(※捏造注意)
















Prologue



ここ数日、ベルゼブブは実に平和な休日を過ごしていた。
芥辺はどこぞで見付けたグリモア収集の為に海外出張中。いつものことながら、帰還予定日は未定である。
佐隈も試験前で忙しいとやらで、しばらくバイトを控えると言っていた。
雇い主達の都合が上手く重なってくれたおかげで、只今長期休暇中である。
もうしばらくはゆったりと羽を伸ばせそうだと、安らいだ気持ちでお気に入りのソファーで寛いでいた。

しかし、そう思っていたのも束の間。頭上から引っ張られるような感覚。
佐隈は「変なタイミングで喚び出したくないから」と毎回事前にメールを寄越していたから、この突然の喚び出されも久しぶりだった。
メール無しの喚び出しと言うことは、芥辺によるものだろうか、と考える。
今回は一体どんなこき使われ方をされるのだろうと思うとこのまま無視を決め込みたい気分だが、勿論そんな事は出来るはずもなく。
引力に従い魔法陣に吸い込まれていった。

はてさてどんな見知らぬ土地に喚び出されたのか……と思いきや、ベルゼブブの目に映ったのは薄汚れたいつもの事務所の召喚部屋。
芥辺がもう戻って来たのか、と思うも彼の姿は見当たらない。
替わりにそこにいたのは、何処かで見たことあるような印象の、黒髪赤眼鏡の少女だった。

「べっ、ベルゼブブさぁんっ!」

見た目は4、5歳くらいだろうか。明らかに大人用と思われるぶかぶかのTシャツを見に纏っている少女は、今にも泣き出しそうな潤んだ瞳でベルゼブブを凝視している。

初対面のはずの少女は何故かベルゼブブの名を知っている。
何故かベルゼブブのグリモアをその手に抱えている。
そして、何故かよく見覚えのある佐隈の眼鏡を掛けている。

まさかという思いが胸を埋め尽くすものの、これらの条件から考えうる可能性は残念ながらひとつしかなさそうだ。

「……さくまさん、なんですか?」
「そうです、さくまです……」
「何がどうなってこんな事になったんです」
「私が聞きたいですよそんな事……事務所のドア開けたら身体だけちっちゃくなってたんです」
「見た目は子供、頭脳は大人……ってヤツですか。そんな馬鹿なことがあるものですか」
「そんなこと言われても、そんな馬鹿なことが実際起きちゃったんですよ!」

怒鳴り返してきた声は若干涙混じりな調子だった。

「アクタベさんは連絡取れないし……もうベルゼブブさんしか頼れる人居なくて……」

いくら悲痛な声で訴え掛けられても、正直なところ面倒だ、とベルゼブブは思う。
十中八九悪魔による呪いの仕業だろうとは思われる。しかし相手は芥辺の事務所に罠を張るような奴ら。どう考えたってまともな相手じゃない。出来ることなら関わりたくない。

そう思いはするものの。

『他に頼れる人がいない』というその言葉は、仮に芥辺の代理扱い程度の認識だとしても、ベルゼブブの心を揺さ振るには十分過ぎるものだった。

「……分かりましたよ。一緒に、元に戻す方法を探して差し上げましょう」
「本当ですか!?」
「その代わり、解決した暁にはとびっきりのカレーを用意して頂きますよ?」
「もちろんです!ありがとうございますベルゼブブさんっ!!」



*** 王子と少女の非日常日記




そんなこんなで始まった私達のいつもと一味違った日々。
これから綴るのは、そんな日々の一部分。

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