2015/11/11 17:34 宝狩人ヤスタカと吸血鬼レグリ続き

 綺麗になった城内を歩き回る。静まり返る夜の城で、ヤスタカの足音だけが響く。

「これが吸血鬼の本領か。」

 今も栄華を誇っているかのような見映えだ。
 吸血鬼が、ルーンを扱えることは知識としては知っていた。現存しない古い言語だ。吸血鬼と相対するときに調べたものだ。しかし、実際に使えるものを見たのは初めてだった。
 使えるものがいれば、ここの主は城を再生させたのだ。そのような大規模なことは無理でも俺を撃退する位は出来た筈だ。

 いや、規模ではないのか?本当に使えないだけなのか、条件が違うのか。
 思考に耽りながら、城内を歩いていると玄関ホールに戻ってきた。天井も高く、蝋燭も灯っていない為闇が深い。思考の海に身を預けるべく階段に座ろうとしたところで声が頭上から降ってきた。

「お前いつまでいる気?早く出てけって言ってるだろ。」

 不服そうな声。見上げても、闇が広がるばかり。だが、微かに空に気配がある。恐らくシャンデリアに腰かけているのだろう。吸血鬼に飛翔する能力は確認出来ていないが、彼の脚力を以てすれば、なんら不思議ではない。

「だって今出てったら俺殺されちゃいますよ。」

「俺がレッドを招待することも出来るとは思わねぇの?」

「ないです。」

 実際には可能だ。しかし、その選択をこの吸血鬼はしない。そして、彼自身が止めを刺しに来ることもないと、ヤスタカは判断している。前者は、わざわざ殺されても良い奴が、傷を処置することを大人しく見守るわけがない。殺されてもいいなら力ずくで追い出せばいいのだ。後者は、もう全ての言動が語っている。

 彼は、何らかの理由で自身の手は汚したくないのだ。

 吸血鬼は、血を求める本能が、人間が食べて寝るのと同じように欲求として備わっている。これは吸血鬼である限り逃れようがない欲求である。にも関わらず、手負いの人間を城に置いたまま、出ていくよう促すだけ。
 しかも、「俺がお前を殺すと思わないのか」ではなく、先ほどの吸血鬼を招くと思わないのか聞いてきた。それはおかしい。明らかに手っ取り早く欲求を満たせ、望みも叶えられるのに一石二鳥の選択肢ではなく、面倒で効率の悪い、明らかにデメリットの多い選択肢を提示してきた。

 断言してから、吸血鬼は沈黙している。

「…今って何年だ」

「…1815年の暮れですね。」

 背中に裂傷を負った男が答える。ふむ、79年か。そりゃ、城も廃れる訳だ。

「あなた一体いつの吸血鬼なんです。」

「いつの、ってどういう意味」

「古代の呪術、使える吸血鬼なんて伝承でしか知らないからですよ。長く眠ってたみたいですけど。」

 本当に、伝承でしかないと思ってた。なのに、使った本人は大したものじゃないという口調で答える。

「俺は別に古くないぜ。それにレッドは俺と同時代だけど、使えないし。」

 お前が狩ってきた奴等が使えなくてもおかしくない。と吸血鬼は付け足す。まずい、何か気取られる事でもしたか。
 先ほど、レッドの腕の銃創を気にしていた事を思い出す。報復ならば、彼が手を下すことも十分に有り得る。
 一気に緊張したヤスタカとは対照的に、吸血鬼はのんびりと続ける。

「何人だ?」

 のんびりとした口調でも、先ほどのように気配を殺せる男だ。答えれば、そのぶんいたぶって殺される可能性もある。

「…一人がやっとですよ。それも、生きる為に必死だったからです。」

「おいおい、嘘は良くないぜ。少なくとも3人は殺ってるだろ!」

 愉快そうな笑い声が降ってくる。何故だ。
 ヤスタカが仕留めた吸血鬼は、吸血鬼の発言に違わず3人。需要が有るから、供給した。貴族階級の人間は、自身の権力を誇示するために美術品を収集する。だから、欲しがっている人間がいるなら狩っていた。
 自分の能力がどこまで通用するか。ヤスタカからすれば力試しでもあった。

 しかし、力の誇示に好まれる「吸血鬼」という「商品」は、「商品」になった時点でヤスタカから興味は失せていた。
 自身の力が通用すると確認できれば満足し、さっさと納品する。トレジャーハンターのギルドでも、獲物自慢はよくある。けれども、ヤスタカは、いくら価値が高かろうと自身が気に入ったものしか残さない為、吸血鬼も自慢することなく手放した。その為、「吸血鬼を仕留めたらしい。」と周りが囁くも自慢する気配が一切なく石ころのような物を一心に眺めている為、噂もすぐに霧散する。

 周りからは「よく実力の読めない奴」と評価されていた。

「その様子だと「生きる為に仕方無く」っていうのも怪しいな。」
 さも愉快そうに、少年の吸血鬼は目の前に降り立ち笑った。


なんかくそ長くなってるからストップする。



12/10 01:34 短編


次代の国王を、決闘で決める国がありました。
6人まで配下の者を同伴させる事が出来、全員で戦うのです。
しかし、戦士の死はタブーでした。殺した者はいかに強くとも、民には認められず国王にはなれないのです。

四半世紀前、国王になった者は「残った候補は最後に国王と戦い、勝利した者に地位と名誉を授ける」と言いました。

それから現在まで、国王に勝利したものはいませんでした。
それどころか、国王が強者を選出し、作り出した四天王という機関を打ち破れるものすらいませんでした。

年老いた国王は言いました。

「四天王を全て下したものを国王とする。」


このお触れに我こそはと、国の名だたる者達が挑戦権を得て、城に集いました。
しかし、四天王はとても強力です。なかなか倒せるものは現れません。

そこへ、一人の少年が現れました。
彼は、この国の侯爵でありながら、辺境の更地にある孤城に住んでいました。その為、「辺境侯」と揶揄されていました。
皆、貴族のお坊っちゃんが何しに来たのだとせせら笑っていました。
周りにちやほやされて勘違いしているに違いないと思っているのです。


せせら笑っていた者達の表情は凍りつきました。
今まで自分達が全く倒せなかった四天王を、獅子奮迅のごとくあっという間に倒してしまいました。

四天王が貴族に買収された、手を抜いた等と叫ぶものもいましたが、皆理解していました。

四天王は我々に全く本気を出していなかったのです。彼らの本領を引き出した上で少年は勝利しました。

彼は、6人の戦士を連れていました。
先陣を切るは、奇術を操り相手を惑わす『三面の奇術師』
豪腕から素早い剣劇をくりなす『四臂の怪力剣士』
猛る獅子を操る『猛火の獣使い』
鉄壁を成す、岩窟の王『巌将軍』
どんな守りも突き崩すジェネラル『金剛槍』
華麗に舞い、全てを薙ぎ払う『民の風』

どの戦士も、名の知れた者達です。一人一人が王の座に挑戦してもおかしくありません。そんな彼らを指揮する少年は無名でした。

無名の少年に、6人の戦士は忠誠を誓っていました。


しかし、少年は彼らの忠誠心に見向きもしていないようでした。



辺境侯は文句があるものの決闘を受け、勝利によって黙らせていきました。
辺境侯が王になると皆が思っていた時、四天王を倒したものがもう一人現れました。
彼は、貴族でも武将でもない、何かを言う為に辺境侯を追ってきたただの少年でした。しかも連れている戦士は6人いるにはいますが、あまり強そうには見えませんでした。
戦士と喧嘩しながら、そして戦士に諌められながら現れた少年に誰も期待していなかったし、もう王は決まったので興味もありませんでした。

規定通りに行けば、四天王を倒したものが王です。二人が王になることは出来ません。

そこで、急遽二人が決闘することになりました。




接戦を制したのは、弱そうな少年でした。


騒然とする城内に威厳ある声が響きます。

「我が孫グリーンよ、」

奥から国王が現れ、グリーンと呼ばれた辺境侯には信頼と愛情が足りないと仰られました。
しかし、グリーンにはグリーンの強さのあり方があります。それが間違いな訳ではありません。それでも、グリーンの心の中は間違いを責める声に満たされていました。

声を遮ったのは、少年でした。

「グリーン、」


君は、独りぼっちじゃないよ。




その言葉に、孤城の主は己の後ろに有るものに気付きました。

振り向いた先には、得難いものがありました。ずっと欲しくて、手に入らないと思っていたものは、いつの間にか手の中に有ったのに

ただ、
気付いていなかっただけなのです。

12/15 22:58 意気消沈なので短編

 夢の中で、知らない男達に突如襲われ殴られた。どこかで、これは夢であると気付いていながらも恐怖していた。そして、夢の中で俺はボロボロになった状態で祖父の前に引き摺っていかれ、こう言われたのだった。

「えーっと…誰だったかの」


 目が覚めた。あまりに強烈に弱点を攻められると意識が覚醒する。これは初めてではない。
 あれは幻影だ。個性を自ら否定し、迷走した自分が作り出した責める自分。責めるだけで解決策を与えてくれるわけではない。弱点そのものだ。
 朝から嫌な汗をかかせてくれる。頭を振って意識を変えたところで、ふと気が付いた。

 ここは、俺の家ではない。壁や床色は似ている。ごく一般的な室内だ。しかし、家具も寝ていたベッド以外ない。あまりに殺風景だった。遮光性の高いカーテンの隙間からうっすらと弱い光が洩れている。

 時間の感覚が狂っているのか、どうやら今は夜から夜明けの時間帯のようだ。朝ではない。では、なぜそんな時間に目覚めた。

 そこで、グリーンは気付いた。
寝ようとした記憶がないことに。この時期はとにかく忙しい。疲れは蓄積していたし、全て投げ出して眠ってしまいたいとも思っていた。しかし、投げ出した所で提出書類もジム内の通常業務も無くなるわけではない。だから、仕方なしに辟易する量に舌打ちしながら、まとまった休みを取れるように仕事をしていた筈だ。その後、何をどうしたのかが思い出せない。どうしたんだったか。
 …疲れていたせいか、思い出せる記憶もどうも前後関係がぐちゃぐちゃしている。
 ため息を吐いた。




あー、ここまでしか書けんかった。
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