red light

その男は私の大切にしていた恋心をいとも簡単に上書きしていった。最初の出会いは花咲く教会。一見ロマンチックにも思えるシチュエーション。だけれど、神羅カンパニーのタークス。言わずもがな私が憎む対象の相手だった。派手な赤髪に、開ききった胸元。戦闘態勢に構えた私に向かって彼は、一目惚れ、と言い放った。そして、敵も味方も関係ないとも。初対面の相手に愛を告白されるなんてもちろん生まれて初めてだったので戸惑った。私のどこにそんな惹かれる要素があったの?思い返してみると、その時に、私も落ちたのかもしれないね。女って複雑に見えて単純なものだから。

**

「お姉さん」

この声は、もしかして。振りかえると、気になって、会いたくて、仕方なかった彼の姿。どうしてこんなところに?びっくりしたけれど、いつもよりは綺麗な私で会えて良かった。マダム・マムの手によって着飾られた私を見て、素敵だ、とか思ってくれるだろうか。

「…ビックリしたなぁ?やっぱり俺の目に狂いはなかったぞ、と」

やっぱり、この人は私が欲しがっている言葉をすぐにくれる。距離を詰めて、私の手をとり、甲にそっと口付けをしたレノ。柄にもなくお姫様になった気分だった。

「どう、かな」
「…ここにいる誰よりもかわいい。そういえば名前知らなかったんだよなぁ…教えてくれよ」
「名前、名前っていうの」
「名前、俺のモノにしてぇ」

甘すぎて、くらくらして、麻痺していく頭。ガヤガヤと騒がしい店内なのに、私とレノしかいないみたい。もういっそ世界に二人だけだったら。自分の事情も、この恋への足かせもすべてなくなってしまったらどんなにいいか。すぐにこの胸に飛び込めるのに。

「なぁ、二人でどっか行かね?」
「で、も、クラウドが…」

エアリスがいることは言わない方がいいよね。流石に二人を置いてはいけないし…。ためらっていると腕をすごい力で掴まれた。蜜蜂の館を出て、人混みをかきわけて、薄暗い路地へと連れ込まれた。二人が横を向いていないと入れないような広さ。逃げ場をなくすように手首を掴まれ壁へと押しつけられた。こんな街じゃ男女のこのような光景は日常茶飯事なのか、隙間から見える人々は私達を気にしたりなんかしない。

「ね、痛いよ、レノ」
「名前ちゃんが余計なこと言うからだぞ、と。ま、恋は障害ある方が燃えるって言うしなぁ」
「もう、ふざけてないで、離して」
「やーだね。もっと触りたいって言ったらどうする?」

私の返事を待つ前に曝け出された足へレノの手が伸びる。指先で下から、つつつ、となぞられて、思わず身をよじると、楽しそうに笑う顔が目に入った。その顔、好きだな。

「…意地悪」
「煽ってんのか?じゃあお構いなく」

落とされる口づけ。お構いなく侵入してくるレノの舌。答えるように口を開けて、受け入れた。あ、レノ、キスうまい。ゆっくり、わざと音を立てるように口内を侵される。力が抜けそうな私を支える腕。もっと、とねだる代わりに首に腕を回した。体をまさぐられ、触れられた部分が熱を持つ。触れ合うこと、ずっと夢に見てたの。またいつ会えるのか分からないならもうここでいっそ、

「んっ…」
「…ぷは、えっろい顔。絶対誰にも見せんなよ。俺がいつか、迎えに来てやるぞ、と」
「待ってる、から」
「いいこ」

レノが私の頭をポンポンと撫でた。ごめんねみんな。私、もう戻れないみたい。この燃えるような赤色に、全て、全て奪われてしまった。でも、幸せなの。今まで作り上げたもの全部壊れたっていい。彼が迎えに来てくれるのなら星の命なんてどうでもいいと思ってしまったから。
目次
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -