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「…ここで卵と塩胡椒を少々、そして先程準備した魔法の粉を振り掛けます。すると?」

「「「するとー?」」」


ブラックアウトが姿の見当たらないスコルポノックを探し基地を彷徨っていると人間の部屋に繋がる窓をぎゅうぎゅうになって覗き込んでいる集団に出くわした。


「何をしている、お前達」


内心うわぁと引きながらも声を掛けると一斉に振り返られた。怖い。


「あ、グラインダー!」

「ちょ、馬鹿ちげぇ!」

「ブラックアウトか。何かあったのか?」


三者三様な反応を返してくるのは上から順にハチェット、クロウバー、クランクケース。


「何かあったのかと聞きたいのはこっちなんだが。俺をグラインダーと間違えるのはまだいいがあいつを俺の名前で呼ぶなよ。面倒臭い」

「ああ、まあ注意しとくさ」


ならいいが、と溜息を吐く。正直なところ早くスコルポノックを探しに行きたいのだがこの三体が問題を起こしていないとは限らない。続きを促すと、何だ気になるのかとニコニコしたクランクケースに肩を叩かれ引き寄せられて彼らの真ん中から窓を覗かせられる。


「…はい、これで美味しそうなハンバーグの完成!」

「だろ!」


理解出来ない。
とりあえず、部屋の主である人間は耐え切れずテレビをそのままに逃げたのだろう。全く臆病な。


「………何かの暗号でも隠されているのか?」

「バッカ、料理を好いた女に作ってもらうなんてよぉ、男のロマンじゃねぇか! ショックウェーブもそう言ってたぜ!」

「待て話が見えない」

「つまりトールにエプロン付けて貰って『お帰りなさいませ、旦那様。夕飯にします? お風呂にします? それとも…』ってヤツをやって貰いてェってことだよ察しが悪いぜブラックアウトォ!」

「ハチェットキモい」

「気持ち悪いぞハチェット」


二秒ほど沈黙した後、顔を真っ赤にしたブラックアウト。


「おいブラックアウト、多分アンタのそれは妄想が進み過ぎだ」










「と、いう事があってだな」

「俺ならトール一択」

「バリケード…」


報告する相手を間違えたようだ。
不快げに眉間辺りのパーツを寄せるとバリケードが薄く笑って馴れ馴れしく肩を叩く。
そしてそのいやらしい表情のまま、


「どうせテメェもトールを選択しちまったから真っ赤になったんだろ。イイコちゃんぶるんじゃねぇよ、素直になっちまえって」


と囁く。
図星だったブラックアウトはうぐ、と言葉に詰まる。


「つまりまずはトールを嫁に貰う必要があるのか」


そこに第三者の声が割り込んだ。
ああんと柄の悪い唸り声を上げて振り向くと、そこに居たのはサウンドウェーブ。流石のバリケードも顔を引き攣らせた。
ゆっくりブラックアウトから距離を取り、また今度な用事を思い出しちまったぜと早口に告げ颯爽とその場から離脱した。
俺とてこの情報参謀殿は苦手なのだがこの状況で俺まで去ったら…。
苦悩するブラックアウトに気付きつつ触れないサウンドウェーブ。


「つまりまずはトールを嫁に貰う必要があるのか」


二度も言うな。
なんて言える度胸もなく、漸く彼はサウンドウェーブの方へと向き直る。



「あくまで、想像の話だ」

「ならば現実にしてみせよう。トールを嫁に貰うからには料理の腕がどの程度のものか調べる必要があるな…それによって主婦か主夫に…」

「あーあーあー俺はそろそろ行くそれでは!」


嫁に貰うのは決定事項かよ、と突っ込む程度の勇気は彼には無かった。





「面白そうな話をしていたな、サウンドウェーブ」


今度はポツンと佇むサウンドウェーブに怖じ気づく事なく話し掛ける者がいた。
いや、その人物なら怯える必要などない。


「メガトロン様」


彼の、彼等の主なのだから。


「嫁に貰うなどとは随分勝手な事を言うなサウンドウェーブ。俺の許可無くそのような事出来ると思うなよ?」


別名、トールの頑固親父ともいう。


「ならば貴方を認めさせましょう」


どちらも勝手にトールの所有権を巡って争いあう。余裕たっぷりなメガトロンと、無表情の奥に覚悟を決めて構えるサウンドウェーブ。
数瞬ののち、強い風が木を揺らすと同時に双方が動く。


「御父様娘さんを下、」

「やらん!」


かいしんのいちげき!
サウンドウェーブはたおれた!


「フッ…三度ほど転生してから出直せ」


決め台詞を吐いて彼の優秀な部下…しかし今となっては娘を狙う愚か者の力尽きた様子に満足して踵を返す。
そしてメガトロンは見た。


「おいトール、けーきとやらを作れ!」

「はいはい、分かりましたよ」

「前に作っていたエネルゴンカレーも中々の物だった、また俺様に献上してもいいんだぞ?」

「ええ分かりました、カレーとデザートにケーキですね」


誰よりも何よりも接近させないつもりだった虫(スタースクリーム)がついていた現実を。
そしてこの後スタースクリームを襲うであろう地獄を浮かべ、上手いタイミングであの二人がメガトロンの視界で話すように仕向けた人物は巨大なミミズの中のモニターで眺め計画通りと微笑んだ。










後書き
こんばんは、ササミです。
チカ様の31000リクエスト「ディセプティコンでほのぼのギャグ」でした。如何でしょうか。
中々長い割に主人公の出番がラスト一瞬となって仕舞いました…すいません。
今回ディセプティコンの中でもどのキャラを出そうか悩んだ末、贅沢に小出しで行こうという結論に達し、こんな話となりました。個人的にはいろんな人にうわーって思われているサウンドウェーブと父親メガトロン様を書けて満足です。
こんな作品でも良ければどうぞお納め下さいチカ様!
リクエストありがとうございました!!

130623

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