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罵詈雑言の限りを胸の内で吐き、そのトランスフォーマーは撤退する。しかしそんなに容易く逃げられる筈もなく背後から現れたコルベットが追走を開始した。


「待てよディセプティコン野郎! 尻尾巻いて逃げ出そうたってそうはいかないぜ!」

「オートボットなどにやられるものか。特に頭脳の足りなさそうな者にはな!」

「っ何だと!?」


更にスピードを上げたコルベットはディセプティコンの擬装する車に体当たりをする。グ、と息を飲んだディセプティコンの様子にどうだと笑って二度、三度と体当たりを繰り返す。


「口先だけだなおっさんよ!」


四度目の突撃をしようとした時、コルベットの横に緩やかな曲線を描いた車が付いて彼の名を呼んだ。


「サイドスワイプ、遊んでいないでさっさと撃破しなさい!」

「ああ分かってるさトール。だからそこでオレの勇姿を見ていてくれよ…っと!」

「ちょ、サイドスワイプ!?」


とどめだ。己の最高速度でディセプティコンにサイドスワイプが突っ込んだ時。


「ククク…やはり頭が悪いようだ」

「な、」


お前のような者に傷付けられる程柔なボディは持っておらんとも。
哄笑しながらディセプティコンはトランスフォームと共に飛び上がりサイドスワイプの突撃を避ける。挑発だと気づけなかった為に勢いづいた車体を制御出来ず目前に建つ家屋へ轟音と共に正面衝突した。
残状を見て舌打ちしたトールは、


「だからさっさととどめを刺せと言ったのよあのバカ…!」


と苦い顔でトランスフォームしディセプティコンと向かい合う。相手は屈強なボディを持つ。明らかにトールの分が悪い。


「お嬢さん…一緒にこんな処まで来てしまった己を恨むんだな」

「くっ…」


言い終わると同時に放たれた銃弾が肩を深く抉った。
傷口を抑えて姿勢を崩す。
手負いのトールに余裕を見せて、他のオートボット達とは随分離れてしまい今更助けを呼んでも間に合うまいとディセプティコンは得意げに語る。
トールが家屋の方をちらりと見やると、視線を読んだディセプティコンは無駄だとトールに教えた。


「不憫になぁ。あんな頭の悪い者の所為で死ぬとは」

「確かにサイドスワイプは頭は弱いわ」


怯えを見せず平然とした態度で己を見据える敵に、ディセプティコンは不快気に眉を顰めた。


「味方にまで言われるとは…」

「でもね。私は違うわよ!」


来て、アイアンハイド!
ディセプティコンの背後にそう呼びかければ慌てて敵は振り返り銃を誰も居ないそこに向ける。
その隙にトールは駆け寄りディセプティコンの首を正確に狙った鋭い斬撃を放ち、敵に騙されたと気付いた時にはもう機能を停止していた。


「馬鹿は貴方の方だったわね」


もう物言わぬ死体にそう吐き捨てると武器を収めてサイドスワイプの突っ込んだ家へと駆け出す。
大きく破損したその先を覗き声を掛けると不機嫌そうに返事が帰ってきたのでとりあえずは生きているようだ。


「相変わらず無駄に頑丈ね」

「る、せぇ…」


交戦中、既に呼んでおいたオートボットと人間の仲間達がタイミング良く現れると、慌てて駆けつけサイドスワイプを助け出しその様子を呆れた様子で見つめたトールは踵を返す。
帰還だ。

憐れむ気持ちを欠片も見せないトールを見上げた人間と、サイドスワイプの師匠であるアイアンハイドが苦笑しながら目を合わせていたのには勿論気付いていない。





ヒューマンモードにて部屋のベッドに寝転び寛ぐトールを誰かが訪ねてきたようで、ドアをノックする音が聞こえた。
はぁいと笑いながら応える。


「入っていいよ、サイドスワイプ」


身体を起こしてベッドの端に腰掛ける。
気まずそうにスラリと高い背を縮めながら銀髪の男、サイドスワイプは躊躇なくトールの部屋に踏み込んだ。


「怪我は…大丈夫か?」

「大丈夫ラチェットに治療してもらったし。あと貴方には言われたくないわ、ミイラ男さん?」

「うっせ、もう大体治ったっての」


これではまるで押されているではないか。
この部屋に向かって来た時の気持ちを思い出してサイドスワイプは気を取り直し、きりりとした顔でトールに向かい合う。


「な、なによ」


普段こんな真剣な眼差しを向けることのないサイドスワイプはトールを動揺させるには充分だ。


「トール…オレ、お前を守れるくらい強くなる」


何を言い出すかと思ったら。
緊張していた身体を崩して大きく溜め息を吐くと、なんだよこっちは真面目なのにと喚くサイドスワイプを自分の隣に来るよう手招きする。大人しく従って己の隣に座る男を全力で押し倒した。


「な、何だ!?」

「これが私の全力なんだけど。ちょっと抵抗してごらん」


戸惑いながらサイドスワイプがトールを押し返すと半分の力も出さないうちにあっさりとトールの身体は遠のく。


「簡単でしょう? いくら鍛錬を積んでもどれだけ武器を搭載しようと、所詮土台は女の身体。情けない…」

「…んなこと気にしてたのかよ」

「勿論」


立ち上がってトールはサイドスワイプの肩を叩きドアに向かう。


「そうね…正直に言うなら………貴方がいるから戦える。もう充分護って貰ってるわ」

「あ、」

「本当はまだ怪我治ってないでしょ。お大事に」


自分の物ではない部屋の中に取り残されたサイドスワイプは一人頭を抱えて真っ赤に染まった頬を隠して呻いた。


「…男前め」










後書き
リクエストの失敗作第一弾です。
主人公が冷静過ぎて男前になったのでボツw
甘い要素を出そうとしたら逆効果でした…。

121029


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