「っ、…レ、ッド!!」

苦しげに、しかし恍惚とした声でグリーンが俺の名前を呼ぶ。
いつもそうだ。切なげに表情をゆがめ、快楽におぼれた声を漏らすグリーンは矛盾してる。そして矛盾してるというなんとも明快でない感覚を感じながらもそんなグリーンを愛おしく感じてる俺もやっぱり矛盾している。
仕方ない、人間は矛盾する生物だから。

でも、やっぱり、グリーンが俺の名前を苦しげに呼ぶ様子は釈然としなかった。



「なんでだよ」

だから、朝目が覚めてからもクリアな思考になってくれなかった頭がその質問をグリーンにぶつけた。…といっても、いきなりなんでだよなんて聞かれて何を指してるかなんてわかる奴いないと思う。正直、俺自身わかんないと思う。

「は?」

案の定、ベッドの上モードじゃないグリーンはいつもの調子で返してきた。訳が分からないという風に。

「だから、なんでそんな嫌そうなの。」

「いや、ソレ正しくお前のことだろ。」

すかさず返された。確かにそうかもしれない。なんだよ朝から機嫌わりいなと不審な目を向けてくるグリーンはあながち間違ってない。
しかし、なんて言えば伝わるのか。腕を組んで考え込んだ俺をグリーンは待ってくれる。なんなんだこいつ、せっかちな性格しておきながらいつも待ってくれて。三年間俺が放蕩生活してたときだって、今だって、昔だって。いっつもこいつは俺を待ってくれる。まあシルフに侵入して待ち伏せされてた時はビックリたまげたが。

「えーー…っと。グリーンさ、」

「おう、」

「ってる時に、俺の名前読んでくれんじゃん?」

「……」

そうだった、グリーンあんまり行為の時の話されるの好きじゃないんだった。帰ってこない相槌で気づく。だけど、聞いてくれるんだよな。

「そん時がさ、なんか、こう、」

「で、さっきのいやそうに繋がるわけか?」

「おうよ!」

自信満々に言うなとでこにしっぺを食らう。不意打ちに悔しがってると深いため息をつかれた。

「そんな事かよ…」

あらぬ方向に視線を向けながらグリーンが苦々しい顔をする。どうにも昔から俺はしょうもない事で悩んでいるらしいが、俺からすれば仕様もない事ではなくてわりと重大に思えて、夢中になるなんて稀で、要するに、もういいじゃないか馴れろよ!

「お前ってさ、にっぶい野郎の癖して目敏いよな。」

鈍い辺りかなり嫌味たらしく言われたけれど、これは褒められてるのだろうか、とりあえず礼を言っておく。と、褒めてねえよと突っ込まれた違った。

「お前さ、俺にも何にも告げずにふらついてたこと反省してる?」

「ちょっとは、」

だよな、と納得した様子のグリーンはじゃあむしろ何で確認をとったのか。よくわからないが、なんだか悔しい。

「あんま反省してねーってことは、さ、」

また消えるかもって事だろ。

俺を見ないグリーンが呟いた。
少し、納得がいった。グリーンは俺がいつ消えるか分かんないんだ。
簡単に消えないとは、言えない。俺だって俺がどっかいくタイミングはよくわからない、突発的に衝動に駆られるから。
返答をしない俺にグリーンは少しあきらめたような目線を向けてきた。
だから俺は返した。

「かも、…だけど、その時はグリーンを連れてく。おいてけないわ。」

ちょっと驚いたふうのグリーンは目を少し見開いた後に、「俺ジムリだっての」と笑いながら返してくる。おお、そうだった。どうしようか。

「…拉致る?」

不穏だけれど、そんな単語しか真剣に考えて出てこなかったから言ったら、グリーンは「俺がおとなしくされると思うか」って返してきて、それもそうだと俺は頭を抱える。
しかし、ふとグリーンをのぞくとなんだか嬉しそうだったからこれはこれでいいのかなって、なんだかどうでもよく思えてきた。



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