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「ッ…ビー!!!」
バンブルビーが狙われ、サムが叫ぶ。だが人間の彼には何も出来ず、レノックスが肩を掴んで下がらせた。
その手はキツく握られ血を流し、家族同然の相棒を身も心も傷付けた元オートボットを血走った目で睨んでいた。だが、それでもやはり今は何も出来ないのだ。なにも。
やがてセンチネルは多くの被害を加え、混乱に陥った彼らを一瞥し、振り返りもせずにトランスフォームしてその場を去った。
狙いは勿論、柱のみ。
しかしナイトレイに他の音など何も聞こえなかった。ただ一人、見つめるのはアイアンハイド。
コズミックルストを用いた腐食銃は確実に彼のボディをボロボロにしていく。対抗する術どころか進行を止める術すらない。
「………すまない友よ。許してくれ」
「………………ナイトレイ、」
ナイトレイは静かに目を伏せ、そして決意した表情で武器を上げた。
立ち上がったナイトレイがアイアンハイドに武器を向ける姿を目撃して、混乱した場を落ち着ける為に声を張り上げていたレノックスが目を見開く。
「やめろナイトレイ!!!」
人間の力じゃトランスフォーマーを止められる筈がない。
レノックスの声を聞いたバンブルビーがもんどり打って駆け寄ろうとしている。
センチネルを追撃しようとしていたサイドスワイプは怒りを露わに武器を取り出そうとしている。
「ちょっと痛いだけだ、お前なら…我慢出来るさ」
掠れた囁き声に反応し、苦しみを堪えるアイアンハイドが微かに目を開けた。
「…ひと、思いに…頼ん、だ」
「師匠! やめろナイトレイっ!!」
「ナイトレイ! どうして、」
サイドスワイプが吠え、サムが悲痛な声を上げ、バンブルビーは悲しい目でただ静かにナイトレイを見つめる。だが彼女は止まらなかった。
「(一思いに死にたい気持ちだって分かる…だが俺は!)止めてくれ…っ!」
唯一レノックスの戸惑いに満ちた声に銃身が揺れたが、すぐにそれも収まり。
銃声は響いた。
一発、二発、三発、四発。
「し、師匠ー!」
静止を振り切り駆け出したサイドスワイプがナイトレイを薙ぎ倒し、ナイトレイは建物へぶつかった衝撃に顔を歪めたがそれだけだ。瓦礫がナイトレイの身体に降り積もる。身体よりもスパークが張り裂けそうに痛かった。
師匠の前で嗚呼と崩れ落ち叫ぶサイドスワイプに誰も声が掛けられなかった、ただ一人を除いて。
「何、て…る馬鹿弟子…」
「な……え、ししょ………?」
ナイトレイが撃ったのは錆の始まった右腕と右脚の付け根だった。
撃たれた場所はちょうど人間でいう関節で、胴体から離れた手足は完全に錆が侵食し、風と共に崩れ落ちる。
「勝手に…殺す…な…」
「師匠………あ、ナイトレイ! すまねぇ大丈夫か!?」
仲間を傷付けるという辛い立場にさせてしまった自分が情けないとアイアンハイドは唸る。何よりも仲間を大切にし、慈しんできたナイトレイに嫌な仕事を任せてしまった。
サイドスワイプは目から溢れる潤滑油を堪え、ふと蹴り飛ばしてしまった仲間を思い出す。慌てて振り返ると静かな怒りを湛えたディーノが瓦礫を掻き分け、埋れていたナイトレイを抱き上げるところだった。
「やれやれ…もっと泰然と構えていて欲しいモンだ」
「あの…ディーノ、平気だから降ろしてくれないか」
平然として変わらぬ態度を示してくれるナイトレイの姿にサイドスワイプは申し訳なさで一杯だった。
後書き
サイドスワイプの蹴り飛ばす動作が好きです。そして以前はこのまま死亡かなぁとか考えていたけど、長い間の末にこう落ち着きました。
121009(UPは130101)
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