幽閉








寂しいな、寒いよ、ヒリヒリする。痛い、痛いよ。


なあ、レッド。




二人、人間がやって来た。男女のカップル。
俺は必死に呼び掛けた。
なあ、レッド。レッドを読んでくれよ。
俺は必死に伝えた。
ほら、こんな赤。こんな赤の印象なんだ!
絶叫して、男は真っ先に走ってもと来た道を走っていく。女は硬直した。ああ、置いていかれたな。お前も俺と一緒なのか?いや、違うな。お前体有るもん。なんだ、自分で動けるのか、なあ、レッドを、レッドをつれてきてくれ。俺はここにいるって伝えてくれよ。

今度こそ女は這う這うの体で逃げ出した。


一ヶ月前、レッドはここにきた。
けれど俺には気付かずに、レッドとお揃いになった肌色のない抜け殻を抱き締めて「辛かったよね」っていうとそのまま抜け殻を抱えて出ていってしまった。
その間俺は叫び続けた。
俺はここだよ
それに俺はいない
俺はここなんだよ
俺を連れ出してくれよ
もうこんなところ嫌なんだ
なあ、レッドどこいくんだよ
そんな人形俺じゃない
俺一人じゃ歩けないんだって
レッド

レッド!

レッドは行ってしまった。俺の後ろでは真っ赤な影がクスクスと笑い出す。
嫌なんだ
こいつらみたいになってしまうことが。
怖いんだ
こいつらと一緒にいるのは。


ある日、いつぞやのカップルが一人の男を連れてやって来た。
そいつは赤くなかった。
赤じゃない、レッドじゃない!
なあ、レッド、レッドは!?
俺は叫ぶ。
すると、男はカップルを外に出して歩み寄ってきた。俺を見てる。

「グリーン君、だよね?」

違うレッドはどこだ
レッドはどこだよ

「レッド君は君を連れていけないよ」

違うレッドはレッドが俺を連れ出したんだだから俺をレッドが連れ出してくれるんだレッドはどこだよ

「レッド君は君が見えない」

うるさい

「レッド君は君に触れない」

うるさい!!違うレッドなら俺を連れ出してくれるレッドなら!お前なんか呼んでない消えろ消えろ消えろ!!レッド、レッド助けてくれよ!

赤い影達が俺の激昂に便乗して呪い殺そうと男に手を伸ばす。そうだこんな金髪の男レッドじゃない。

「ゲンガー、グリーン君以外食べていいよ」

男の影の方が強かった。
ずっとうるさかった背後に一瞬で静寂(しじま)が訪れる。
寒い、寒いよ。

レッド、助けて…

なんで、俺を助けてくれない?
なあ、怖いよ。
俺、捨てられたのか?

「ここを出よう、グリーン君」

駄目だ出れないんだ
足が痛いんだ動けないここから動けない
だからレッドが連れてってくれる筈なんだ

「今の君はレッド君を呪い殺す。」

レッドは死なない俺見たいによわっちくなんか無いからレッドは死なない俺を連れ出してくれる筈なんだから

「マツバさん、」

レッド!
レッドだ!レッドが来てくれた!俺を迎えに来てくれたんだ!

近づこうとしたら阻まれる。腕を掴まれた。
はなせよレッドが迎えに来てくれたんだ今いかないとまた置いてかれるもうこんなところ居たくないんだ離せよ離せ離せ離せ!

建物が振動する。パラパラ砂塵が落ちる。レッドが後ずさった。ほら、いってしまうはやくはやくはやく

ズガンと頭が痛んだ。砂塵がやむ。
痛い痛い痛い
痛、い?
とたんに何かが頭を過る。
逃げようとしたら折られた足
痛い
刃物で雑に剥がれていく皮膚
痛いよ

チリチリと空気が刺してくる感覚に粟立った。

やだやだやだやだ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!痛いのやだっ、
「いやだあああああああああぁぁぁぁぁあ」

叫んで手を振りほどいた。



「マツバさん、」

「聞こえるかい。」

レッドが話し掛けると、マツバは有無を言わさなかった。
レッドは、先ほどの頭の中でガラスが叩き壊されたような感覚を問おうとしたのに言わせないようだった。
仕方なく、耳を澄ますと啜り泣くような声が聞こえてくる。

「グリーン君は、無意識に呪い殺そうとしてきたよ。」

他にも同じように殺された人たちに引きずり込まれたみたいだ。
彼、君にも余程、執着はしているけれど、ここから出られないって意識が強すぎたみたいだ。

「いっそのこと君について君だけを呪ってくれたら良かったのにね。」

困ったようにマツバは微笑んだ。言っていることは物騒だが返す言葉がない。全くだった。彼の痛みなら僕は全部引き継いだっていいのに。

「グリーンは、」

「今は僕達とはガラス一枚挟んだような空間にいるよ。引きこもっちゃったね。」

そこじゃ、僕ら人間にはどうにも出来ない。

「また明日来ようか」


そう言うと男は振り向いてゲンガーを呼んだ。















赤い自縛




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