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スタースクリームの特徴的な声が基地の中に響いている。彼を引き止められる者は少ない上、止める理由がない。寧ろ一緒になってわあわあ騒いでいるようだ。
ここにデストロンの偉大なるリーダー殿が居たならきっと一喝して黙らせ解決策に向けて案を練り始めるのだろう。しかし彼は今席を外している。





オンスロートは何故かやる気が起きなかった。
スタースクリームなど、やろうと思えば力尽くで止められる。普段ならばその傲慢な態度を潰してやろうと動くのだがどうしてだかそんな気分になれない。

離れたところで壁に寄り掛かり溜め息を吐けば彼の様子を気にしてブロウルが正面に立ち、表情を伺ってくる。


「オンスロート、どうかしたか?」

「いや…なんだか調子が出なくてな」


ふうん、と相槌を打ってブロウルはこてんと首を傾げた。


「トールが居ないからじゃねぇか?」

「、は」


何を、と言ったつもりだった。しかし彼の喉は張り付いてしまったかのように音を出さず、喉の奥から微かな喘ぎしか出ない。


「やっぱりそーだろ! いつも隣にあの女が居るもんなぁ」


ニヤニヤ薄笑いを浮かべるブロウルに殺意より先にオンスロートの中で冷静な言葉が囁く。
認めちまえ、と。
黙り込んだコンバットロンのリーダーの様子が珍しく、どんな表情をしているか見てやろうと覗き込んだブロウルの顔に、無意識に伸ばされた右腕の甲が叩き込まれる。
痛え、と叫び声を上げて顔を抑え地面に座り込むブロウルに視線が集まった。注目の的から外されたスタースクリームが文句言いたげにオンスロート達を見ている。
壁から背を離し、溜め息を吐いてブロウルの腕を掴み引き起こす。


「ちょっと用事を忘れていたようだ」


嘯いている事は分かっているが変に引き留め怒りを買ってもなぁとスタースクリームも退室を許した。

ゆったりとした足取りのオンスロートの背中を見つめ、案外鈍い奴なんだなと考えながら赤らんだ鼻元を摩っていると周りに集まってきたコンバットロンの、ブレストオフが堪えきれないように、スウィンドルが遠慮なしに、ボルターが鼻で笑う。
貧乏くじを引いちまったかと考えつつ、まずはスウィンドルの胸ぐらを掴んだ。





オンスロートは実際会ってみればこの感情が彼女に対するものなのか分かるだろうと、トールの下へ向かう。
目指すはメガトロンの居室だ。
メガトロンがコンボイから受けた傷を甲斐甲斐しく治しているのだろう。スパークの隅がチリリと痛むのに気付かない振りをして悪態をつく。


「メガトロン様、」


扉を前にメガトロンへ通信を入れようとしたとき、タイミング良く扉が開いた。
鉢合わせたオンスロートとトールは目を見開いて見つめ合う。


「オンスロート…?」

「………」


見上げながらトールが声を掛けても応答がない。
首だけをトールへ向けるオンスロートは何やら言葉を探っているようだ。


「どう、」

「誰かおるのか、トール?」


トールがもう一度尋ねようとしたとき、扉の更に奥から低い声が響く。
メガトロンだ。


「あ、…いえ、メガトロン様。何でもありません。すぐにサウンドウェーブを呼んできますので、お待ち下さい」


慌てて振り返り返事をするトールは一瞬の躊躇ののち何事も無かったように答えた。
オンスロートの表情が歪む。
そんな彼に気付かず、胸元をぐいと押し扉が閉まる位置まで下げ、トールも退室した。


「何でも…ないか」


痛い。
自分の中でスパークにヒビが入ったような感覚。
その様を悟られまいと強く拳を握り締めた。
トールは悩んだように目を伏せ、ちらりとオンスロートを見上げる。


「ごめんねオンスロート、ちょっと今は先に命令を受けているから…」


後でと告げられ、メガトロンの命令を受けているのであろうトールを引き留められる筈もなく、彼女の背を見送った。










後書き
初めての動揺。
悠々と確かめに行くつもりが、自分よりメガトロンを優先する相手に戸惑ったようです。
途切れちゃった感満載です…。
続きも頑張って書きまーす。あと前の段階の話も書きたい。
よく懐かれていた場面を書きたいんだ!

120220


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