1と0の話
1と0の話
例えば、君が幼なじみの同性を好きになるとして。
それなら僕が苦しむことはなかったのに。
チャンピオン戦が終了してからマサラに帰ったグリーンは屋根に降り立ち、窓から自分の部屋に入った。
彼がさみしがりなのは知っている、そして「出てけ」というときは本当に出て行ってほしいことも、あっさり出られるとさみしいことも知っている。
だから、僕は真っ先に君を追って帰り、会いに行き、追い出された。
思い通りにいかないと嫌なのも、本当の素直な気持ちが言えずにもどかしく感じているのも知ってるよ。わかるよ。
共感できるわけではない、彼とは名前や性格からして正反対と言っていいほどで僕にそんな考えはなかったから。
そして僕は屋根で待つ、君は絶対にカーテンを開けるから。
何年幼馴染をしてると思ってるんだか。
何年この想いを秘めてると思ってるんだか。
この思いを自覚はしているよ、そして伝えられないことも知っている。
君は劣等感にまみれていて苦しそうだった。
原因が人間関係にあると言うことも知っていた。
その中に僕が含まれていることも、
知っていた。
地味で無口で一般家庭で育った僕と違って、君は優秀だと称えられ、周りから無責任な期待ばかりされて祖父がポケモン界の大権威というプレッシャーまでかけられて、行動だって限定されていた。
僕が君に想いを伝えれば優しい君は無下にはしないんだろうね。
君のような立場の人が同性愛だと世間に知られれば苦しむのは君だ。
だから、僕は伝えられないし、優しいだけで恋愛対象でもないのに付き合わせるのは滑稽にも思う。むしろ無意味だ。
鈍感な君が気づいてくれるのをただ秘めながら永遠に待っているよ。
くるとは思ってないけど