*** どうしても言えない ***




彼女と出会ってから、随分と経った。
初めの頃は、まだ余所余所しく、丁寧な口調での遣り取りのみだった。

それが次第に、軽口や暴言も遠慮無く吐けるようになっていった。
何だって容赦無く言える。今の私達はそんな関係だ。

それなのに、どうしても。

「さくまさん」
「何ですか?ベルゼブブさん」

( 愛しています )

「……いえ、何でもありませんよ」
「……?……どうしたんですか、最近何か変ですよ?」
「そんなことありませんよ。いいから、気にしないでください」

音に出来ずに喉元でつっかえた言葉は、こっそりと溜息に変えて吐き出した。

何だって言えるのに。他の言葉なら幾らでも。
たったひとつ、どうしても言えない、一番伝えたい一言。





『べーさくへの恋の3つのお題』
提供元:3つの恋のお題ったー
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