ひずんだ想い(R)
凄く長い上、R18です。
ひとりでフラフラと天界の外れまでやってくる。
一人になりたいときは決まってココに来る。悪魔と住む世界が近いからか、天界であるにも関わらず天使すら近寄らない。
ふと池を覗き込むと水銀かのように反射し鮮やかな花、澄んだ空、果ては陰鬱な表情をした自身までをも映し出す。
なんでこんな表情してるのかって、そりゃアイツが失踪なんかするからだよ。
3年前の今日、親友は突然姿を眩ました。
言い訳にしか聞こえないけれど、素直になれない俺にはアイツしか友達がいなくて、
いつも近寄っては喧嘩をしていた。
他にも嫌がらせのようなことは沢山しているから、いなくなった理由は俺かもしれなくて、
そう考えただけでナーバスになるには十分だった。
「レッド………」
「大丈夫?」
後ろから聞こえた声に振り返って返事をしようとした。が、俺は言葉をのみこむ。息も呑んだ。
だって、
今、
目の前には、
「レ、ッド………」
「うん、久しぶり。」
声が震えた。視界が滲んだ。なのに、相手は平然としてて、
「どこ、行ってたんだよ…」
口からはやはり文句が出てくる。こんなんだから、消えたと言うのに。
他にも何か言わなきゃ、そう思っていたのに考えを遮るように警鐘が鳴り響いた。
─悪魔の侵入、ただちに迎撃せよ─
悪魔は辺境からじゃないと侵入は不可だ。ならば、真逆の方角でなければ今まさに辺境にいる俺が行けば早い筈。
さっさと普段は消してある羽をだし、場所が知らされ次第飛び立てるようにする。
「レッド!お前もはやく!」
「うん、でも行く前に──」
場所は────
サイレンの声は聞こえなかった。
目の前は真っ黒に塗りつぶされる。光を遮る大きくてゴツゴツと骨ばった翼。
どういう事かわからない、いや、解る。解ってはいるが、信じられなかった。
瞬きなんて出来てすらないのに、いつの間にか距離を詰められていて、そっと抱き締められる。
「楽しいことしようよ」
言い終わると同時にやんわりとした手付きで羽をなぞる手が根元へ到達し、
「いあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああっ!?」
一瞬思考が白く塗りつぶされる。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!
痛みに思考が奪われ、何も見えない。
痛みに呻いてるなか、熱くなる傷口にそっと手をおかれる。
優しい手付きだろうと触られたところから電撃のように痛みが全身を駆け抜ける。
グリーンの背中から生えていた誰もが見とれるような美しい光輝く真っ白な羽根は変な方向に曲がり、力任せにむしりとられ見るも無惨な姿となっていた。
熱くなる目頭にたまる涙は放っておいて力任せに睨み付けてやった。
が、どこ吹く風、レッドは舌なめずりをしただけ。
簡単な話、
悪魔はコイツだった。
堕天と呼ばれるこの事態はよくあることじゃないかと痛みをどうにか逃がそうと土を抉りながら漠然と思う。
白銀の羽が赤く染まり、じぶんをかき抱いた手すら赤く染まっていて、ああ、攻撃されたんだなと空っぽの心で感じる。
俺は純粋に悲しかった。
友人が悪魔となってしまっていたこと、3年音沙汰のなかったこと、冷めた目をするようになっていたこと
確かにどれも悲しいがそんなことよりも、
レッドに手を挙げられたことが悲しかった。
「どうしたの?グリーン」
目を細めて愉しげにレッドは笑う。笑う。
どうしたもこうしたも、
「僕に会えて嬉しくなかった?」
俺は、
「………嬉しくねーよ」
悪魔になってようがレッドはレッドだ。嬉しいに決まってる。でもさ、
悪魔は悪魔なんだよ、レッド。
嬉しさと同時に悲しさが泣きたいほどに押し寄せてくる。だってたった一人の大事な友人をこの手で葬らないといけないんだぜ?
だから、嬉しくないというのはある意味本音だった。
相変わらず、手が震えて力もなかなか入らないが、覚悟を決める。目の前にいるのはレッドと同じ顔した悪魔だ。俺の知っているレッドじゃない。
「グリーンに僕が殺せるの?」
邪悪な存在のくせして無邪気な瞳で問いかけてくる。実力は張り合ったときはいつもギリギリで勝てずにいた。だがそれも3年前の話。
「ぅ、はな、せっ………」
悪魔の力を手に入れたレッドというのはバカみたいに強かった。激しい技の競り合いであれば10分と続かない。一発ろくに食らえば終わり。その一発を俺が先に食らった訳だ。
レッドの尻尾によってがんじからめに縛られた腕が痛い。抵抗すれば力が強められた。
……まあ、もう抵抗する体力も残ってねーんだけど。
「もう抵抗する体力もないの?」
あまりにも図星な言葉に唇を噛み罵声をこらえる。前から何かしらレッドに文句をいっては手痛いしっぺ返しをくらっていた。
「その顔いいね」
ふと、呟かれた言葉には見下す以外にも違うニュアンスがあるようだった。その言葉の意図がわからず、困惑しているとサワリと脇腹を撫でられる。
ビクリと思わず肩が跳ねたのが面白かったのか、もう一度。
繰り返される愛撫にいちいちビクビクと反応する俺も俺だ。
だけど、力を入れても下唇を噛み締めても反応しちまって俺自身止め方がわからない。
「グリーンって敏感」
クスクスと意地悪く笑われ、俺のプライドというものが自分でもわかるほど傷ついた。
「ちげーよバカレッド!!!!離しやがれ!」
「………そうなの?」
意外にもキョトン顔で聞き返され、巻き付いていた尻尾があっさり離れる。
解放される拍子に体力を消耗しきっている俺はみごと地面に落下しちまったがこのさいどうでもいい。
やべぇ、腕に力がはいんねぇ。
悪魔になった方が素直なレッドの真意が見えなくてどうすればいいか解らない。
レッドを見上げようと上体を起こすと俺に合わせて屈んだレッドの顔が目の前に映された。
「ならさ、敏感じゃないグリーンは大丈夫だよね?」
まとっていた衣を掴まれ力の入らない俺にとってはキツいくらいに上体を持ち上げられる。
何が、と考えるまでもなく下腹部に走る圧迫感に吐き気が込み上げる。
「ぅ、くっ………い゙っぁ゙…」
信じられなかった。まさか、そんな、嘘だろ。
後口に宛がわれただけでも十二分にショックなのに、宛がわれたのがさっきまで俺を拘束していた尻尾なんだから。
先端が半分ほど捩じ込まれるが、無理だ、本来排出する場所。入るわけがない。
「やっぱキツイね。」
当然だ。だから、さっさとやめやがれ。
なんて考えた俺が甘かったらしい。
言うやいなやレッドは俺の衣に手を突っ込み、男にしかなく、本来他人には触らせないような場所をおもむろに撫でだした。
肩が跳ねるなんてもんじゃない。あまりのことに驚いて腹筋にも力を入れてしまって後口に痛みが走る。
「ぃあ゛…っ!」
痛みに呻くも気にせずに続けられる愛撫。
ゆるゆると反応しだす自身が憎い。
レッドにもたれ掛かってやっと今の体勢でいるのに止めさせる余力があるはずもない、正確に言えば右腕には感覚すらない。
ああ、駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ。
そう思っても、いくら念じても願っても体は意思を無視してどんどん快楽に溺れていく。
あがる息を抑えることに精一杯で、何も言えやしない。
「っふ、ぅ……ん、」
「……」
「……っひぁ!!あ、あ、」
やばい、何も考えられない。気持ち良すぎて訳わかんねっ…。
何か思案するように眺めていたレッドはいきなりグリーンの先端に引っ掻くように爪を立て激しく扱きだす。
バチンッ
頭がショートするような感覚に襲われ、目の前がまっしろになった。
「はぁっ、はぁっ、はっ、」
イってしまった体をおぞましく感じる。コイツの手でイかされるなんて無理矢理されるなんてされたなんて思いたくもなかった信じたくもなかった。
息がだいぶ落ち着き、白んでいた視界もだいぶクリアになってきた。
「ぁ、」
不意に抜かれた後口に入っていた尾が唐突に抜かれ、浅ましくも俺の体は反応する。
「何、挿れてて欲しかった?」
そんな訳ない、返したくても無理矢理イかされた体はダルくて返す気力も体力もない。
頭を優しく包み込むように抱かれ、耳元で囁かれる。
大丈夫、すぐによくなるよ。
ボーッとする頭では言われた言葉をちゃんと理解することは出来ず、目をあげるだけとなる。離されたレッドの顔はとても楽しそうだった。
なんで、そう思う間もなくまた後口に突き立てられる。
先ほどイッたばかりの後口には強すぎる刺激で、息が出来ない。しかも最初の刺激は練習だと言わんばかりの、比にならない強い刺激に体が仰け反る。
「いああぁぁぁああぁあっ、はっ、ひ、ぃだっ、」
痛みに筋肉が強ばる。ボロボロと涙が流れていくが、気にする余裕なんかない。
「やっ、やだ…ひ、いだ、い…!」
痛い、苦しい。そんな言葉だけが頭の中を占めていく。詰まる感情を言葉で吐いても上塗りされるだけで発散されない。
地面に爪を立てても上手く痛みを逃すことも出来ない。
しかし、腸内で蠢き回る尾がとある箇所を掠めたとき、今までとは違う感覚に体が跳ねた。
「や、あっ!」
甘い響きをもった声に、尾は執拗にそこを攻め立ててくる。
「やぅ、や、んあ…っあ、ひぃ!」
ヨすぎて苦しい、感覚が麻痺するほど攻められもう何が何だかわからない。
もうダメ、そう思って頭が真っ白になった瞬間、尾の動きがとまる。
過ぎる快楽から解放されるも体は快楽を求めているのか、勝手に動く。尾がイイトコロにあたり反応してしまい、反応してしまったことで尾がイイトコロに当たる、正しく悪循環。
「やぁ、とまんなっ……あ、んっ」
「僕なにもしてないよ?グリーンってば、淫乱だね」
はたから見ればひどく滑稽だろう様子をレッドは楽しげに見ていた。が、
「イッていいよ。」
「!?、やっ、ああああああああああ」
呟き、尾の動きを再開させる。激しい動きにもとから体力を消耗していたグリーンが耐えきれる筈もなく、二度目の射精を終えた後彼はかろうじて保っていた意識を手放した。
「コレからはずっと一緒だよ…」
往こう、地獄へ。うっとりと語るように、レッドは静かにグリーンの目元へ口付けを落とす。
レッドは、規格外の強さがあるにも関わらず歪んだ想いのせいで神に地獄へ突き落とされた。
しかし、最初は怒りはすれども今は感謝すらしていた。
だって………
鳥籠の中を見る。籠の中には涙で目元を赤くし、力無く寝そべるグリーンがいる。
だって、こうやってグリーンを自分だけの物にすることが出来たんだから。
レッドは意識を手放したグリーンを目覚めるまで飽きること無く見詰め続けた。
ナナミは悪魔が現れた場所に到着する。静かなソコで既に違和を感じていた。
戦闘が行われていない。
なぜ、そう思いつつも悪魔の出現ポイントに向かえば近くに戦闘員である天使達が集まっていた。
中にはグリーンの後輩もいて名前を呼ぶ。
「ナナミ、さん……」
振り返ったその少年天使は泣きそうな顔で騒動の中心への視界を譲ってくれた。
そこには、根本が赤く染まった美しいがひしゃげた翼があった。そう、翼だけ。
見たことのある翼と似ていて、呆然とする。いや、そんなまさか、
そのあとすべての天使が神殿に召集されたが弟だけ応じない。真面目な彼がサボるわけがないことを知っているナナミは、どういう意味か悟ったところで何も出来ることがなかった。
ただ、無力にうちひしがれるだけ。