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スリープモードを解除すると、何故か仲間の気配を感じなかった。
もしかして自分の機能が寝ている間に異常を起こしたのかもしれない。
そう考えて医者の下へ向かうことにする。
「ラチェット?」
いつも彼が篭っている研究室に顔を出すも、そこに笑顔で刃物を振るう医者もその被害者もいない。
「留守のようだ。適当にぶらぶら歩いていれば誰かに会うだろう」
なんとなく台の上に腰を下ろすと自分が被験者として狙われた日々を思い出して慌てて立ち上がる。
ナイトレイは不安を隠せない顔でいまだ基地内を歩いている。
無理もない。
ここ数時間歩き回っても走り回っても彼らの姿はおろか人間たちの姿も見当たらないのだから。
生物の居ない世界。
背筋を震わせ、その考えを振り払う。そんな世界などありえない、と。
仮に基地内に生命反応がないとしても外にならあるはずだ。皆何かあって基地を出ているだけだろう。
たとえそれがナイトレイを置き去りにしていたとしても生きていてさえいれば一向に構わない。
だが、基地を出てもそれらしき兆候はない。
タイヤの跡も何もかも。
己のタイヤを滑らせると、初めてその素材に触れたかのような痕跡が残った。
もう一度ロボットモードにトランスフォームしてしゃがみその痕跡に触れる。
「誰か、居ないのか」
「俺ならいるぞ」
不意に聞こえた声に反応しきれず、その声の持ち主にされるがまま地面に倒れこめばそのまま相手はナイトレイの背中に跨る。
間違いない。
「サウンド、ウェーブ…!?」
「覚えていたのか。いい子だ…」
忘れることなど出来る筈がない。
猫なで声に肩を震わせ、立ち上がろうともがいてもサウンドウェーブがナイトレイの背中から首に掛けて手を動かすだけで抵抗が出来なくなる。
「逆らうことなどお前には出来ない。躾けたのはこの俺なのだから」
唐突に頭を掴まれ、強引に引き上げて背後のサウンドウェーブと目を合わせられると、その言葉に一瞬息が詰まった。
「さてここで問題だ。この惑星に存在する塵のような生命体等はどこに消えた?」
カッとして勢いのまま銃口を奴に向けると素早く下がり命中しなかった。
だが体は自由だ。
武器を向けられてもサウンドウェーブは口元を歪ませたままだ。
「ナイトレイ」
誰かに名を呼ばれた。
やはり誰の気配も感じない。だがさっきのは夢だったようだ。
浮上した意識にぼんやりとしたままナイトレイは左へと顔を動かす。
バンブルビーがキラキラとした目でナイトレイを揺すり起こしていた。
「『目覚めるのです』『我が』『天使よ!』」
「ど、したバンブルビー」
「『とにかく着いてきな』『ベイビー』」
グッと手を引いて体を無理やり起こさせるとバンブルビーが背中の羽のような窓をはためかせ跳ねる。
案内について行くとある部屋の前に立たされる。
「開ければ良いのか?」
笑顔で頷くバンブルビー。不承不承に扉へ手を掛けゆっくりと押す。
その瞬間、乾いた銃声と共に色の付いた紙やテープが飛んできた。
「おめでとうナイトレイ!!」
おめでとう、との大合唱に驚愕した顔のままナイトレイが視線を落とす。
NESTの仲間と、サムやミカエラがそこにいた。
「君と会えて一年が経ったんだよナイトレイ」
「サプライズパーティーよ!」
「ほらほらそんな顔してないでさっさとオプティマスの方に行けって!」
サプライズ、パーティー?
促されてオプティマスの隣に行けばおはようと空気を読まない挨拶が真っ先に届く。
「君がこの地球に到着して一年が経った」
オプティマスが話し出した途端一斉に静まり返る。
「我が友よ。君が来てくれてとても嬉しい」
絶句するナイトレイを気にせずオプティマスは抱き寄せた。
途端、野次が飛び交い一気に俗な空間へと変容する。
抱き寄せた腕はとっくに解放されている。
周りにはトランスフォーマーも人間も問わず押し寄せ口々に祝いの言葉を告げる。
「ありがとう」
そして喜びを隠さずナイトレイも笑顔で言う。
目の端から液体が零れそうになるのを抑えるのに精一杯で、震えている声を自覚していないようだ。仲間も笑う。
夢のような時間だった。悪夢のことなどもう覚えていない。
「ところでラチェット。探知機能が全く働いていないんだが」
「ああ、サプライズだったのでね。切っといたよ」
「………」
後書き
サイト一周年記念。
おめでとう私!!
ありがとうございます皆様のおかげでこのサイトは一周年を迎えることが出来ました!
今回は主時期忘れていて残念ながらこの話しかあげられませんでした。
これからも更新頑張るので応援よろしくお願いします!
120729
以下、オマケです。
折角のチャンスだったのに。
情報参謀は衛星から得ている映像に歯噛みした。
傍には誰も居らずまた探索機能も強制的にオフにされていた。なのにこの失敗だ。
あと一息、というところで何者かの邪魔が入ったのだ。
しかもその妨害はこちら越しに入ったのではなくナイトレイの方から入った。ということは彼女とつながりの深い人物だ。
オートボットではない第三者が誰か全くわからない。サウンドウェーブは怒る己に気づいて自制を促した。
そう簡単に手に入ってもつまらない。
いつもの無表情を取り戻したその顔からは先ほどまでの感情は消え去っていた。
最も、本人は感情的になっていた自分に気付いてなかったようだが。
そしてその姿を影から密かに見ていたショックウェーブは哂った。
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