資格なんてありゃしない(赤緑←金)



バトルに勝った。
だが、俺の目的は果たされていない。
茫然自失といった感じで立っているヤツの胸ぐらをつかむ。
世界から自分を切り離すなら徹底的にしろよな、取り残されたあの人を苦しませて、
声に出していたらしい言葉に目の前の男は顔をあげる。
しかし、視線を交わらせること無く振り上げた腕の先を見つめた。
サヨウナラ、愛しい人の愛しい人。


次の日、朝一番に俺はトキワに降り立つ。昨日は血が服にこびりついて大変だった。なんとか落として今は言われないと解らないくらい。
俺のシナリオでは、俺は昨日誰とも戦っていない。雪山を遭難していたら赤いお化けを見たってことにしている。


ジムの扉を開いて挨拶すると、中から嬉しそうにこのジムの主が返事を返してくれた。
そして、開口一番こう言ってくれたのだ。

「レッド倒したんだってな!」


嘘だろ、だって知ってるヤツは誰もいない筈だ。
グリーンさんだって居場所すら知らなかったんだから。
俺のしたことが、バレてる?
背筋が冷えていく。冷たい汗が一筋、背骨を伝った。
そんな俺の焦りを知ってか知らずか、グリーンさんはしてやったり顔で鼻を鳴らす。

「なんで知ってんだって顔だな、」

「誰から聞いて…?」

声が震える。精一杯の質問だった。
すると、グリーンさんは少し切ない感情を瞳に映した。けれど、すぐに目蓋が覆い隠す。

「本人だよ、レッド。」

昨日の夜レッドが来たんだ。
旅に出るって、
あいつ多分もう戻ってこない。またねって言わなかった。さようならだった。

目を閉じ昨夜の出来事を語る彼の睫毛が小さく震える。
あの野郎が化けて出たっていうのか。
確かに、昨日の夜、確かに俺はバトルを仕掛け、そのあと……

「他には、何も言ってなかったんすか…?」

思わず、聞いてしまった。こんな、墓穴を掘るような。
しばらく思案したグリーンが口に出した言葉は更にゴールドの心を冷やした。

「俺には資格がないとか、なんとか………グリーンには強い後輩がいるって、」

化けてでたわりに彼は最後まで話さなかったらしい。
自分は殺されたってのに頭おかしいんじゃねーのか。

都合は良いが、心にキリキリとしめつけられるような不快感が宿った。






ああ、殺されるんだ。
漠然と状況を理解した脳は何も指示を出さなかった。
普通なら足掻くだろうに、俺はそんな気配すら心の片隅にも抱かなかった。

ゴールドとかいうコイツがいうあの人とはグリーンの事なんだろう。
だって、三年も近くにいたのに黙ってた。

解ってる、俺にはグリーンを幸せにする権利なんて無いってことを、

でも
さよならも言わせないなんてあんまりだ。
せめて、
区切り位はつけさせて。

他人を殺すような人間をグリーンの近くに置いておくのは酷く不安だけれど、こんな俺より、いいかもしれない。

だったら君の狂気に火が灯らないよう、俺はその手助けをするだけ。







幸せを語る資格なんてありゃしない





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