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己は馬鹿か。
先日地球にやってきたフェラーリを見て、トールは怒鳴りたい衝動を抑えようと必死だった。
真っ赤なボディはところどころ鉄の色が見えて。内装もボロボロだ。銃痕も見えるしそのせいか黒っぽく煤けている。
気まずそうに排気したフェラーリにトールは口を開いた。


「ディーノ、また喧嘩?」

「…るせぇ。アンタに文句付けられる理由がわかんねぇよ」


反抗的な言葉に本日数度目の溜め息。
こんなナリして、何百年、否それ以上生きてるというのにまだまだ子供か。


「またサイドスワイプ?」

「…アイアンハイドだ」

「それはそれは…確かにこんな大ダメージ受けてくる訳だ。修業?」

「………違う」

「じゃあ何?」


問い掛けに対し返答は無い。それはだのそのだのと口ごもるディーノに呆れてトールは踵を返した。
こんな馬鹿者にこれ以上付き合ってられない。


「…、」


悲しげな音が聞こえてくる。発信源はディーノ。しかしそれすら無視してトールは靴を鳴らし立ち去った。
人間嫌いの癖に縋るような声を出してしまったディーノだけがその場に佇んでいた。





「っあーもう!追求するしかないじゃん!!」


さっさか歩いてるトールは頭部を乱暴に掻いて、先程とは打って変わった様子で進んでいた。
目指すは黒のトップキック。アイアンハイドだ。
そもそも人間嫌いの癖にいざ何かあったら私に頼ってくるのはどういうことだと疑問が浮かぶ。
悩んでいるうちに目的の人物の下へと到着。
見上げると、トールに気付いて、


「何だ。お前も説教か?」


と声をかけてくる。
違うよと返すと眉間の辺りにパーツを寄せたものだから、先程の事を話してみた。
すると驚いた事に、アイアンハイド自身でも何故挑まれたか判らないようだ。本当なぜだ。


「取り合えず成り行きを語ってよ。予想を立ててみるからさ」

「む…」





要約するとこうだ。
最初は普通に話していた。すると相棒…トールについての話に移行し…何故か怒り出した、と。(アイアンハイドはそれに対応しただけと熱弁を奮っている。レノックスに叱られたようだ)


「相棒って…つまるところ、私?」

「ああ。あいつが何も言わないから俺ばかり話していたんだが…」


話していたのはアイアンハイド。


「うーん…分からない!」

「嫉妬じゃないのか?」


よう、と片手を挙げて現れたのはレノックス。
盗み聞きをしていたようだった。
アイアンハイドの嬉しそうな様子が伝わってきて微笑ましい。


「嫉妬、って…ディーノが、誰に?」

「ディーノがアイアンハイドに、さ」


ディーノがアイアンハイドに。
それはつまりディーノが相棒の話に妬いたということ。


「えっと…相棒は私以外が良かったってこと?」

「いや、」


違くってだな、とレノックスが続け語ろうとする。
そこに真っ赤なフェラーリが突撃してきた。何故か普段以上に真っ赤に染まっている気がする。
引かれかけて青ざめる少佐と突然な仕打ちに憤慨するトップキックを残してディーノはトールを浚っていった。


「ったく、最近の若造は礼儀がなっとらん。一度徹底的に教え込むべきだ」

「まあそう言うなよ。若者の可愛い嫉妬ってヤツさ」





所変わって、トールとディーノ。
運転の荒い相棒に酔わされトールはふらふらとしていた。
流石に心配に思ったディーノが海の側で停止すると真っ青な顔のトールが歩み出る。


「お、おいトール…?」

「うんだいじょーぶ…落ち着いてきた」


ぜえはあと荒い呼吸を繰り返すうちに息が整ってきたトールはディーノと目を合わせる。
背が違いすぎて首が辛そうなのでディーノがしゃがんでやるとトールが嬉しそうに笑う。
以前は絶対無かった気遣いに相棒の成長が垣間見えて喜んでいるのだ。
その視線と表情にくすぐったさを覚えながら言葉を並べ始める。


「何だか…他人に言われるのも照れ臭いっていうか…釈然としねぇ」

「喧嘩の理由を?」

「あーそうだよ、理由さ!」

「…レノックスの相棒が良いんだっけ?」

「ち、違う!あれはだな…その、えっと、あーっと…」


もじもじしたディーノに堪忍袋の緒が切れそうなトールの眼光が突き刺さる。それに覚悟を決めておずおずとディーノが口を開いた。
閉じた。


「まだるっこしいなあ男らしくはっきりとどうぞ!」

「っ悔しかったんだ!アンタの昔を知ってるアイアンハイドが羨ましかったんだよ!」

「へーそうか、い………え?」

「待ってろよ!俺もいつかトールの隣に立つに相応しい男になってやる!」


売り言葉に想定外の買い言葉が並び驚いてトールが口をつぐむ。
意に介さずディーノは更に怒涛の言葉を並び立て華麗なトランスフォームで逃走した。
今の言動を一言で纏めると。
俺だってトールの話を出来るようになりたかった、ということか。


「…精々精進しなよ。それまで私の隣で半人前で収まっとくといいわ」


赤らんだ頬は太陽のせいに違いない。…きっと。





後書き
佐々木様リクエストのディーノでした!
初・きちんとディーノだったので上手くいってるか心配です。
彼はツンツンしてたと思ってたら気付くとデレを見せていそうです^^
本人様のみ煮るも持ち帰るのも破り捨てるのも自由にございます。
相互、そしてリクエストありがとうございました!

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