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今、台風というものが日本へ来ているらしい。
世界の情報を集めていたナイトレイはその台風というものが何なのか知りたくてうずうずしていた。
「(タイフーン、ハリケーン、サイクロン…ト、トロピカルストーム? 奇妙な呼び方もあるものだ…)」
検索すれば出るわ出るわ、数多の情報が入ってくる。目を閉じて興味深いそれらをもっと知ろうとしたとき、背後から穏やかな声が聞こえた。
「ナイトレイ、どうかしたのかい?」
「オプティマスか。いや、台風というものがどんなものか少々気になってな。今から動画でも見てみようと思ったのさ」
「動画? いや待てナイトレイ」
オプティマスが頭の上で電球を浮かべて右の手の平を左の握り拳で叩いた。こんなところまで人間に似てきたのか、と一瞬現実逃避に走る。駄目だ、嫌な予感しかしない。
「私に良い考えがある!」
あ、やっぱり?
此処でナイトレイはきっぱり考える事を止めた。何を言おうと何をしようとオプティマスは止まらないのだから。
「実際にその台風というものを見に行かないか?」
「あ、それは楽しそう」
悟りを開いていたナイトレイは一気に現実へ意識を戻し、瞳を輝かせる。
珍しく本当の良い考えを出してくれた。此処は台風の前情報を入れず直接見てみるのも面白そうだ。
笑顔で向かい合った二人は今から(仕事も何もかも置いて)飛び立つことに決める。移動は勿論、輸送機だ。
ちょうど数日後、日本に台風が訪れるらしい。
輸送機は日本に到着した。既に自分達の存在は公表しているが、無闇に騒がせる必要もない。尤もらしくオプティマスが言えばうんうんとナイトレイも同意し、ビークルのまま、一切情報を仕入れずわくわくしながら倉庫の中で当日を迎える。
「…雨だ」
「ふむ、強風だな」
外に出ると当然出歩く人間は居ない。
随分と少ない車道を走るうちに二人のテンションは上がる。
「オプティマス! 見ろ、SUSHI屋だ!」
「おお素晴らしい! このような細道に伝説のSUSHIがあるとは…」
脱線している上、NESTの友らにさりげなく嘘を教えられていたようだ。
「伝説とは?」
「うむ。SUSHIとはかつて格闘技であり、その繊細な手つきを真似た米屋がその型で米を握ればその絶妙な米の密度が生まれたと聞く」
「うーん、それは伝説に到ってない気がする」
「いや、話はこれからだ。その米屋はその握りをより完璧に身につけ格闘技の大会へ出場し、見事制覇するのだ。そこから彼の飽くなき技の追究が始まる…」
もはや時代も現実味も失ったその話をするオプティマスは真剣であったし、拝聴する側のナイトレイも真面目な表情で続きを聞いている。
そして米屋が世界の影の支配者を倒すところまで行ったとき、ナイトレイは目的地に到着したことに気が付いた。
「海だ!」
「そして米屋は覇道のため息子を手に掛け…ん? おお、着いたか!」
海辺の高台に二人は居た。
揺れる看板、浮かぶ木の板。空を飛ぶのはビニールだ。
荒れ狂う母なる海を見てはしゃぐ。もっと良く見ようとトランスフォームしたとき、悲劇は起きた。
「ほああぁ!!」
「オ、オプティマァァァス!!!」
崖にコンボイ。
昔からそう言われるのに忘れていた己をナイトレイは責めた。
だが此処で彼を落とす訳にはいかない。
オプティマスの地面の縁を掴んだ手を握り、必死に引き上げようと力を込める。しっかり、負けるなと声をかけると弱々しくオプティマスがナイトレイを見上げる。
ガタガタ風に揺れる看板を背景にして起きているソレは映画のワンシーンのようでもある。
「わ、私はもう駄目だ…手を離せ、君も落ちてしまう」
「何弱音を吐いているんだオプティマス・プライム! 私が貴方を離すわけないだろう!」
「くっ…」
「オプティマス…落ちるときは、一緒だ…」
「ナイトレイ…!」
「何寸劇やってんだアンタら」
げしり。
「ほああああぁぁぁ………」
「あ」
繋がれていた手を蹴られ、衝撃で手を離してしまったナイトレイは目を見開く。両手をこちらに伸ばし、両目を見開き闇へ消えてゆく司令官を見たからだ。
外側にあったナイトレイの手を蹴ったのは居るはずのないサイドスワイプだ。
「あー…」
「で、言い訳はあるか?」
「台風を見たかったのさ」
「馬鹿か!」
オプティマスの事は事故だったと明らかに事件、しかも犯人は目の前にいるというのにナイトレイは頭を切り替え彼の問いに真摯に答える。
高い音を立てて頭が叩かれた。
「サイドスワイプそっちはどうだ? オプティマスは捕らえた」
海から聞こえるアイアンハイドの声に、彼女は驚く。
「まさか…迎えに来てくれたのか?」
「…当たり前だろ」
突然連絡もなく姿を消したナイトレイとオプティマス。きっとNESTでは騒ぎになったのだろう。
しょっちゅうフラフラ姿を消すナイトレイはまだ良いが、司令官であるオプティマスがまで消えた事で騒然と捜索隊が結成されたらしい。
「すまない…」
「…はぁ。ま、きっと今回限りだぜ? ラチェットとジョルトの説教がねぇのは」
言外に次は無いと忠告すれば一瞬ナイトレイの体はトラウマに震える。
帰るため踵を返したときにしかし喜劇は起きた。
遂に限界を迎えた看板は固定具を振り切って滑空し、広い面からナイトレイに直撃したのだ。
なんの、と一瞬堪えるが如何せん風を受ける面積が広い。司令官に似た悲鳴を上げながら海の彼方へ飛んで行くナイトレイに戸惑い、そしてサイドスワイプは悲鳴を上げた。
「し、ししょおーーーー!!」
同じタイミングで飛ぶアイアンハイドとオプティマスを見つけたからだ。
台風の通過後ようやく海で看板の上に乗り漂うナイトレイそしてアイアンハイドと、日本の裏側に流れ着いたオプティマスが回収される。
オプティマス曰く。
「海底に居たメガトロンに挨拶してきた」
臨死体験か事実かで意見は真っ二つに分かれ、後日復活を遂げたメガトロンへその質問はぶつけられることとなる。
後書き
マヤ様の運命主でギャグリクでした!
17000ですよ!
リクエストを頂けてとても嬉しく、そして台風に飛ばされ崖落ちする司令官が浮かんでしまい速攻書き上げて仕舞いました(^O^)/
メガトロンネタがやりたかったので映画1〜2の間、そして指定がなかったのでとりあえずオートボットとなっております。
ギャグに成り切れていない気もします…返品可能ですのでその時は遠慮なくおっしゃって下さい!
リクエストありがとうございました!!
120619
オマケ↓
「海に沈んでいる間、オプティマスに会った気がするのだ…」
「何言っている。プライムが海底に現れたとでもいうのですか」
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