脅迫



!!裏技話・私が直接した訳でもなく第三者から聞いた上での妄想ですあと無駄に長い!!



レッドは豪華客船のチケットを貰った。心踊るままに港へ向かう。
遠目でトラックが乗り込んでいくのを見た。きっとあれは食料。これからの長旅に備えたものが積み込まれていっているんだろう。
どんな食事が出されるのだろうか。

軽い足取りで船内を探索していると、船長が居合いの名人と船乗りが話しているのを聞いた。
そういえば、波乗りか横の木を斬らねばクチバのジムは入れそうになかった。あのジムはでんきタイプと聞くしちょうどいい、あとへ船長室へお邪魔しよう。

ポケモンにも教えてくれるだろうか、優しい人だといいな、トレーナーならバトルもしてほしい。

甲板で船乗りとバトルをしながらおもう。
船乗り達とのバトルは独特の雰囲気が新鮮だった。海の男といった逞しさがあるのに暑苦しいわけでもなくて、ジリジリと迫る太陽にその熱を取っ払うように吹き抜ける潮風がまるで船乗りそのもののようで、船乗りたちが海そのもののようで、純粋にカッコいいと思った。あんな男らしさが欲しい。

まあ、バトルは全部僕が勝ったけれど。

甲板で船乗りとのバトルも終え、汗を拭いながら海やいろんな国の話をしてもらっていると突如人の波が甲板に流れ込んできた。
何かのイベントかと思いきやそうでもないらしい。船乗りの人たちも驚いていた。
話をしてくれていたサンジさんがとっさに近くに駆けてきたおばさんに事情を訪ねにいった。
取り乱した様子のおばさんは発狂したかのように叫んだ。

ロケット団が船に乗り込んできたのよ!!

場が凍りつく。
急いで甲板から下を見下ろせば出入り口を封鎖している黒服の男を数名確認する。
ならば悪事を働かれる前に攻め落とすしかない。
ハナダでのこともあったし、彼らがあくどいのは知っている。だからか一瞬でその考えに辿り着いた。答えがあるならあとは手順を踏むだけ、そう思い勇んでドアノブに手をかけたところで止められた。

「ダメよ!中は毒ガスが満ちてるわ!」

……は?
そんなの人間は一堪りもない。ロケット団だっていれないじゃないかと思ったが、世の中にはガスマスクという便利な文明が有るのを忘れていた。
下の奴等が持っていればピジョンに奪いに行かせれたのだが生憎それも無し。
目の前で悪事が起きようとしてるのに何も出来ないなんて、
唇を噛み締めてるときに有ることに気がつく。
この場が今とても混乱していることに。
当然は当然だし、だから船乗りも頑張って諌めているのだが、頭がないんだ。指示をまとめて出す頭が。
つまり、いないのは船長。船長はこの場にいない。
ロケット団もここには現れて人質をとろうとしる気配すら見せていないってことはつまり、狙いは多分船長だ。バスジャックだって運転手を狙う。船なら船長だ。
多分、外からもいこうと思えば船長のもとへ向かうのは可能だ。どこに船長室はあったか、船乗りや乗客との会話、中の構造を必死に思い出す。

そしてまたも、違う問題が浮かんだ。

記憶を辿って思い出してしまった。
子供がいない。小さい子がいた筈だ。なかで会話した女の子を甲板で見渡しても見つけられない。
嫌な予感がして姿を探していると、耳っていうのは必要な会話を聞き取ってくれるらしい、遠くから嫌な声が聞こえた。

「ルミがっ、ルミがいないの!」

とある夫婦の会話に視界が眩む。やはりココの人数は充分ではないらしい。

意を決して制止を振り切り船内に飛び込んだ。多少ならジャケットで吸い込まないように出来るし。鼻と口にジャケットをおしあてる。


しかし、考えは甘かった。
ただでさえ毒ガスで視界は不明瞭なのに、更にガスが目に染みて視界が歪む。涙がボロボロと止まらない。痛い。
痛い目を擦りながらなんとか壁伝いに進む。

「ドガーッ」

!!!

曲がり角で突如とびだしてきたドガースにしまった、と思いつつどうにか逃げれないか模索しているとドガースがわずかながら収縮を見せる。表情がひきつった。まずい、こんな狭い空間で、
煙が噴き出す穴から光がもれだした。

「ピジョンごめん、十字路までかぜおこし!」

毒ガスのなか申し訳なくも咄嗟にピジョンをボールから出し指示をした。

ドンッ!

弾ける音が離れた所で爆音となった。
誘爆したらしく、続けて爆音が廊下のあちこちでなる。どうやら間に合ったらしい、近くで自爆されたらたまったものではなかった。
ピジョンに礼を言ってボールに戻す。かぜおこしをしたお陰で廊下を満たしていたガスは一掃され割れた窓から出ていった。

ゥェーン……

微かに、小さな子の泣いているような声が聞こえた。そんなに遠くないように思う。急いで聞こえた方へ駆け出した。ロケット団より先にルミちゃんの元へ…。
聞こえた方へ曲がっても誰も居なく、近くのドアノブに手をかける。室内にはそこまでガスは侵入しなかったらしい。多少はあるが、問題ない。人は見た目ではいないが、人の気配がする。モンスターボールに手を伸ばしつつ辺りを見渡した。

「ルミちゃん、いる?助けにきたよ」

返事はない。だが、物音が聞こえた。隅にあるクローゼットが目についた。
意を決してクローゼットの扉を開くと、そこには洋服の物陰で縮こまっている子供がいた。ルミちゃんだ。


ルミちゃんを甲板に連れていき、あとは船長だと戻ろうとしたときにルミちゃんとお母さんの会話が聞こえた。

「二人のね、お兄ちゃんがね、助けてくれたのっ…!」

泣きつく女の子の口からあかされる事実。
そいつ誰だ。女の子クローゼットに押し込んで自分だけ逃げたのか。
思っていたら違った。

「でもね、おにいちゃ、連れてかれちゃ、たあ…!」

わんわん泣きながら話された事実。
ロケット団に捕まった人がいる?
人質か?いや、人質の役目なら甲板の人間が十二分に果たしている。富豪ばかりで他を占拠するよりもよほど大金が動くはず。なら何で、

嫌な予感が脳内を這いずり駆け回る。グルグルとした感覚に吐き気さえ覚えた。とにかく、連れていかれたのなら助けるしかないだろう。

俺は再び船内への扉をくぐった。





ルミちゃんを助ける前に船長室の位置は想定していたから広い中も殆ど迷わずに行けた。
途中でしたっぱを蹴散らし、ガスマスクを念のため3つ奪って、ひとつは自分が装着する。しかし、ガスマスクをつけた状態でいつも通りかと言えばそうではない。息がしづらくて船長室の前に着いたときは息が上がっていた。

様子を見ようと小さく扉を開けると、目の前にはしたっぱに抑え込まれている壮年の男性、更にデスクの前には倒れている少年。
少年は近くにいるしたっぱから暴行を受けたのか口が切れていた。明るい色をした髪の毛から覗く肌は青白く生気がない。

グリーンだ。

あれはグリーンだ。間違いない。なぜ、グリーンがここに。

「いい加減にしろ、お前達………!!!!」
「だから、お前が船を明け渡すなら少年はもう可哀想なことにはなんねーの、わかる?」

船長が低く唸るような声をあげたのにも関わらずしたっぱは意にも介さない。
生憎したっぱとグリーンの距離が近くて、咄嗟に勝負を仕掛けても恐らく人質にされる方が速いだろう。

「誰だお前!」

後ろからいきなり掛けられた声に肩が跳ねた。最短ルートで来たから倒せていない奴が居たのか。
それどころじゃないのに!

ジム戦程の集中を見せ即座に倒す。
再び覗いた船長室の光景に固まった。
肌と肌が勢いよくぶつかる音が響いている。そこに被せてくるように老人の罵詈雑言を叫ぶ声。

ドアの向こうでは、グリーンが下着ごとズボンを下げられお尻にしたっぱの性器を突っ込まれていた。
太ももには血が筋を作っているのに揺さぶられるだけで、グリーン自身がみじろぐ気配は無かった。
何が起こっている?
船長はやめるように焦った声で怒鳴り散らしているが、ロケット団がやめる気配はない。それよりも笑いながら行為を激化させる。

「うっ………」

ゴボリとグリーンが嘔吐した。
黄色く濁った吐瀉物がグリーンの口からドロドロとこぼれて顔面を汚していく。グリーンは動かない。船長は息を呑んだ。ロケット団は笑っている。
充分だった。
この行為がどんなものかは解らない。
だが、この現状で充分だった。悪が嘲笑い、まともな人間が傷付く。そんなのおかしい。


「いくぞ、ピカチュウ」

電気袋からバチバチと音が弾ける。
それを確認して俺は勢いよく扉を開いた。






「ありがとう、少年。」

ロケット団が蜘蛛の子のように逃げていった後船長が声をかけてきた。

「グリーンは、」

大丈夫なんですか?
挨拶もほどほど、グリーンの容態を尋ねると「そうか、君がこの子のお友達か」と一人得心しグリーンを抱き上げた。

「顔色が悪い、大方ガスを多量に吸ってしまったのだろう。脈も少し遅いな、意識も朦朧としてる。ドガースならばガスに致死性は無い筈だがこのままでは危ないだろう。」

速やかにグリーンの容態を確認してくれた。命に別状はないらしくて一先ず安心した。だが、このままだといけないらしい。

「君は、グリーン君がされたことが何か解るかね?」

わからなくて首をふる。
そうだ、グリーンが何をされていたのか俺は解らない。見たと言うのに、酷いとした漠然とした印象しか得られず事の全貌を得られていないのだ。

「よく、男の人に女の人がされることなんだよ。酷くその人の心も肉体も踏みにじる最低な行為だ。心の傷が癒えることは殆どないだろうし、ソレを他人に言える人は少ない。しかもグリーン君は抵抗できないときにされた。ある意味では殺人よりもひどい行為だ。」

グリーンは、死んでしまうより酷いことをされた?このままだと危ないのに?それより酷い事まで今されていたのか。
鈍く大きな衝撃だった。
レッドがされたわけではない。だが、確実にレッドはされたグリーンと同等かそれ以上にロケット団に憤り、憎んだ。

「君は、その事実を流れで知ってしまった。グリーン君の支えになって欲しいんだ。」

その言葉に、力強く頷く。
俺は、ロケット団を許さない。






グリーンが心配で、暫くクチバに滞在していた。朝早く起きて町をうろついてグリーンの姿を探した。
船長は事態の収拾というものをしないといけないらしくて俺が先にグリーンを連れていった。そのあとに詳しい話は船長が事態の収拾をしたあとに来てしてくれたのだ。そのあとはグリーンの呼吸が落ち着いたのを確認して以降お見舞いには行っていない。だって、グリーンは弱った姿を見せたがらない。だから、俺がいたらグリーンは嫌がるから。


「あ、レッドじゃねーか!」
「グリーン!」

後ろから声を掛けられ、返事が一際明るくなったのにグリーンは、首をかしげた。
しかし、そこにいちいちツッコミは入れずにグリーンは話を続けた。図鑑の調子やジムの事、他にもあそこのレストランが上手いだとかどうとか。相変わらずのマシンガントークに無言で聞いていると思い出したかのようにグリーンは話を変えた。

「そういえばお前サント・アンヌ号乗ったことあるか?俺あそこの船長にいあいぎり習ったんだぜ!」

驚いた、まさか自分から話を振ってくるとは。
しかし、レッドは首を傾げた。グリーンは「知らないのかよ!?」と言ってサント・アンヌ号の説明を始めたが、頭に入ってこない。グリーンは俺に行ったことあるかと聞いてきた。だが俺はグリーンと船内であっている。そこから導き出される答えはひとつ。


グリーンは船内での事を覚えてない。


なら、

「へぇ、後で俺も行こうかな。」
関心を示したように相槌をうった。
グリーンごめんね。君との競争も楽しいけど僕はクチバジムの次はヤマブキへいくよ。そしてロケット団を潰す。


もう、グリーンに被害が及ばないように、
今回の事件が奴等によって浮き彫りにされないように。






お節介者の隠し事。


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