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「メガトロンはいますか?」


オートボットとディセプティコンが睨み合い、今にも争いが勃発しそうな空気を阿鼻叫喚の地獄に陥れたのはその簡単な一言だった。
理由は単純明快。
声を掛けたのがオートボットのあのトールだからだ。ドア代わりのシャッターを背にしたディセプティコンがばっと一斉に振り返る。
メガトロン本人も動揺しているようで、


「う、うむ。俺はここにいるぞ」


と口篭る。
ざわめきを意に介さない、ここでは話しにくい事ですからちょっと…というトールの呼び出しに意気揚々と応じ、メガトロンはさりげなく彼女の肩を抱きながら部屋を出て行った。


「…どちらかが倒れ、どちらかが残る……」

「え?」


立ち上がり、呆然と連れ立つ二人の後ろ姿を見つめていたオプティマスが、音を立てて閉まったドアを見つめ、ぽつりと零す。
ディセプティコンがまたオートボットの方へと向き直る。思わずバリケードが聞き返した。


「オプティマス、俺達も戦おう」


ブレードを取り出すオプティマスの後方から、自慢のキャノンを唸らせアイアンハイドが。ノコを回転させてラチェットが更にバトルマスクを下ろしたバンブルビーが。
続々と構えるオートボットの仲間にオプティマスがふっと笑う。


「ああ…ありがとう」

「え」


オプティマスがカシャンと、マスクをした。


「オートボット、トランスフォーム&ロールアウト!!」


さあ、戦いの始まりだ!





一方、メガトロンとトールは向かい合って立っていた。
トールは言葉を選びあぐねているようで視線がコンクリートの床に下がっている。
メガトロンはメガトロンで、今からトールに告白されるのだと思うと抑えようにも抑えきれず口端が歪み破壊大帝に相応しい邪悪な微笑みを零していた。


「あの…ですね」

「うむ。なんだ?」

「す…」


『好きです付き合って下さい』…か。
ど直球に来るのか愛い奴め。ならば真っ正面から受け止めてやるぞ。
メガトロンは告白を受けた瞬間トールを抱き締めてやろうと心の準備をする。
ぐ、とトールの視線が真っ直ぐにメガトロンへと向いた。


「スタースクリームは好きな人って居ますか!?」

「ああ勿論だともそんな些細な事でうじうじしていたのか愚か者めが………ん?」


今違和感があったような。
破壊大帝に相応しくないキョトンと青褪めて項垂れた彼女の首筋に目を落とす。
小さな拳を握り締め震えを押さえ込もうとしている姿が酷く愛らしい。
好き…うん、言ってた。
………スタースクリームとかなんとか聞こえたような?


「そ…そうなんですか…やっぱ…居ますよね…」


トールの返事が返るまで3.25秒。状況を漸く飲み込んだ破壊大帝が口を開く。


「ああ…そうだ」


爽やかな笑顔のメガトロンだが目は笑っていない。トールには悪いが何故あの馬鹿を気にするのか理解出来ないし納得も出来ない。
泣きそうな雰囲気を察しそっと目の前の女を抱き寄せると、装甲がぶつかったのか痛いと声が上がった。


「今は泣くがいい…そしてあの愚か者のスタースクリームは忘れてしまえ。アレもまた辛い恋をしておるのだ…触れてやるなよ」


自分の点数稼ぎと、スタースクリームの事をさりげなく貶して更に直接真実を聞くこと無いよう釘を刺す。これが一軍の
トップに立った先導者の技術だ。


「はい…」


そっと自分の背中に回る手にメガトロンはニヤリと凶悪な笑みを零す。
計画通り。










後書き
突発のもの。これはメガトロンが相手かスタースクリームが相手か…

130609

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