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自分の仕事は人間を救助する事だ。
なんとも曖昧な表現だがそれ以外の言い方をトールは思いつかない。
文字通り、火災から救いだしたり、迷子を交番に送り届けたり。はたま書類の山から助けたり。
だからまさか、基地内で同郷の者を助ける事になるとは思ってもみなかった。しかも珍しい、人間の姿で。


「…大丈夫ですか?」

「…なんら問題ない。オートボットの女に気にされるほどやわではないからな」

「そうですか科学者殿」


立ち上がる所まで見守った後、素っ気なく言ってUターンすると伸びてきた人間のものと同じ手がトールの左腕を掴みその場を立ち去る事を許さない。
振り返ると、


「口封…いやいや、礼をしなければいけない」

「ちょ、そんな必要ありません」

「そう遠慮するな」


口では軽く言いつつ彼の目は殺意に燃えている。
このまま逃げようものなら、この男は容赦無く自分の記憶を消しにかかるだろう。そしてそれを防ぐ術はない。
己がどの選択肢を取るべきかシミュレーションし…当然の如くこの男に着いて行くことになるのであった。





好きなものを選べ、とショックウェーブはメニューを放り投げた。
そして即店員を呼ぶので慌ててメニューを開きオススメの欄に目を滑らす。
結局間に合わず、不思議そうな顔で店員はショックウェーブのコーヒーの注文だけ受け付けて去った。


「呼ぶの…早過ぎませんか」


口を尖らせてメニューをじっくりと見つつ不満を漏らせばキョトンとした顔でショックウェーブは首を傾げる。


「早く注文した方が早く出てくるからいいだろう」

「…一緒の席に着いているのに一緒の時間を過ごすつもりではないのですね」


人間の姿を形取り、人間の街に繰り出したはいいものの、こういった点で未だこの男は常識を身につけていないようだ。
トールの訴えたいことが分からない、と出されたコーヒーにミルクを注ぎつつショックウェーブは言う。


「別にこんなことしなくたって言いふらさないですよ?」


コーヒーを一口飲んで微かに不満そうにショックウェーブは水面を見つめる。


「確証などない。ならばこうして借りを返しておいた方がいいだろう」

「全く、今となっては損な性分ですよ、それ」


注文内容が決まり、人を呼び内容を伝えればさりげなくショックウェーブがもう少しミルクをくれと要求する。
笑顔で了承した店員は机の上に投げ出されたメニューを速やかに回収していく。


「カフェオレって知っていますか?」

「興味ない事を検索する必要などない」

「コーヒーと同量のミルクを足したものです。科学者殿は苦いものは得意ではないようなので、次からはそちらを頼むといいと思います」

「…成る程」


次からは、と言ったのに意外と好奇心旺盛なのか、早速去ったばかりの店員を呼び戻し再注文を行った。
先に出されたコーヒーをぐいと優雅に且つ素早く飲み干し、トールの注文したサンドウィッチを興味深そうに眺める。
苦笑しつつ、サンドウィッチについても解説する羽目になった。





調べる必要などないとひたすらに言い張り、ついぞ自分から検索をかける様子を見せない(なのに目が「気になる!」と全力で訴えていた)ショックウェーブに随分と沢山の説明をしたトールは疲労感に包まれていた。
結局、メニューに乗っていたものを片っ端から教える羽目になったのだ。
すっ転んだところと、甘党なところ…これで、今日二つもショックウェーブの見てはいけない部分を見た気がする。


「意外と人間の姿もいいものだ」


気の済むまで説明を受けたショックウェーブは満足げに頷いている。そして伝票を持って立ち上がると、


「明日も同じ時間、次は向かいの店だ」


と爆弾発言を残す。
え、と固まるトールを振り返ることなく颯爽と会計を行っている。


「向かいって…甘味屋さん…」


明日の自分に頑張れと声をかけてやりたくなったトールだった。










後書き
この後二人で基地に帰ったところを見かけたスタスクが頭を抱えて悩み、フレンジーとバリケードが言い触らして甘味屋さんに変装したオートボットとディセプティコンが押し掛け覗かれることになります。

130429

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