神も仏も、(響緑)



「お帰り、ヒビキ!」

嬉しそうに笑うグリーンさんにコッチまで嬉しくなる。

全く、レッドさんには感謝しなくては。
グリーンさんが言ってたように目が似ているからか、久々の強い相手だったからか、聞いてない情報まで教えてくれた。

──グリーンさんには場所教えてないんですか。

──うん。僕は誰かに負けるまでココを離れるつもりはないからね。

彼は、レッドさんにはグリーンさんの気持ちがわからない。
グリーンさんは、チャンピオン戦で負けた後、ヤケになっていたらしい。
レッドに酷いことを言ってしまった。
レッドさんが見つからない見つからないとアテもなく探しては呟いていた。
果てには、レッドさんの話をした後は吐くようになっていた。
グリーンさんには、出来れば好きな人と、くっついて欲しかったのだが、

正直、アレはないと思う。

グリーンさんの事をちゃんと見もしないで「グリーンなら解ってくれる」なんてよく言えたものだ。だから、二人の理想を打ち砕いて悪いが、僕は現実的な幸せを優先させてもらった。

「なあ、ヒビキー」

「なんですか?」

フワリとした前髪をあげ額にキスをする。少しくすぐったそうにする彼がいとおしい。

「俺って何忘れちゃってんだろうな?大事な事な気もすんだけど」

「大事でも、忘れた方がいいことだったんじゃないですか?無理して思い出すのもあまりよくない気がしますよ」

それより、ホラ。
彼の口元に好物の洋菓子を持っていけば輝く目。
いただきますと言ってかぶり付く姿は少し、年不相応に見えて、
その無邪気な笑顔でずっと居てくれれば良いのになんて、

いない神様に願う。

だって神様がいるってんなら何で、グリーンさんは苦しまなければいけなかった。

近くに擦り寄ってきたエーフィの短い毛を流れに沿って撫でる。
エーフィのエスパーでレッドさんの記憶を壊したのは良いものの、他の記憶もボロボロになってしまったらしく覚えていることの方が少なかった。
幸い、俺の事は覚えていてくれて、再び信頼関係を築かないといけないわけではなかった。ただ、俺との出会いは覚えてないらしい。気づけばいた存在みたいな認識だ。

多分、ジムを忘れているから。

まあ、ソレでいいんだけど。
僕の存在だけでいい、この部屋だけが彼の全てなんだから。
今のグリーンさんに外の世界に対する認識はないんだから。

でも、僕の行動は間違っているかもしれない。僕のエゴかもしれない。

でも、それでいい。



この世には神も仏もいないんだから。





「ヒビキー。」
「? なんですか、グリーンさん。」
「愛してるよ」

「……僕も、グリーンさんを愛しています。」





いい夫婦の日・グリーンバースデー記念



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