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「いや、だがしかし…」

「どちらでも御自由に」

「しかし…此処で聞いては…」


うだうだ唸る破壊大帝。先程までの威厳は形無しだ。


「閣下よ面倒です。聞いてしまえ」


動揺の走る中、冷静そうに見えて一番焦っているであろうサウンドウェーブは口走ってしまった言葉にはっとした。
俺は何を言っている。


「聞きますか? 私はどちらでも構いませんよ」


柔らかにみえるそのくせ鋼鉄の男が便乗して揺さ振りをかける。
メガトロンは覚悟したかのように目を光らせ通信の先に立つショックウェーブを見据えた。


「聞こう」


破壊大帝の威厳など形無しであった。





『理由?』

『ああ。メガトロン様が憂いているらしい』


早速聞こえてくる録音にメガトロンは耳をそばだてた。さりげなくサウンドウェーブも聞く。


『……分かりません。しかし確かなのは私の都合で避けている点です』

『悩みでもあるのか?』

『まあ、はい』

『言ってみろ。オプティマスによると、悩みというのは話すだけでも気が軽くなる可能性も有り得るらしい』


此処までショックウェーブとエリーは馴染んでいたのかという驚きに微かに目を見開く。あの警戒心の強い男をも…二人揃って表情を変えるが一方は面白そうにまたもう一方は嫌そうという真逆のものだった。


『ふふ…ショックウェーブからそんな言葉を聞ける日が来るとは』

『お前達に…変えられたんだ』


ここで耐え切れなくなった破壊大帝がキレた。
衝動のままに壁を思い切り殴れば壁は砕け外の風景が見える程度に穴が空く。


「閣下落ち着いて下さい」

「…ショックウェーブ、貴様に先を越されるとはな!」

「まあもう少し聞いて下さいメガトロン様。そんなこと言ってる暇がなくなります故」

「自慢か!?」

「閣下」

「ぬぅ…」


サウンドウェーブが静かに触手を出し蠢かすとたちまちメガトロンが真っ青になって止まる。こんな主も有りか。サウンドウェーブは密かに意見を翻した。人間の顔は考えてる事が出やすいので厄介でもあるが便利でもある。


「続けます」


ショックウェーブが言うと再び続きが再生される。


『なんというか、ですね』

『ああ』

『メガトロンを見ていると落ち着かないのですよ』


この言葉に言われた張本人は目を丸くした。人間の姿でも威圧感は変わらないとでもいうのか。いや、だったらエリーは最初から距離をとっていたのだろう。
頭を抱える主に忠実な部下が冷たい目線を向けている。


『前はこんなことありませんでした。ただ、急にあの人の顔を見ると目が放せなくなり笑顔を見ると心が温かくなり…声を掛けられるとどうしていいのか分からず逃げてしまうようになったのです』

『…推察するにエリーはメガトロン様の事が、』


その台詞を全て聞く事無くメガトロンは人からトランスフォーマーの姿へ、更にビークルモードへと変形し壁を更に勢いよく壊す。
目指すのは当然、エリーのもと。
かつてないほどのスピードで飛び立った。


「直すのは俺になるのだろうか…」


ぽつんと残ったサウンドウェーブは呆然と穴を見つめ、爆音に驚き駆け付ける人間たちから逃げる手段を練る羽目となる。





後書き
中間も模試も終わった!
いろんな意味で←

120521

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