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悪戯好きの双子はニヤニヤしながらトールの目前に立ち塞がった。避けようと右に動いてもマッドフラップが、左に動けばスキッズが横へ移動し通せんぼをするため二進も三進もいかず、かと言って双子が何をしたいのかも分からずトールは無言で睨み合いを続けた。
不意に双子が口を開いてお得意の掛け合いを繰り広げる。


「なあスキッズ、最近刺激が足りねえと思わねー?」

「ああそうだなマッドフラップ。どーも皆仕事仕事っていけねーや」

「っつうことでおれ達が盛り上げてやるべきだろ!」

「そしてそんな時になんと真面目系女子代表のトールさん登場!」

「おおっとトール選手、おれことマッドフラップ率いる悪戯隊と向かい合って一進一退の睨み合いを繰り広げているぅ!」

「ここで訂正、率いてンのはスキッズ様です!」

「何言ってやがるこのブサイク!」

「ブサイクって言った方がブサイクなんだぜー?」

「じゃあお前今言ったな」

「ってことはおれと双子のマッドフラップもブサイクってことだろ!」


やんややんやと言い合いを続けながらも妨害行為は忘れていない。
どうしようかと悩んで双子の喧嘩を眺めていると急にある方向を見てニヤリと笑ったスキッズが傍に置いてあったドラム缶をひっ掴む。


「紫のカラーなんてどーだい!」


そしてその中身である塗料をトールの方にぶちまけた。


「危ねぇトール!」

「あら、大丈夫よ」


横道から現れたサイドスワイプが素早くトールへと駆け出すが助けを借りることもなくトールはヒョイと横に避ける。
代わりにトールの居た場所へ突っ込んだサイドスワイプが自慢のシルバーの塗装の上から見るも無惨に紫に染まった。


「………」

「サイドスワイプ…折角避けたのに貴方が浴びてどうするの」

「………スキッズ…マッドフラップ…」

「逃げるが勝ちだぜ兄弟!」

「応ともさ!」

「待てやああ!!」

怒られる前にとトランスフォームして走り出す双子を追ってサイドスワイプが変形した。


「あ、内装も紫だ」


取り残されたトールが呟いた。






ああもう、とサイドスワイプはうな垂れる。こんな予定じゃなかった。


「おいおいサイドスワイプぅ、おれたちの所為にすんなよなー」

「そうだぜ? あんたの依頼に答えただけだしー」


双子が笑ってサイドスワイプの周囲を挑発的に回る。
はあ、とまた溜め息を吐いた。


「トール…やっぱり冷静だったな…」


そう、先程の悪戯はサイドスワイプから双子に、恋人であるトールの焦った所がみたいという頼み事から起きたものだ。悪戯されかけて慌てるトールを華麗に助ける予定だった。
だが、サイドスワイプは諦めない。


「ぜってーやってやるぜ…!」


その努力をもっと他に活かせよ、とこの場に他の者が居れば言ってくれただろう。






それから幾つもの悪戯を仕掛けた。


「トールー、ちょっとこっち来てくれよ」

「む、少し待ってくれトール。サイドスワイプ、先日の戦闘のことだが…ほあああー!!!」

「ラチェット、司令官が落とし穴にかかりました」

「相変わらずよく落ちるなオプティマスは」


時には落とし穴に司令官が落ちたり。


「知ってるかトール…昔この辺りは墓地だったらしくてなあ…」

「通りで透き通った人間の集団が足下をうろついてるのね」

「う、うわぁあ!?」


トールを驚かすつもりがサイドスワイプが驚く羽目になったり。


「(もうちょい左…よし、今だ!)」

「ん、床が欠けてる」


ヒョイッとトールが様子見の為にしゃがむ。


「ぐはっ!?」

「ラチェット、ジョルトに飛んで来た円盤が直撃しました」

「リペアの出番かね! すぐに向かう」

「(弟子にも容赦ねぇ!)」


後ろから物を当てて驚かそうとしたり。この辺になると最早目的を忘れていそうだ。





落とし穴にも幽霊にも、色々仕掛けたものは全て冷静に判断して避けられてしまう。
いい加減疲れてしまいフラフラとサイドスワイプは歩いていた。


「あ、サイドスワイプ」

「お、おー………トールか」

「うん。大丈夫? なんか怪しい歩き方してるけど」

「大丈夫だ、ぜっ!?」


ぐらり。
微かな段差につまづいたサイドスワイプが倒れそうだったのでトールは慌てて彼を支えようと身を滑り込ませたが、己より体格のいいサイドスワイプを支えきれず大きな音を立てて二人とも床に転がった。


「あいてて、すまんトール………トール?」

「いいから…は、早く退いてよサイドスワイプのバカ…!」


不可抗力で押し倒す形になったサイドスワイプが真っ先に恋人の心配をすると、トールは顔の温度を急上昇させて今にも湯気が出てしまいそうな姿を晒していた。ぽかんとトールを見下ろすと、更に照れた様子でトールはサイドスワイプの胸を突っぱねる。


「…照れてんの?」

「ちょっとバカそんなこと聞かなくても分かるでしょこの…っバカ!」

「ふーん?」


バカバカと連呼されることも気に留めず、珍しく勘を発揮してトールが単調な罵りしか言わないのはそこまで頭が回らない…つまり混乱状態だからだと察したサイドスワイプはニヤリと笑った。


「なートール。このままちゅーしても良い?」

「ちょ、やめてよバカぁ!」


強引に顔を寄せるとトールの力が弱まった気がした。すかさず距離を縮めたその瞬間。


「サイドスワイプ? 恋人を押し倒して居るところ悪いんですけど」

「ジョルト空気読んでくれよ…」

「あは、すいません」


邪魔者の出現に溜め息を吐いて立ち上がると、唐突に首を掴まれた。
動揺したサイドスワイプがギギギと軋んだ音を立ててゆっくりと振り返る。

鬼が、居た。


「先日ぶつかってきた円盤について少し語りましょうか」

「いやちょ、アレは、」

「問答無用です」


悲鳴を上げながら引き摺られていくサイドスワイプを呆然と見つめたトール。果たして最後に力が緩んだのは限界だったからか、それとも。


「…サイドスワイプのばーか」


暫くスパークの鼓動は落ち着きそうもない。










後書き
セレーソ様のサイドスワイプで恋人は冷静な子、甘でした! いかがでしょうか…?
タイトルはあれです、ハロウィン近いなぁっていう←
当方、冷静な子はどうも慌てさせたいものでしてつい趣味に走っちゃいました(照
本人様のみ煮るも焼くも自由です。
リクエストありがとうございました! そしてしつこい位ですが誤字報告ありがとうございました!

121024

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