▼ 尽くす(籠球)
青峰大輝。口の中で呟けばその名前は言葉でしかないのに舌の上で甘く蕩ける。
「青峰」
実際に声に出せば思った以上に冷たく響いた。声に反応して足下に蹲る男が顔を上げる。
濃い青の短髪に浅黒い肌。何より印象を残すのはその眼だと彼女は思っている。美しく気高い絶対的王者のオーラ。
野生の獣を思い出す鋭い眼差しにゾクリとして己が口角を吊り上げているのを自覚した。
「何だ」
そう、その獣こそ青峰大輝だった。
自分が呼んだから顔を上げたというのに彼女は
「サボってないで」
などと続きを促す。
青峰の眼に一瞬灯る炎を見つけ、艶やかに笑った。
「ん…ぐ…」
彼の部屋で彼の椅子に腰掛け脚を組み、曝された足を舐める。
それは今青峰がしている事だ。
数分程経っただろうか。
「もういいわ」
「…ああ」
解放された青峰は最後に足の甲に口付けを落とす。
躾けられたのかと錯覚してしまうが特に意味は無いだろう。
2012.07/28(00:56)