▼ 黒子
青峰の部屋の中に居た。
彼女は慣れたように彼の部屋を扱い、また彼もそれを許容する。
「じゃ、帰るわ。また明日会いましょう?」
「…てめぇは一体何がしてぇんだ?」
以外な問い掛けにおやと眉を上げると、青峰は思っていた以上に真剣なようで彼女から視線を離すまいと睨み付けている。
「どういう意味かしら」
「何でオレにコレをやらせるんだ? 他の下僕共とはヤったりしてんだろ」
「あらあら、これ以上の事がしたいというコト?」
「このオレの優位に立てるヤツなんざ男でも居ないぜ? 女を殴りたいと思ったのも久々だったしな」
「…ねぇ、知ってる? 私ったら随分未練たらしい女なの。昔の恋をいつまでも引きずっちゃってさあ」
「っオレの質問に答えろよ!」
「その人は格好良くて、優しくて、でも怒るところは怒って、たまに可愛くってさあ」
「っ、何なんだよ!」
「バスケ馬鹿で、しょっちゅう兄貴分の人とバスケして私との約束忘れちゃうのよ。バスケしてるだけあって背が高くって、私なんか一瞬で潰されそう。バカな癖にテスト前も自主練で勉強してなくてテストがヤバくなって直前で慌てるからいつも私が助けてあげる羽目になるの」
それはまるでいつかの青峰のようだった。
勉強が苦手でバスケが大好きで背が高く。
「付き合ってたけど彼は私に手を出さなかった。純情で手を繋ぐのにも躊躇う可愛い人」
「私達ならそんなままでもやってけるなんて、本当に馬鹿なのは私だった。ちょっと離れてても彼の心は愛は揺らがない…そんな上手い話がある訳ないのに。ま、ここからはセオリー通りよ」
「…捨てられたのか」
「ま、そうね」
霧月の元彼はとても青峰に似ていた。
そしてそいつは名前を抱かなかったという。
「そいつの…代わりだってのかオレは!?」
「全員よ。中でも貴方は一番彼に似てる」
傍にいて欲しいし、いて欲しくない。そんな存在。
青峰が苦々しい表情をすると霧月は呟く。
「秘密も明かしちゃったし、此処までかな」
じゃあね。………今までごめん。
細い彼女の指が青い髪を撫でたとき、青峰の中で一気に気持ちが爆発する。
「待てよ」
気が付けば離れようとした霧月の可憐な手首を引き寄せ、そのままの勢いでベッドに彼女を張り付けていた。
「あ、おみね」
「ホント馬鹿だな。オレに手を出すべきじゃなかった。オレにそんな話を聞かせるべきじゃなかった。オレに…そんな弱ったところを見せるべきじゃなかった」
ブツ切れ\(^o^)/
2012.08/16(07:10)