないうちにまた乱暴に席を立とうとする。


「オンスロート」

「…何だ、ブレストオフ」

「…不機嫌そうなものだ。まさか戦闘以外で貴様のこんな姿が見れるとはな」

「そんなにスクラップになりたいのか?」

「遠慮しておく」


座りなとチームの仲間に言われてしまっては仕方なく、再度腰を下ろして面倒そうに足を組む。プライドの高いブレストオフならこの態度に激昂しすぐさま去ると考えたからだ。
だが、一瞬顔を顰めただけでブレストオフに帰る気はないようだ。


「トールの事だがな」

「おう。何か問題でもあったか?」

「平然を装うのが得意なことで」

「そんな軽口を叩く為に来たのなら、俺は行くぞ」


茶化していたブレストオフの雰囲気が変わった。
立ち上がってオンスロートの背後に回り込み、そっと肩に手を置き楽しそうに囁く。


「今、面白い事になってるぞ」


言うが早いか、オンスロートは椅子を蹴り、肩に置かれたブレストオフの手を汚物でも払うかのように叩き飛ばし何処かへ…きっとトールの元へと駆け出す。
残されたスペースシャトルは高笑いを続け、オンスロートの背中が消えたところでピタリとやめる。


「はぁ…慣れない事はするものじゃないな」


この俺の手をばっちい感じに振り払いやがって覚えておけ糞リーダーめ!
罵り、ブロウルに任務達成の旨を伝えて通信を切り、真横の壁を殴る。
果たしてオンスロートが本調子を取り戻したあと、報復出来るのだろうか。










後書き
主人公の影の薄さに笑えてきますw
仲間内のやり取りが偽造すぎる…喋り方も。
だって資料が少な過ぎるからさ…泣

130304

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