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「で、ジャズ続きを!」
キラキラと輝いた目をジャズに向けているのは先日地球に到着したディーノだ。人間へのぶっきらぼうな態度とはまるで違う様子にこっそり聞き耳を立てていたキューがやれやれと苦い笑いを浮かべ、新しい研究の為に休まず手を動かしている。
「副官って呼べ若造め。そーだなぁ、あの時俺は確かにメガトロンに引き千切られそうだったんだ。だがそこに颯爽と…、」
懐いてくれる可愛い仲間にデレデレした様子で語っているジャズ。トールは彼のところへ足を進めた。
「ジャズ、話があるんだけど…」
「おっ、トールから声を掛けてくるとは珍しいね」
そう、本当に珍しい。普段のトールはジャズが他の人と話している限り決して自分から声を掛けない。その理由をジャズは知らない。
「あー…副官オレそういえば用事があるんでした。また今度聞きますんで、じゃあ!」
一瞬キョトンと二人を見つめたディーノは流れを悟ってニヤニヤしつつ身を翻し、トールはその後ろ姿を無表情に眺めた。
「…おーいトール? 俺に用があったんだろーが。構ってくれねェと寂しくて泣いちまうぜ?」
バイザーで表情は見えないが不満そうな気配が伝わって慌ててトールはジャズに向き直り、申し訳なさそうに視線を逸らしながら言う。
「あ、ごめんごめん。気にしないで………明後日のその、ドライブのことなんだけど仕事が入っちゃって。行けそうにないの」
「…おー。デートな、デート。そーか仕事か…じゃあしょうがねェな」
「本当にごめん」
「いいっていいって! 因みにどんな?」
しゅんとしてしまったトールにあたふたしたジャズが軽いフォローを入れると漸く笑ったトール。
「こないだ一緒に任務をしたNESTの方を乗せて他の基地まで護衛よ」
「…へーえ」
「(トール、止しておくれ…!)」
キューの無言の訴えにも明らかに下がった周囲の温度にも気付かず可愛らしい笑顔を浮かべた。
クソ、とジャズは本来デートであった筈の日まで荒れた気持ちを隠すのに精一杯努力した。だがどうにも収まりそうにない感情は更に増すだけだ。
今のジャズに近付けて尚且つ当たられないのは不機嫌に気付いていない司令官や楽しんでいるラチェット位なものだ。
「そうだ。尾行しよう」
唐突にジャズは思いついた。
気になるなら追ってしまえばいいのだと。
「おちびさん、先はまだまだ遠いけど大丈夫?」
「ああ…な、んとか…あとおちびさんってのはやめてくれよ」
「もっと大きくなったら考えてあげるわ」
「そりゃ人間には一生無理な話だぜ………ぅおえっ」
「ちょ、中で吐かないでよ!?」
二人はどうやら仲良くドライブを楽しんでるようだ。熱い嫉妬の炎がジャズの心の中で燃え上がる。二人は目的地までわーわーと楽しそうな(ジャズにはそう見えた)悲鳴を上げて走っていった。
人間を目的地に送り届けたあと、トールは鼻歌交じりにスピーカーから音楽を流して帰途に着いていた。
そこに無言のソルスティスが寄り添った時、トールの口が開く。
「こんなとこまで一人でお出掛け?」
「………」
依然として何も語らないジャズはトールを誘導する。行き先は人間が居る筈のない深夜の廃墟だ。
「トール。俺は今、猛烈に怒っている…何故だか分かるか?」
到着してすぐにトランスフォームした。
ジャズは腕を組み、トールは何処か上機嫌に向かい合っている。
ケロリとトールは答えた。
「人間と楽しそうだったから」
「そう、人間と…って理由分かってんのかよ!?」
「あ、当たりだったのね」
ふふ、と笑うトールが別人のようでジャズは唖然と恋人を見つめる。
「嫉妬してくれたんでしょう?」
それって愛してくれてる証拠よ。
満面の笑みでジャズの手を握ったトールが小首を傾げて、小悪魔のように思えた。
「ったく…どうしようもない子猫ちゃんだったってことか…」
「そりゃどーも」
手の上で転がされていたということに気が付いた。
不貞腐れながらトランスフォームしたジャズがロボットモードのままのトールの隣に並ぶ。
「トール。俺に追いつけたらキスしてやるよ」
「え、ちょ、ズルい!」
トールに通信を繋いで甘い言葉を囁き、そのままスタートすると予想通り真っ赤になった彼女が猛然と追ってくる。
「これは俺にチューされたいってことでいいんだよな!」
「うるさい静かに走ってよ!」
次の日、道を爆走していく高級車二台を困惑した顔で伝えるニュースキャスターがいたという。
後書き
リクエストの失敗作其の二です。
どうしてこんな流れになった(笑)
121030
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