2012 03/11 18:08
瓶詰めにされたものが送りつけられてから一週間、寝不足な毎日が続いていた。
姉が帰ってくる前になんとか片付けたものの気持ち悪さはぬぐえずに皮膚が赤くなるまで必死にその日は体を洗った。
そこからは更に視線を感じ、気のせいと思うことすらままならず自分の部屋にいても安心なんてすることが出来るはずも無い。
睡眠なんておちおちしていられるはずもなく、ジムでトレーナーがいるときに安心感とともに睡魔が押し寄せてウトウトしては起こされるの繰り返し。
「リーダー、小包が届いてますよ。」
ヤスタカが執務室のドアをノックして入ってきた。その音でまたウトウトしていたことに気づくと「また寝てたんですか?」と苦笑された。簡単に返事をして小包を確認しようとして固まった。
見覚えのある小包。見覚えのある字。忘れられるはずもない一週間前のソレと酷似している小包に伸ばす手がためらわれる。
「どうしたんです、リーダー」
不審がるヤスタカに返事のしようがない。硬直したままでいると勝手に解釈したらしいヤスタカが「リーグからの書類ですか?」といいながら包装を解き始めてしまった。
「あ、いや、ちが…」
俺の言葉を聞く前に外装をさっさとはずしてしまったヤスタカは中に入っていた箱もなんだという風にさっさと開けてしまった。
「ひっ…」
「なんですか?コレ…」
俺の反応に眉をひそめるヤスタカ。どうすればいいんだ、声が出ない。一週間前は自宅に、そして今回はジムにまで送られてきたソレへのストレスがついに最高潮に達した。
「その瓶を置いて部屋を出ろヤスタカ。」
「え、いきなりどうしたんですかリーダー。」
「ウインディの炎でこの部屋全部焼き尽くす。」
そういってボールに手をかけたところであわてたヤスタカが俺を必死に制してくる。だがもう限界だ。この続く視線もこんな瓶もすべて焼いて無くしてしまいたい。
机をはさんでの攻防で咄嗟に置かれた瓶が地に落ちる。
再び襲ってくる青臭いにおい。呆然と割れた瓶とドロリと零れだした白濁を見やるヤスタカ。
頭は碌に回転してなくて、警報だけを鳴り響かせる。よくわからない焦燥感にグリーンは反射的にウインディを繰り出し指示を出そうとした。
「リーダー!!!」
口を開いた途端に抱きすくめられる。
ヤスタカに守られているような感覚に安心するも、余裕が少し生まれると再び競り上がってくる嘔吐感。
ヤスタカから離れようとしながら必死に抑えていると引き攣るような動きに察したヤスタカが促すように背中を擦ってきて抑えきれなくなった。
「、う゛ぉえっ…げほ、げほっ…!!」
「俺が掃除しますから、気にしないでください。」
内臓がよじれて切れてしまうような痛みに、呼吸を妨害してくる吐瀉物に体力がどんどん奪われ、ヤスタカの支えが無くては吐き出したものに顔面をつっこんでしまいそうだった。
崩れ落ちる俺の体を支えながら俺が落ち着くのを背中を擦りつつ待っていたらしい、話を切り出してくる。
「リーダー、相手に覚えは?」
「、ねーよ…そんな、もん」
「コレ、寝不足の原因ですよね?」
「っは、……はぁ…」
返答する体力なんて残ってないし、よくわからない相手のせいで寝不足に陥れられているというのも認めたくは無かった。
ただ、遣る瀬無さと今までのストレスでボロボロと涙が溢れ出してく。
応えずにいた俺に対してヤスタカは起こる気配もなく、そのまま自己完結したように「わかりました。」といい、言葉を続ける。
「これからは俺達がリーダーを守ってみせます。」
ヤスタカの強い意志の見える言葉に今まで以上の安心感を覚えると段々と意識が遠のいていった。
03/15 18:52
たまに頭にモヤがかかったようになって言葉が紡げない。
音が聞こえないときがある。
そして、手足が痺れてまともに動かせなくなる。
事故前後の事は全く覚えてなくて、実感は全く無いがどうやら野良試合で技の近くに飛び出してしまった子供を俺が庇ったらしい。俺の慈愛の精神に泣けてくるぜ。本当に、泣けてくる。将来有望な子供に技食らえとは言わないが、俺だってまだ20にも言ってない若者だ。じいさんより先に障害を持ってどうする。
医師には命に別状はない、次期に治るかもしれないから経過を見守ろうといわれたが、最近は悪化した気がする。
どうやら脳への衝撃が強かったらしく体が痛いとかはないが平衡感覚が失われたり、いきなり目が見えなくなったりと多彩になりやがって。
正直、もう懲り懲りだった。天に恩を仇で返された気分だ。
「あ、悪い…。」
またぐらりと感覚が消えたと思ったら傾いていく体。支えたのは俺自身ではなくウインディ。抱えていた段ボールもカイリキーに掠められる。
少し疲れただけですぐあらわれ、安静にしておけば収まるものの弊害も良いところだった。
病院に通うにしてもピジョットで飛んでいこうにも途中で平衡感覚が失われればアウトで、進展のない通院にも嫌気が差す。
「大丈夫?」
散々手持ちに促されソファで休んでいたときに声をかけられた。
赤がトレードマークの幼馴染みがいつの間にか向かいのソファに座っていたらしい。コイツだって大丈夫じゃないっていうのは解ってて聞いてるんだ。他に掛けれる言葉が解らないから。この変わらない問い掛けもいい加減に疲れてきたから俺は何も返さない。
すると、ぼんやりと視界に入れていたレッドの表情が歪んだ。
「僕がなれば良かったのに…」
泣きそうな声で、小さく。
なれば良かったのにって何に。この障害の話か?
ならソレはおかしな話だ。コイツとの野良試合ではあったが、あれは寧ろちびっこが飛び込んできたんだし、レッドに全く非はなかった。それなのに俺の痛みをレッドが負うべきだったと悔いている。
「バカな事言うな…」
だから、つかれた脳でも迷わずにその一言だけは返した。
03/17 04:55
カニバリズム書いてたんですけどなんかしっくりこなくて………なにがって考えた内容が。
ソレで書いてた内容ッス
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レッド嫌いグリーンさん。
ねえちょっと聴いてよグリーン、俺さ…
グリーン午後暇?
ねえグリーンこのあとさ、
グリーンこの前………
ああ、もう煩い!!
心の中で叫んでも、実際には眉間にシワがよる程度、だって感情をぶちまけたら俺はじいさんに嫌われる。じいさんはレッドに肩入れしてるから、それだけは避けたい。
だから、レッドから離れるように、レッドが俺が遠ざけるように素っ気無い態度をとってるのに、この男ときたらさっきから俺に向けられた言葉が絶えることはない。
「聴いてる?グリーン」
「ああ、聞いてるよ」
そう応えれば満足そうに続けられる一方的なトーク。
飽きないわけ?
うざくないわけ?
こんな素っ気無い態度なのに?
顔を向けてもいないのに?
思い通りにならないイライラも、コイツへの嫌悪と共に募っていく。
イライラしながらも一応頭には内容を入れておく。
じいさんからの伝言はたまにコイツ伝いで言われたりもするから、聞き逃したくは無かった。
「本当、グリーンのその表情たまらないよね」
不意にレッドの口からこぼれた言葉に耳を疑う。
なにがだよ、今の俺の表情解っていってるのかコイツは。
…わかって言っているのだとしたらキモチワルイ。
「その嫌悪感丸出しの顔、本当そそられる。」
思わずのけぞった。顔が引き攣る。
コイツ、俺の態度の意味わかった上で言ってるのか。
駄目だ、頭がおかしい。コイツは狂ってる。そう思ってるときのこの
表情は、間違いなく眉根を顰めてるはずなのに、ますます笑顔は深まるばかり。
とにかくこの場から逃げ出したくて、無言で席を立つとレッドは僕もと席を立つことはなかったが、後ろから一言声をかけてきた。
「僕のこともっと嫌ってよ、グリーン。」
思わず振り返ってみると澄ました笑顔で、まるで未亡人でも気取っているのか癪に触る。
もう、表情を隠すことはしなかった。あからさまになろうとも、それより俺はこの場から逃げさってレッドの視界に入れられたくはなかった。