「ベルゼブブさん、知ってます?」
「何がです?」
「子供の頃に聞いた七夕の話なんですけど。織姫と彦星って、お互いすっごく愛し合ってて、元々はいつも二人で一緒にいたんですって」
「ほう」
「で、あんまりにもお互いベタ惚れだったために、仕事もしないでいちゃこらしてたそうで」
「ほう……それで?」
「で、そんな状況に堪忍袋の尾が切れちゃった織姫の父親?だったかな?とにかくお偉いさんが、二人を二度と会えないように引き離しちゃったんです」
「ふむふむ」
「でもあんまりにも織姫が悲しむからって、情けをかけて一年に一度だけ会えるように、ってことになったんですって。その日が、今日、七夕なんですって」
「なるほど。要するに、七夕とは、どう見ても自業自得のどうしようもないバカップルの為の一大イベントということですね」
「多くの人々が七夕に抱いているであろう幻想ぶち壊しの要約ですけど、まぁそういうことですよね」
「そんな背景では、短冊に願い事を書いたところで御利益があるのか疑わしいものですな」
「まぁ、この話自体結構うろ覚えですし。きっと他にもっとちゃんとした七夕の意味合いはあるんだとは思いますよ」
「なぁなぁさくちゃん!織姫はんってべっぴんさんなん!?そこんとこどーなん?」
「さぁ…美人だったんじゃないですか?書き終わったんならそろそろ短冊飾りますよー」


*****



「よし、飾り付け完了!さて、皆さん短冊に何書いたんですかね…」


『織姫はんと一発ヤりたい。
アザゼル篤史』



「……うわぁ」
「アザゼル君、君は本当いつも残念な方に期待を裏切りませんね…」
「何やのそのリアクション!男やったらそりゃ美人と聞いたらヤりたいでしょうが!当然でしょうが!」
「あーはいはいそうですねさて次は……」



『斯様な雌に媚びる必要は皆無!即刻別れるべし、彦星とやら!
サラマンダー公威』



「……何ですかコレ?」
「彦星という輩が余りに腑甲斐無い故、一喝してやったまで!大体この織姫とかいう雌め……」
「マンダ氏……一年振りに二人が再会する、という七夕の設定を全力でぶち壊しに来ましたね……」
「そもそも願い事ですらないですし……」



『美人のねーちゃんとエロいことがいっぱいできますように
堂珍光太郎』


『本物の女性器をこの目で見れますように(ただし若い女性のものに限る)
小山内治』



「……君達は全然性格違うようで、意外と似てるとこあるよね」
「彼なんかと一緒にしないでください。僕はあくまで知的好奇心の探究として――」
「ごまかしてんなよなー小山内。そんなら校長のあのキレイな薔薇でも拝んでろよ!おいグシオン、あれ返してやれ」
「うわあああああやめろおおぉぉぉ!!!」


*****


「いやぁ、性的欲望に塗れた酷い笹飾りになりましたねぇ……」
「そういうさくまさんは何と書いたんです?」
「私は……ほらコレですよ」


『お金をたんまり稼げますように
佐隈りん子』



「……あぁ、非常にアナタらしい願い事ですねぇ……」
「『単位が欲しいです』と迷ったんですけどねーやっぱり第一はお金で!」
「はいはい……ところでアクタベ氏の短冊が見当たりませんが?」
「あぁ、アクタベさんは」

『願い事ぉ?下らん。欲しいものは自分で手に入れる』

「……とか言って書いてくれませんでした」
「なるほど……」

「というか、ベルゼブブさんのも見当たらないんですけど」
「私のはちゃんとありますよ、ほら、あの笹のてっぺんに」
「あ、本当だ!あんなとこに飾ったら見えないじゃないですか!」
「まぁいいじゃないですか別に見なくても」
「えー自分だけ隠すなんて、なんかずるいですよ。何て書いたんですか?」
「秘密です」
「そんなこと言わずに!」
「教えません」
「ベルゼブブさんのケチ!」
「ケチで結構。そんなことよりお腹空いたんで早くカレー作って下さい」
「もう我儘なんだから……分かりましたよー」



*****




「ふぅ……こんな短冊、恥ずかしくて見せられるかってんですよ」


『私達が、魔界と人間界とで引き離されるようなことがありませんように。
ベルゼブブ優一』





2011.07/07

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