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21時、セブンスヘブンに来てくれ、それだけ伝えられるとクラウドからの電話は切れた。
前々から今日の夜から明日は一日開けておいてくれ、なんてざっくりと言われていたから問題なく暇なんだけど。
何があるのかと言うと、明日は私が生まれた日。
お祝いとかしてくれちゃうのかなぁ、恋人になって初めて迎える私の誕生日、付き合いは長いけど、ここまで本当色々あったなぁ。
回数を重ねる度、誕生日に特別感を感じなくなっていたけれど、今年は楽しみ。
そわそわして落ち着かなくなって、部屋の掃除を始める私、なんだか遠足の前日に眠れなくなる子どもみたい。
気合いを入れてるのがバレたら恥ずかしいので、いつも通りのメイクをいつもより念入りに時間をかけてみた。

**

「おじゃま…しまーす」

軋んだ音を立てるセブンスヘブンのドア、開けた先には、皆いた、そう、皆。

「名前!ちょっと早いけどお誕生日おめでとう!」

ティファのいつもより大きい声の後に聞こえる更に大きな音の正体であるクラッカーがパァンと鳴らされ私の目の前が紙吹雪やらテープやらでいっぱいになる、そして少し感じる火薬の匂い。
ニコニコするティファの周りには一緒に星を救った仲間達と、神羅のメンバーまで、予想してたより遥かに多い人数に思わずキョロキョロと周りを見渡してしまう。
ユフィが飛びついて、おめでとう!と私を抱き締めたのでよろける体、肩に体温を感じて振り向くとクラウドがいて、皆名前のために集まってくれたんだ、と言いながら少し得意げな顔。
相変わらずお熱いねぇ、とニヤニヤしながら煙草を咥えるシドの横でバレットは、昔からお前等見てるとイライラすんだ!くっつくのに何年もかかりやがって、と言いながらなんだか少し怒っている。

「二人とも、お父さんみたい」
「まぁ、おめでとさん」
「シドありがとう。煙草まだやめないの?」
「喧嘩すんじゃねぇぞ」
「したらバレットがクラウドこらしめてね。…ユフィそろそろ苦しいよ、離して」
「や〜だ〜!」

妹がいたら、こんな感じかなぁ。
いつまでも、やんちゃなユフィが本当にかわいい。

「…おめでとう」
「ありがとう。ヴィンセントからしたら私まだまだ子どもかなぁ」
「赤子だな」

相変わらず表情を崩さないヴィンセント、一緒に旅をしていた時は色々相談させてもらったなぁ。
静かに話を聞いてくれるだけで気持ちが和らいだっけ。

「名前はん、おめでとうございます〜!」
「ね、そっちで来たの?」
「そんな無粋なこと言わんといてくださいよ…」

そう言ってリー…じゃないケット・シーは項垂れた、見た目は猫だからかわいい。
眠れない夜は、よく占ってもらった、信じるタイプの私は悪い結果が出ると引きずっていたなぁ、そしたら、そんなもの信じるなってクラウドに呆れられたのも懐かしい。

「名前!おめでとう!」
「ナナキ〜!もふもふさせて〜!」
「あはは、名前くすぐったいよ」

よく私の枕になってくれたナナキ、もう愛しい、大好き。
顔をうずめると、匂いが思い出させてくれる、あの頃の思い出。

「俺達もいるぞ、と」
「レノ、来てくれるなんて思ってなかった」
「名前おめでとう〜!直接言えて嬉しい!」
「イリーナ!これからも友達でいてね」
「…めでたいな」
「ルードって見た目に反して優しいよね、ありがとう」
「私が来て名前が喜ぶのかとは思ったが…」
「ツォンさん、そんなことないです、嬉しいです」
「急に呼ばれたもので、何も用意できていない。悪いな」
「ルーファウスさんまで…ありがとうございます。恐れ多いですほんと」
「まぁまぁそんな固くなるなよ?恐縮してないで楽しんでなんぼだぞ、と」

そう言いながら私の肩を抱くレノ、本当に嬉しいんだけどこんなに集結してもらうと、照れ臭くて歯がゆくて、何だか不思議な気分。

「名前、いい女になったよなぁ…?俺とも一回付き合って…」
「そこまでだ」

べり、と音が鳴るくらい勢いよくクラウドに剥がされる私とレノ、クラウドは、ぶすっとした顔で私をじーっと見ている。
レノは、おーこわ、と両手を挙げて一歩後ろに下がった、こういうところも、皆、変わらない。

「名前、おめでとう。これからも親友でいてね」
「ティファ〜!当たり前だよ…」
「これ、どうぞ」

そう言って差し出されたのは、エアリスが育てていたお花で作られた、花束。
ピンクの包装紙に赤のリボンがつけられていて、懐かしくて、ちょっと泣きそうになるような甘い香り、胸がいっぱいになるのを感じた。

「こ、れ…」
「エアリスも絶対お祝いしてくれてるよ」

鼻の奥がツン、とする。
元気かなぁ、エアリス、笑って過ごせてるのかな、そうだったらいいな。
泣きそうになったり、笑ったり、感情が忙しかったけれど、その後も皆のおかげで、楽しい時間を過ごせた。
23時過ぎ、帰って行く皆を見送って、クラウドと二人で並んで夜空の下を歩きながら私の家へと。

「クラウドが声かけてくれたんだよね、本当にありがとう」
「名前が喜んでくれたならそれでいい」
「これは来年の誕生日も期待しちゃうなぁ〜」
「あまりハードルを上げるな」

まぁ結局は一緒に過ごせるならなんでもいいんだけどね、あのクラウドがわざわざこんなことをしてくれたのが嬉しすぎて、自然と軽くなる足取り、今なら飛べちゃうかも。

**

「…ふっ…」
「はぁっ」

私の部屋の扉を閉めた途端、塞がれたくちびる。
壁にもたれながら、必死にクラウドの舌を受け止める、静まり返ったまだ暗い部屋で聞こえる唾液が交わりあう音、どちらもお酒が入っているから、すごく、熱くて。
いつもより攻めてくるクラウドについていくのに必死、口内を侵されきったところで、一旦離れていく私達の距離。

「やっと」
「え?」
「やっと、一人占めできる…」
「ちょ、やっ」

こんなところで、と抵抗する前に首元に感じる鈍い痛み。
目立つ場所に付けられた赤い痕、もう、隠すの大変なのに。
暗くてあまりよく見えなくても分かるギラついたクラウドを必死に抑えて、ひとまず電気のスイッチを押す、ふと時計を見ると、0時ちょうどまであと少し、彼もそれに気付いたのか、私のベッドに腰掛けて、おいでと言わんばかりに私を手招く。

「まさか、名前と、こんな関係になるなんて思ってなかった」
「私もだよ、恋人になってからは、そんなに長くないけどさ、もう何十年も一緒にいる気がして」
「俺も、同じ事思ってた…あ」

口を開いたクラウドの視線の先には壁掛け時計が0時を刺していて、私も釣られて、あ、とお揃いの表情。

「名前、誕生日おめでとう…来年も再来年も、俺が一番に伝える」
「うん…嬉しい。嘘ついたら針千本飲ませちゃうから」
「強気でいられるのも今のうちだな」

意地悪そうな顔をしたかと思えば、ゆっくりと組み敷かれる。
誕生日迎えて早々に、と少し抵抗の色を見せる私に、こんな時間に部屋で二人きり、やることは一つだろ?なんて言って、さっきの続きとも言わんばかりに首元へ噛みつくクラウド。

「…特別な日なんだから、いっぱい愛してね」
「あぁ…愛してる、名前」

今この瞬間、私、きっと誰よりも幸せ。
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