王国パロの妄想ログ2011/11/01 02:02〜11/01 20:03

「たすけて…」

小さく呟いた声は独りには広すぎる部屋に広がる沈黙にかき消えていった。

おれはいつ『かいほう』されるんだろう
おれはいつくびわをはずしてもらえるんだろう
おれはいつたすけてもらえるのだろう

おれから『する』のはだめなんだよ
おれはまもらないといけないから
まもらないといけないものがあるから
おれから『する』とこわれてしまうんだ
おれはそれだけはまもりぬかないとだめなんだ

だから

「たすけて、」



言葉はうずくまる体に埋もれて消えた。


使命感と自己犠牲と喪失

◆◇◆

1年です。私の弟は1年敵対国に身を置いていました。
王家の中でも特に国民から愛されていた弟は国民が自ら身を削り献上してきたお金で国に帰ってきました。

しかし、弟は莫大なお金には応えれなくなっていました。

ずっと俯いたままで、毎週バルコニーから手を元気に振っていた弟はもういません。
大衆の前に立つことも叶わなくなっていました。
生きてはいるのです。足を損傷もしていないのです。

弟は心を失いました。言葉を失いました。愛情を失いました。信頼を失いました。

国民の前に立たせようとしては、しゃがみこんで吐き気を催し、言葉でない音で話すのです。

弟は何も出来なくなりしなくなりました。


私は「ねーちゃん!」と元気に呼んでくれる声を失いました。



姉の憂いと願いと絶望

◆◇◆

王子が帰ってきたと俺は連絡を受けた筈なんだ。

だが、目の前にいるのは誰だ。

出向いた時に、バルコニーから手を元気に振る姿はなくて、俺が見たのはバルコニーからその身を降る姿だった。

落下点に飛び込んだ俺は、誰を助けたんだ。

想像以上に細くなっていた身、
未だに残る首のアザ、

さて、ココからが問題だ。
こいつが誰かならグリーンさんは何処へいったでしょうか。

発狂する声は聞き飽いた。




空っぽの問題集



11/03 17:27亜種

弟を引き寄せ、僕の首筋に剣先を宛がう女は気高くも美しくもない、

弟に必死になるただの一人の姉だった。


女一人なら、いや、腕のたつ男でも五人くらいならなんとかなるほど僕は強い。
まあ一人対大国でもがくほど生きることに執着はしていないから、足掻いたりしないさ。

「どう?今の気分は。私の弟はもっと苦しんだのよ」

そりゃ、そうだ。僕は苦しんではいないのだから。
それに比べ、かの弟は国のために国民のために随分と苦しんでいたようだ。
自己犠牲の精神に酔いしれる様は人間らしく、しかし気高く美しかった。

「どう、この僕を追い詰めた気分は。さながらジャンヌダルクにでもなったつもりかい?」

「そうね、今すぐ首をはねてやりたい位に清々しいわ。」

憎々しげに刃を首に沿って動かす女。剣は一丁前に手入れをしていたらしい。痛みもなく、熱い線が刻まれるだけ。
本当にグリーンと兄弟なんて思えない。
グリーンなんてさっきから姉に抱き寄せられ黙っていると言うのに。
まあ、彼に僕の許しがない限り口も利けなくしつけたのは僕だけれど。

「全く、人生なんて何があるか解らないね。まさか国民が一人の王子のために大国に挑む?本当に面白いよ。戦争が終われば君は異端として火炙りにされるかもしれない、王子が奴隷になるかもしれない。」

そこの王子みたいにね、そう指差せば彼らの国民から石が投げつけられ、姉には侮蔑の眼差しを向けられる。
全く、不粋な奴等だ。いや、この場合劇的に飾るのには合っているのかもしれない。

「慌てることはないよ、今すぐ首をはねたら困るのはグリーンだ。」

「弟の名を口にしないで。」

文句をのべる姉は少し優柔不断な性格なのか、よくいえば弟想いなのか、迷いが生じる。
ただ、ココで僕は一矢報いてやろうと反撃に出たりはしない。
だって僕はこのゲームに負けた。

「グリーン、」
呼べば肩を揺らし、しかしちゃんと臆病に応じて視線をあげる。
そう教育したんだけれども。


「僕は、グリーンを解放しよう。楽しかったよ」


じゃあね、今度逢うときは友達になってよ、

光を取り戻した瞳に満足し首に刃を自ら突き立て切り裂いた。
赤い飛沫の向こうに見える兄弟愛の再会の喜びに、目の前で人が死んで逝く矛盾がなんとも滑稽さを映し出しす。

それにしても、どんな教育を受け、壊されても、「国をよこせ」という言葉にだけは首を縦に振らなかった王子は本当に美しく、気高かった。


ゲームの余韻と勝者の余裕に浸かる



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