レッドに負けた。
それでも俺はまたチャンピオンまで登り詰めた。けれどまたもレッドに敗れる。
そして、じいさんに呆れられる。

レッドに負けた。
それでも俺はまたチャンピオンまで登り詰めた。けれどまたもレッドに敗れる。
そして、じいさんに呆れられる。

レッドに負けた。
それでも俺はまたチャンピオンまで登り詰めた。けれどまたもレッドに敗れる。
そして、じいさんに呆れられる。

レッドに負けた。
それでも俺はまたチャンピオンまで登り詰めた。けれどまたもレッドに敗れる。
そして、じいさんに呆れられる。

何度やっても勝てない。徐々に深くなっていく祖父からの失望の念。嫌だった、目をそらすと映ったのは霧なのか靄なのか判然としない世界。
墓地だ。

足元で引っ張られる感覚がして、思わず見てしまった。
コラッタがいた。
体の透けたコラッタがいた。
恨めしそうな瞳と目が合うと次の瞬間、眼前には鋭い前歯が迫っていた。
あまりのことに咄嗟に目を閉じる。

足元で引っ張られる感覚がして、思わず見てしまった。
コラッタがいた。
体の透けたコラッタがいた。
恨めしそうな瞳と目が合うと次の瞬間、眼前には鋭い前歯が迫っていた。
あまりのことに咄嗟に目を閉じる。

足元で引っ張られる感覚がして、思わず見てしまった。
コラッタがいた。
体の透けたコラッタがいた。
恨めしそうな瞳と目が合うと次の瞬間、眼前には鋭い前歯が迫っていた。
あまりのことに咄嗟に目を閉じる。

足元で引っ張られる感覚がして、思わず見てしまった。
コラッタがいた。
体の透けたコラッタがいた。
恨めしそうな瞳と目が合うと次の瞬間、眼前には鋭い前歯が迫っていた。
あまりのことに咄嗟に目を閉じる。

次に目を開けると目の前にはレッドがいた。
「お前どこいたんだよ、」
すっかり成長した姿に手を伸ばすと、風にさらわれるかのようにレッドは姿を消した。
呆然と瞬きをすると自分は屋内にいて、周りから黒い服の男の手が伸びてくる。払い除けようとしても数でも力でも敵わなくて、ボールを手にとった。

目の前にはレッド、ここはチャンピオンの間だ。


レッドに負けた。
それでも俺はまたチャンピオンまで登り詰めた。けれどまたもレッドに敗れる。
そして、じいさんに呆れられる。

何回目だ、何回この夢をみればいい?
終わりはいつやってくるんだ?
コレは夢だと認識するほど、何度も見た夢。一向に覚めない。俺はいつ目覚める。
見せてくる情景はどれも俺の感情を抉り取っていく。いい加減、俺の中身が尽きてきた。抉れるものなんてもう無い。

不意にゲンガーの姿が見えた。

腕に捩れるような痛みが走り、目を遣ると目に見えない何かに確かに巻き付かれ捩られていた。
捩れる痛みは次第に四肢全てにわたり、痛みに呻く。

腕がブチりと音を立てた。
足がブチりと音を立てた。

ねじられた手足片方ずつが限界だと音を上げた。

フッと力が消えてグリーンの体が落ちる。
自分の体勢も解らなかったが、目の前には誰かの足が見えたので自分が横たわっていることを把握する。見上げるとじいさんの足だったことが解った。ひどく軽蔑している目で俺を見下していた。
ガジガジと何かが噛みつくような痛みが走り、見ればコラッタが膓に噛み付いていた。
痛みにもがこうと、コラッタに止めさせようと手を上げるとその場で押さえつけられる。黒い、黒い影から伸びる白い手袋を嵌めた手が、四方から、あらゆる角度から、伸びてくる。
その手が今までとは違う触り方をして来て鳥肌がたつ。
手から逃れようと、上体をおこした一瞬、見えた赤。
すぐに押さえ付けられたが認識するには充分だった。
ああ、アレは。

レッド、レッドだ。

酷く軽蔑した瞳でただただコチラを傍観していた。

ああ、見放された。
瞬時に理解する。その瞬間一切の感覚が消え失せた。
痛いと感じていた手足から痛みは感じない。伸びてくる手から逃れようという感情も消え失せて、コラッタを諌めるなんて考えは既に外だった。
服を無理矢理破かれ体を暴かれ、口や後口になにかを無理矢理入れられる。
不思議と何も感じなかった。
祖父と幼なじみの目の前でもみくちゃにされているというのに、祖父も幼なじみも、あろうことか自分でさえも何も感じてないようにただただ時間に流される。


気が付くと、無機質な天井が映っていた。側にいた男に促されてその場に座り込む。

「グリーン君が目覚めたみたいですよ。」

「グリーン!!」

声を張り上げて赤が駆け寄ってきた。肩を掴まれる。

「おや、目が虚ろですねぇ。」

元から近くにいた男はそう言うと手を二度叩いた。
その男に顔をあげろと言われて顔をあげると眼前には血塗れになったイーブイがいた。
近寄ってきた赤は側にいた男を罵倒する。

「ブイ……」

イーブイが俺を呼んだ。
ソレは認識出来る。だが、次に何をすればいいのかわからなかった。イーブイは俺を呼んだが、何を求めているのかわからない。
そのまま眺めていると赤が怪訝そうにした。

「おや、全く反応を示さない。せいぜい頑張って下さい。」

愉快そうに言うと男は出ていった。
必死にレッドは俺の名を呼び続ける。俺はレッドを見ている筈なのに、レッドは俺を呼び続けた。だが何度か呼んだ後舌打ちすると俺から離れてイーブイへと駆け寄った。どうやら回復の薬を使っているようだ。
イーブイの呼吸が落ち着いてからレッドは俺を睨み付けた。

「なんでイーブイを助けない…?」

声色で怒ってるというのが解った。
なんでだろう、

「どうせ助けても次のしゅんかんには血まみれだろ、どうせ死なないし」

グリーンが声を発したと思ったらあまりの内容に思わずレッドはグリーンの頬を打っていた。
打った瞬間しまったと思ったが、彼の異常を際立たせただけだった。

「……レッド、今何かした?」

「は?」

自分の失態を口にしろとは、
しばらく呆然としていたと思ったら、本当に頭がおかしくなってしまったのか。
聞き返しても反応はないし訳が解らなかった。

「グリーンを、打ったんだよ」

気が進まないが言わなければ埒が明かないとおもい、所在なさを感じながらも答えた。腕の中ではイーブイがぐったりしている。

言ったが、何も変わらなかった。

グリーンが寝かされていた台座に腰掛けたまま、グリーンはまたぼうっとしている。


「どうやったら目が覚めるんだろうな」


暫しの沈黙のあといきなり発せられた疑問。しかし問いかけなんかではなく、独り言だった。俺のことなんてグリーンは視界どころか頭の隅にも入れてない、誰にでもなく発せられた言葉。
グリーンは何を言っている?
何が目覚めるんだ?
伝説のポケモン?いや、彼は昔こそ躍起になっていたが今は伝説には然して執着していなかった筈だ。
ならば、なんだ?

薄暗い電球一個の部屋、自分の影が動いていることに気づかなかった。いきなり目の前に現れる赤い目。しまった、ゲンガーだ。


グリーンがチャンピオン戦で俺に敗けた。そして祖父に蔑んだ目を向けられる。何度も、何度も。
ソレを俺は鳥瞰している。
グリーンが不意に目を背けた。すると、辺りは霧に包まれる。だが不思議なことにグリーンが下を向いたことを認識出来る。途端にコラッタがグリーンに襲い掛かる。何度も、何百回も。
そして最後には、グリーンの目の前に俺がいた。グリーンは驚いたように手を伸ばす。その瞬間に俺は雪にさらわれるように消えてしまう。グリーンが固まっているのをいいことににじり寄ってきたロケット団がグリーンを押さえる。引っ張る。驚いたグリーンは咄嗟にボールをてにとった。
そして再びチャンピオンの間になって俺との戦闘。
ソレが嫌になるほど繰り返されたあと、不意に世界が白くなる。
そのあとグリーンは手足が何かによってもがれた。
いつの間にいた博士は足元に倒れるグリーンを、ただ見下していた。そしてコラッタはグリーンの膓に噛みつく。俺は、
いない。
少しの安堵の後、グリーンはロケット団に押さえつけられ体を暴かれる。
必死に抵抗するも何かを目にした後、グリーンは脱け殻のようになった。
その先には、

俺がいた。

俺は何もせずに傍観していた。
グリーンが抜け殻になったあとはいつの間にか消えていて博士もコラッタもいなかった。

ただ、ロケット団と奴等に好き放題に貫かれ、弄ばれている抜け殻のグリーンがいた。


ふと目が覚める。
俺がゲンガーを認める直前の世界のままだった。
既にゲンガーを見つけることはできず、諦めてグリーンを見た。
グリーンは俺が倒れる前と変わらず座り呆けていた。
昨日まで元気だったグリーンがこんなになったわけを知ってしまった。

「グリーン、」

呼び掛けるが反応がない。

「ねぇ、グリーン。こっち向いてよ。」

こっちを、向いてくれた。
緩慢な動き、活発な彼からは余程離れたリアクション。

「グリーン、帰ろう。」

暫く茫然と自身を眺めていたグリーンは、またも緩慢な動きで立ち上がった。だが、俺は帰ろうと言ったのに足はそれから先には進まない。

「こっちおいでよ、グリーン」

手を引くと無抵抗に引かれる。グリーンは、反応をしてくれない。

グリーンが元に戻るかは解らないけど、俺は戻るまで、戻ってもずっとグリーンから離れないと誓った。先ほど一瞬にして建てられた誓いだ。しかし一瞬だからといって安易なものではない。
なぜなら、


「ほら、グリーンおうちだよ。」










グリーンを殺したのは自分だからだ。





現実を壊す夢


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