海賊パロまとめ

2012/01/04 16:20

「先輩、悪く思わんでくださいねー」

「ふざけるな、ゴールド」

計算外だった。後輩であるゴールドはいつも俺とレッドの中立を保っていたからまさか、
まさか、レッドの側についてるなんて考えていなかった。

「グ、リーンさん」

今ゴールドが俺の傍から奪い、羽交い締めにしているのは色々な地方に勢力を伸ばしている貴族の子で、何故かグリーンになつき、海賊船に乗り込んだ少年。
首元には、ゴールドの愛する懐刀であるダガー。

「いっ、……!噛むなって!」

意を決した表情をしてからの少年の行動は早かった。
腕に噛みつき、するりと拘束を逃れる。
だが、ゴールドが許すわけもない。
少年を再び取っ捕まえいつの間にか渡されていた掛け橋の向こうへ渡る。

「ご苦労様、ゴールド。」

「約束破ったら、解ってんでしょうね……」

わかってるよ、そう言って合図をすれば奥からボロボロな姿のシルバーが引き摺られてくる。
そういうことか、

「随分不粋な事してくれたじゃねーか、レッド。」

「海賊に粋なことをしろなんてルールはないからね、」

不敵な笑みを浮かべる。

「条件はなんだ。」

「独りでこの船に来い。」

帯刀や、装備に関しては何も言われなかった。一人とはいえ、

舐められたものだな。

掛け橋を渡りながら思う。

「ソイツを返せ。」

掛け橋の中間地点で立ち止まり、要求すれば俺が約束を破らないことを何度も接触したからわかっているんだろう、あっさりと承諾される。

「グリーンさん!」

「先に船に戻っとけ」

優しく諭せば、何度も心配しながら振り返りつつも梯子を渡り終えた。
確認してから敵船へ降り立ちサーベルを引き抜けば、レッドの満足そうな笑み。

後ろで掛け橋を蹴り落とす音がすれば、戦闘開始の合図。

「いけ、バナード!!!!」

いきなり老害かよ、喉を鳴らして笑えば、盗み見たレッドの表情も満足そうに歪められていた。

お前の部下全員床に伏してやるよ!



01/04 23:54

全身が痛みに悲鳴をあげている。だが、俺はまだマシな方で部下が問題だった。意識がないものが半数ほど。
レッドも俺もクルーは少ないが、俺のクルーはレッドの倍は居た筈だ。
だが、大乱闘になった結果、レッドの部下は手負いになりつつも伏すことは無かった。
ダメージは大きかった筈だが、獣染みた本能だろうか、執念で闘っているようだった。
まるで、ゾンビのように向かって、さほど実力に差はなかった筈がこの様。
目の前の人物に剣先で顎を押し上げられる。

「どう?今の気分は」

至極、楽しそうに、愉快そうに。
俺としてはコイツの部下に拘束されている時点で非常に不愉快極まりない。
睨み付けていると、実戦を培ってきた手で顎を掬われた。

「俺はかなり楽しいんだけどさ、」

見れば解る。
腹が煮えてくるのを感じ、一番手っ取り早いであろう方法で全てを答えてやった。

一瞬凍りつく空間。レッドの表情。
レッドの頬に垂れる透明な液体だけが時を刻む。
俺が唾を吐いたことに最初にリアクションを起こしたのは両脇で俺を拘束している二人。慕う船長への無礼に相当ご立腹になられたらしい。
しかし、レッドが制した。

「あの船にグリーンの部下全員戻して。錨揚げて。」

唾を拭うこともせず、立ち上がり部下に指示を出す。

「僕等も退散するよ。グリーンは牢に入れといて。」

あ、枷も忘れずにね。

そう言って船内に去っていったレッドの瞳は燃え盛る炎のようだった。



01/19 21:39 ここから別軸


「観念しろよ、野蛮な海賊共」

にやりと笑みを挑発的に浮かべれば大抵の奴等は乗っかってくる。
しかし、俺を知るもの、階級に理解のあるものは制服を見るなり一目散に逃げ出す。まあ、俺様が取り逃がす訳ねーんだけど。

だから、今回もそのはずだった。
中途半端に動いて裏をかかれるより動きを見て対応する。それが常の作戦だったのだが、
相手は動く気配はない。

どういうことだ?

考えが巡りに巡るも答えが見つからない。睨み合いの平行線に嫌気がさしてきたころ、相手方がついに動いた。

「誰?」

奥から人が現れた。赤い厚手のコートを羽織った男。どうみても他の奴とは違う、総てを統べる者の風格。
アイツが船長。

「てめぇらを逮捕しに来た、大人しくお縄につきやがれ!」

もちろん、お縄に大人しくつくわけがない。第一、
俺はアイツを知っている。
レッド、現在最も強いと恐れられている海賊、その船長がアイツだ。
逮捕に向かった俺の同期や先輩、何人、いや、何千が犠牲になったんだか。行方知れずが後を絶たない。
警戒しつつ、緊張の糸を張り巡らしていたが、レッドが首をこてんと傾けたことで一気にほつれた。

「来ないの?」

戻すのがダルいのか傾けたまま問われる。
思わず間抜けな声で聞き返してしまった。

「いや、ほら、今までの奴等がそうだったから」

だいぶ息巻いてたから思わず沈めちゃったけど、なんてとんでもないことを口にする男に唖然とした。思わず、で沈められるような造りではないのだ、俺達の使用する軍艦は。

「君は違うみたいだね。」

悠長に話す男の底が見えない。実力が解らないなんて久々だった。
つまりは、実力が俺では計れない領域にいるということ。

「全くどっちが海賊だってね、」

やれやれとジェスチャーで示すレッドの締め括られた話によれば、相手にせずとも向かってきたそうだ。だからやむ無く沈めたと。
ならば、今回は退いた方がいい。
逃げるのは気に食わないが、敗けが死に繋がる世界だ、命を無下にするわけにはいかない。俺は部下や家族の命も任されている。
部下へ退くよう合図で手を挙げる。

「退くの?」

「今回はな、」

相も変わらずの首の角度で問われ簡潔に答えた。
しかし、次に響く炸裂音が世界の空気を塗り替える。

「逃がさないよ、君が気に入った。決闘をしようじゃないか」

応じなければ部下全員を殺す、とは肩を撃ち抜いておいてよく言ったものだ。

「僕が勝てば君を頂く、負ければ一派全ての首をやろう。いい条件だろ?」

実力と肩のハンデを除けばな、心の中で悪態をつくも俺には選択肢がひとつしかなかった。





潮臭いベッドに血生臭さが加わった。


「君を僕の従順な犬に躾てあげる」



01/24 03:46

流石野蛮人、といったところか。勝たせる気はないらしい。もとから、悔しくはあるが実力はレッドの方がある。そこに課せられた俺のハンデは片腕が使えない上、だくだくと溢れ出す血液で

退けば部下を殺す。

サーベルを引き抜く。
俺の返事なんて最初から解っていたように変わらない表情、その腹立つ顔面に剣先を向ける。

「気に食わねぇな、自分はハンデなしか」

言えば、それはそうだといい懐にあった銃を投げつけてくる。剣を船に突き立て受け取った。

「撃ちなよ、避けないさ。」

余裕の体で、手を広げる。挑発にもとれるソレ。つまり、今心臓を撃つことも出来るわけだ。しかし、肩を狙う。利き手であろう、銃を投げた肩を。
トリガーをひいた。
先程と同じ破裂音が響いた。
眉を寄せ、小さく呻いたのを確認する時には既に、距離を1メートルとなくしておく。
素早く、剣を振り上げていたのを下ろす、正直ココでダメージを与えられなかったら勝ち目はない。
海賊を相手に律儀に約束事を守るというのが馬鹿馬鹿しいしな。どうせ、向こうは破るんだから。

「肩、か。律儀だね。命も奪えたのに」

どうやって、

レッドはまだ余裕そうな表情を浮かべていた。
俺が狙った場所よりも、少し後ろ。避けられないだろうとふんでの距離だったのに。
空を切った剣は空しく床に突き刺さる。
レッドを見れば、服が切れている程度で傷は確認できない。血も滲んでいないから望みは薄いだろう。

「こっちからも、いくよ。」

そう言ったレッドからの気配に急いでのこうとするも、遅かった。
重い蹴りが腹にめり込む。勢いで足が地面から離れ、息は詰まる。
そして後ろにあった積み荷へと蹴り飛ばされた。
訳がわかんねえ、どういう脚力してんだ!
うまく起き上がれず、周りのものをどかしながら起き上がると、視界に入ったレッドは大層立派な大剣を手にしていて顔が引き攣る。
コレは、本気を出しても敵うかどうか。

「あー…、お前等先に軍に戻れ!!」

軍艦からあがるブーイングとどよめき、目の前のレッドのぱちくりと瞬きする姿…できればそんな仕草は大剣を持たずにして頂きたい。

「俺は、後でこの船でかえっから!」

いえば、部下も押し黙り、目の前のレッドは嬉しそうにした。やがて、軍艦から撤退の準備に入る音や声がしだして、徐々に船の距離は開いていった。

「いいね、」

一言、レッドの口からは嬉しそうにする言葉が放たれる。出来れば、あいつらに俺の本気は見せたくないし、どちらかの部下が手を出せば混戦状態となる。その場合こちらの方がリスクが高い。いい奴等だ。誰一人として失いたくはなかった。

「ありがと、よっ!」

先程投げ捨てた銃を拾い、二発撃ち込み、剣でレッドが防いだ隙に近づき、床に突き刺さっていた剣を引き抜く。次いで銃をレッドに投げ視線を逸らし本命である剣撃をふりおろす。
攻撃は、レッドは避けきれず腕が切れる。深い、とは言えないが久々の戦法の割に上出来だ。
というのも、かつてはグリーン自身が、海賊行為にたまに走らねば生きていけず半海賊状態であり、その時の戦い方だからだ。よほど、綺麗と言えない戦い方は軍が俺らを拾ってくれたときに仲間共々封印した。俺たちを拾ってくれた軍に少しでも恩返しできるよう、権威を落とさぬよう、
ただ、無法者の戦い方は良い形勢を作り出したが長くは続かなかった。

海賊の一人が声をあげる。

「キャプテン、もう後がないですよー。」

その言葉をきいたレッドの目が変わった。
鳥の王者、鷲のような鋭く、獲物を狙い済ました瞳に炎が宿った。背筋が凍る。


数分後、世界はガラリと変わった。





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