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視線の先には横たわる男がいる。
何故だろう?
あんなに憎らしかったのに今じゃすっかりそんな感情も影を潜め、無条件に両手を上げて喝采する事もできやしない。
戦いに勝ったオプティマス達がすぐ傍で感動を分かち合っているというのにどうして私はこんな男の傍で彼を見下ろしているんだろう。
既に物言わぬ男ならこの答えを知っていただろうが聞く術などない。
この得も言われぬ感情を理解する日は生涯来ないことだけは確かだった。


「トール、無事か!?」


昔から自分によくしてくれる友が駆け付けてきた。御自慢の美しい真紅のボディは砂塵やら敵の攻撃で受けた傷などですっかり身を潜めている。
だが、生きている。
それだけで私は満足だった。


「ディーノ…」

「怪我はないみてぇだな…良かった」

「ディーノもね。流石に無傷とは行かないけど生きてる」


うっすら微笑めば顔のパーツがイカレているのかきしきしと痛む。
ディーノは私の横に並び立ち、足元に転がる男を見ると心底不快そうな顔を作る。そしてその顔のまま私に尋ねる。


「トール…こいつぁ、」

「何も言わないで」

「だが!」

「他の誰に罵られてもいい。人間達に指を差されて笑われてもいい。でも私の親友である貴方だけには何も言われたくないし笑われたくないのよ」


血反吐を吐いているかのように悲痛な声に自身で嫌悪した。彼の優しさに縋っているなんて、分かっている。甘えだなんて分かっている。
けれど紛れも無い私の本心であった。
固く握った拳を震わせ俯く私の肩に重みのある腕が乗る。


「………トールは…コイツのことを  してたんだな」


言葉にノイズが掛かり何を言ってるのか理解出来ない。私のブレインサーキットが拒絶し受け付けない言葉なのだろう。もしくは聞こえてるのに聞こえないと自身を騙してるのかもしれない。だがそんなもの、どちらでもこれ以外の理由だろうと構わない。しかし彼の言う通りな気がして理由も分からず泣きたくなった。





後書き
DOTM終了後の鬱々。この場合誰でもイケると思うのですがとにかく敵を愛してしまったのに認めたくない感じです。
親友と言われたディーノ涙目なんでしょうね。

20120507

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