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「ショックウェーブ」
愛しさを篭めて囁くと彼はゆるゆるとした動作で振り返って、目が合う。
ピンと立った耳がとても可愛らしい。
トールが柔らかく微笑むと心なしか顔を緩ませた。
ショックウェーブは己がこのような感情を見せる日が来るなど思ってもいなかった。
無用な物だと切り捨ててきた…いや最初から持ちもしなかった感情。
かつてトールと会い、あの男メガトロンの部下だと知って僅かに興味が出た。
そこから徐々に親交が深まり、今の仲に至ったのだ。
「ショックウェーブ。私、地球と呼ばれる惑星に行ってくるの」
「…何?」
微笑むトールから出た一言に動揺を見せる。
淡い思い出に浸っていたスパークが一気に現実へと返ってきた。
地球。
原始的で野蛮な有機生命体共の住む惑星。
中でも人間というちっぽけな存在は同じ種族間での争いが絶えないらしい。
そして…メガトロンの居る星。
「あの方が、メガトロン様が私を呼んで下さったの」
「私への嫌がらせか」
「違うわ。今あの方の力になれるのが居ないらしくって…そこで私、ですって」
「情けない。メガトロンがこの軍を任せられない位頼りないというのなら代わりの者を探すまでだ」
苛々しながら吐き捨てるとトールが困った様に笑う。
違う。
そんな顔をさせたいのではない。
「そんなこと言っても…ね?」
「どうしても行くと言うのか?」
「まあメガトロン様直々の要請ですから」
意志は強いらしい。
もう揺らがない目でショックウェーブを見つめる。
「…ディセプティコンの不利になるような事はするな」
「うん」
これもディセプティコン全体のため、と諦めて、トールに出来得る限りの言葉を送る。
「任務が最優先だ。余計な戦闘は避けろ」
「うん」
「余り一人で行動するな。女型は少ないからな」
「ふふふ、分かってる」
「定期的に連絡を入れろ」
「頑張るわ」
「いざという時は構わずスタースクリーム辺りを盾にして逃げろ」
「そうね」
「………死ぬな」
「…うん」
沢山の約束を取り付けて、トールは行った。
20110731
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