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気が付くと俺は何故かヒューマンモードでディセプティコンの戦艦が見える崖に立っていた。
崖の最も危うい場所に同じくヒューマンモードの女トールが佇み海を見つめる。
彼女の名を呼ぶと、ゆっくり振り返りふわりと笑う。
「ねぇサウンドウェーブ」
何だ、と返したつもりだがどういう訳か声が出ない。声の出ない口を必死に動かし目を見開く。
「好きだったよ」
そして伸ばした手は空中に身を躍らせるトールの手をつかみ取る事無く宙を掻いた。
落ちて行く彼女は儚くそして美しかった。
ブゥンと如何にも機械的な音を出し、俺は現実へと還る。
そう、夢を見ていたらしい。よく考えなくとも分かる。スペースブリッジの無い今、戦艦が地球に有る訳がない。
同じ空間に居た人間の協力者(ディラン・グールドではない)にトールの所在を尋ねるとサウンドウェーブでも冗談を言うのだなと笑われた。
「どういう意味だ」
ロボットモードに変わって小さくひ弱なボディを摘み上げると憐れな人間が悲鳴を上げ、喚く姿を内心醜く思いながら死なない程度に地面に叩き付けてやる。
「トールは…あの女は死んだだろ…!」
死んだ、だと?
そう考えた瞬間記憶が蘇る。トールは俺の部下にしては、そしてディセプティコンにしては感情が豊かであった。
彼女の笑う姿。怒る姿。泣く姿。悲しむ姿。喜ぶ姿。照れる姿。そして、絶望した姿。
「そういえば、殺したな」
出来るだけ平坦な声でそう言い、再びビークルに戻る。
そういえば、オートボットのスパイだと知ったからトールは殺したのだった。忘れていた。
夢は見る者の願いを反映したものだと聞いた事がある。
その場合果たして俺は殺したかったのか、愛されたかったのか。
トールの亡き今、俺だけでこの疑問の答えを解き明かす事は出来ないんだろうなと思って、己の記憶から彼女の死を削除した。
忘れていたかった。
後書き
TF3の前の話。
よき部下だと思ってたら実はオートボットのスパイだと判明したトールさんを殺した音波さんでした。
恐ろしいのは削除したのがこれが初めてだとは限らないというところ←
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