2013/08/02 23:15

森をふらふら、フラフラ。
頼りなくなった足であてどなく歩いた先に見えたのは、開けた土地の真ん中に静寂と聳える古びたお城。

「すいませぇん。」

寂れた門は無視して、侘しくなった庭を通過する。花を咲かせたまま茶色に枯れた茂みはかつてはきっと美しかったのだろう。
扉についてノックをしたが、返事はない。これだけの寂れ方だ。誰もいるわけない。
思いきって荘厳と構える重い扉を抉じ開けた。
中は広間があり、ワインレッドの絨毯が中央の階段までを淑やかに彩っていた。綺麗だ。
何がって、中央の階段の踊り場に飾ってある絵が。
棺に入った美しい少年の絵。辺りのバラの方が毒々しく存在感を放っているのに、棺に入っているというテーマなのに、少年はただ眠っているだけのようで瑞々しい肌が透き通るようで、美しかった。

綺麗だ。

眺めていると、後ろからしゃがれた笑い声が聞こえた。

「その絵が気に入ったのかい。」

老婆は、(失礼ながらも)この寂れた城にさえ似つかわしくない卑しい笑みを浮かべた。レッドは内心眉を寄せる。かつては美しかったであろう城に比べて、なんというか、「かつては」とすら形容できないような、生まれながらにしてといった風の染み付いた卑しさがある。要は、第一印象最悪。

「あ、勝手に入ってすみません。」

「いいんだよ、そんなこと。その少年は、城主の息子だったグリーンさ。戦争に旅立つ父に老いたじいさんと取り残されて半ば監禁されていたような哀れな坊っちゃんさ。」

戦争。今の世界からはもう馴染みなくなった言葉だ。俺のじいちゃんも大きな戦争には参加していない。あたりの内紛やらクーデターやらは有ったようだけれど。

「…死んだんですか、彼は。」

「さあね、ただ、このガキは死んだような生き方の割に、誰よりも生きてたね。」

俺とまるで正反対だ。
俺なんか、周りから順風満帆だ、なんだと持て囃されているというのに、周りからはさぞ楽しい人生に思われているだろうに、
俺自身は、まるで生きた心地がしない。

苦しいと言えど、生きた人生であるグリーンが少し羨ましかった。

「ところであんた、疲れた顔をしているね。今日は泊まっていきな。」


2013/08/17 00:38

バイクに跨がり、自宅の近くの月極ガレージに格納する。
周りの気配を入念に確認してから外へ出た。
じめじめとした空気が気持ち悪い。湿気た気分の時に湿気た空気なんて勘弁してほしいもんだ。いや、湿気てるからもう一方も湿気てくるのか。どうでもいいことに考えを巡らす。

境内に入ろうとしたときに呼び止められた。
クライアントと俺の間を受け持つ男、所謂俺の雇い主であるワタルがたっていた。

「依頼で聞いた数より多かったんだけど。」

「なら、報酬も増やしておかないとね。で、何人やったの?」

「8。」

8体もの死体をごく自然に死んだ風に見せるのは、骨が折れる。
ワタルとの会話すら面倒で、最早言われた言葉もなんて言われたのか認識が出来ない。
ああ、今日は夜空が綺麗だ。

「無感動でいられる君が怖いよ。」

「……」


誰が、無感動なものか。
足が向かう先は自室ではない。ご本尊だ。
懐から数珠を取りだし合掌する。
魂が報われるよう、自身の罪悪が浄化されるようただひたすらに願った。



08/17 12:39

「レッド、お前アニメ化だってよ」
「アニメ化?おぉ、マジか。」
「おう。」

「リビングレジェンド、遂にアニメ化…ふふっ」
「キモいぞ」

「リビングレジェンドがアニメに…キターーーー!」
「古いぞ」

「リビングレジェンドアニメにキタキタ北原ー\(^o^)/」
「声優の持ちネタとるなよ」

「動いてるグリーンが見れるんだね」
「!?お、おう」

「ふふっ、楽しみー」
「……」

「顔赤いよグリーン」
「うっせ…、俺だって動くお前楽しみなんだからな…。」

「……」
「顔あけーぞレッド。」

「うるさい、グリーンズルい」
「お前が先じゃねーか。」

「…楽しみだなー」
「おー。」



08/19 07:08

「俺、お前とじゃなきゃ駄目なんだ…お前と一緒に泳げないと意味ないんだ!!!!」

「えっ……」

「………」

「ぶっはーー!似てる!マジ似てる!先輩たちやべぇええ草不可避!」

「だろ!?!!」

「あ、ちょっとグリーンさんドヤがおうざいっす。」

「………」

「レッド先輩までドヤってしないでください。」

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