聴きたいのは恋が愛になる言葉


リメレグリ(炎葉?)です。








カボチャの頭は聞きました。

“君はどこに行きたい?”

だから、俺は答えた。

“俺のもといた場所に行きたい。”

そうしたら今度は「君のあるべき場所じゃないのに?」と、またたずねられた。
だから、俺はまた答えた。

“そうだとしても、”




目が覚めるとそこは夕闇に彩られた、えらく彩度が低くも綺麗な夕焼けが窓から見えるオレンジにそまった白い部屋だった。
窓際に飾られている花は活き活きと瓶を飾っている。

外を見れば、階下で小さな子供たちがきゃいきゃいと変わった格好で騒いでいる。

周りの木々は既に赤や黄色に橙と暖かな色で子供たちを見守っていた。

──ああ、そういうことか。


俺が以前意識をここに戻したときはヒマワリが見えた気がする。それと、広大に冴え渡る群青の空に上へ上へと突き上がるような白い雲。ふたつのコントラストだけはハッキリと記憶している。
その時はぼんやりして、体に力は入らずに曖昧な世界のまま、また夢の中に落ちた。
だが、今回は信じられないくらいに体が軽い。なんだ、夏に俺は死神にでも乗っかられていたのか。

不意に、頭に「コレは賭けだ。」と言葉が過ったが、なんのことか解らずに深くは考えず周りに目を向ける。

どうしようか、

俺は今全快だ。そして今日みたいな日を何もせずに過ごすなんて頂けない。
ナースコールなんて論外だ。

きっとこの棟は患者服がウロウロしているだけで騒がれる。
幸い、ここは二階。窓を覗けば横にはパイプがあった。

手から栄養源へと繋がる枷を引っこ抜き俺は窓から飛び降りた。
運動神経はいい方だが急に動かした体はフワフワしてて上手くいかなかった。
最後はバランスを崩して着地したものの前につんのめった。
パイプを使って飛び降りたお陰で足は少し痺れたものの特に痛みは酷くなかった。

仮装して遊んでいた子供たちの「おぉ〜」という感嘆の声と喝采に「真似すんなよ」なんて返していると、飛び降りた部屋からアラームのけたたましい音が鳴り響く。
当然か。心音が確認できないんだから。

振り向くと横には集中治療棟と書かれた看板の下がっている玄関があってギョッとしたが、多分関係者は俺の部屋に向かっている筈だ。だが、おちおちしてられない。

子供たちにバイビーして俺はバカ広い庭をあがる息と共に駆け抜けた。

ジムにひっそりと寄ったあとマサラへ歩く。
ジムの看板には「臨時休業」と汚い字で貼り紙されていて鍵は閉まっていた。全く、裏口を指紋認証にしておいて良かったぜ。

そうしてマサラに着くと、ちょうど会おうと思っていた人物が家から飛び出してきた。
俺をみた後舌打ちをしてくる。
ズキリと痛みが走ったが、気づかないフリをした。
だってそうでもしないと俺はこのレッドに対する想いを認めてしまわないといけないことになる。

「トリックオアトリート!」

そう言うと彼はイライラしながら答える。

「誰か知らないけど、それどころじゃないから」
そう言って走り抜けようとする。急いで腕を掴んで引き留めた。
声で気づけよバカヤロー。
まあ、くぐもっているし、久々の声だから仕方ない。不服だが許してやる。……これ、去年と同じかっこだけど。

「おいおいイタズラしても良いのかよ!?」

ッチ。また舌打ちされる。ズグリと何かが抉られる。
「こっちは大好きな相手が消えちゃって大変なんだよ!」

怒鳴られた。
でも怒鳴られたことよりも俺は叫び出したかった。
誰だよお前の大好きな奴って!!!!
心はさっきまでの浮かれた気分を一瞬で凍りつけて冷えきる。
誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だ誰だよコイツのお前の大好きな奴って俺の知ってる奴か可愛い女の子なのか誰だよ幼なじみでライバルの俺より大事な存在なのか?

力の入らなくなった腕をレッドは払い除け背中を向ける。

拒絶されたようだった、



気づいたときには手に持っていた点火されていないカンテラを投げつけていた。
ガシャンッとなかなかに痛そうな音をたて向けられた背中にぶち当たる。
イライラとした顔が向けられた。

そんな表情なんか見たくない!!!!

そして顔面に向かって被っていたジャック・オー・ランタンと言われるカボチャの頭を投げつける。
避けられると思われたソレは見事レッドの顔面でキャッチされた。避けられたのを確認してから涙を見られないように走って逃げようと思っていたのに。

ゴッ、鈍い音をたてたカボチャは地面へと落ちる。
やってしまった、そう思いながら落下したカボチャを呆然と見ていると上から滴ってきた液体。それは綺麗な赤で暗くなった視界でもわかった。

まずい、

恐る恐る棒立ちしているレッドに視界をあげていく。
するとポカンとした表情でレッドは俺を見ていた。

どうした?

何が待っている?お前いつのまにやら作ってた好きな子を探しに行くんじゃないのかよ。なんでポカンとしてんだ、


「グリーン?」


ポンとレッドの口から出たなんともない質問をするような声に名前を呼ばれる。それに対して何があるか解らずにいるグリーンは警戒しつつも返す。

「なんだよ?」

「ほんとの本当にグリーン?」
「仮装のしたに変装する奴がいるかよ、」

返した途端、奴は飛びかかってきた。気付けば抱きすくめられてて勢いを相殺も出来ない。
マズイ、こいつは笑顔のままプロレス技かけてくるような奴だ、キレてるところに物を投げつけたんだ、何があるか解ったもんじゃない!!
そう思い、慌てていても一向にこない技。地面に倒れてからもギュッと抱かれたままだ。

そういえば、倒れたのに痛くない?

「良かった…」

ソッと頭上で溢された言葉、意味が理解できずに「え?」と聞き返す。

「どこ行ったかと思っただろバカヤロウ、凄い焦ったんだからな。」

バトルに勝利した後のようなホッとした声とは対照的に力強く腕に力が込められる。
知らねーよ、そんな事よりお前好きな奴探しにいかなくていいのか。

そのまま口に出すと不機嫌そうに「忘れろ」と返される。

「なんでだよ!?お前好きな奴なんだろっ適当に扱ってんじゃねーよ!」

なんで、俺がお前の好きな奴を気遣わないといけないんだ、ばかばかしい。
腕を振りほどいて起き上がる。
これ以上惨めな思いはしたくなくて去ろうとすると、後ろからイライラしたように頭を掻き回す音がした。

「あーっもう、解ったよ!言えばいいんだろ?俺が好きなのはグリーンだよバカッ大好きなんだ愛してる!!!!」

後ろからヤケになったように叫ばれる。不意に出された俺の名前はどうも都合がよすぎるタイミングにあげられた気がする。
思わず振り替えれば、一瞬目があった後に「言いたくなかったのに…」と目を背けながらばつが悪そうに呟かれた。

レッドが、俺を好き?

「本気で、いってんのか?」
「本気だよ、」

目頭が熱い。視界が滲む。レッドの「えっちょっとなんで泣いてんの?」と焦った声が聞こえてくるがこの涙を止める気にはなれなかった。
とうとう焦ったレッドが立ち上がり、近づいて俺の顔に手を伸ばしてきた。拭き取られる前に俺からレッドに抱き着く。

「俺もだよ!嘘だったら許さねーんだかんな!俺も大好きだ、愛してるレッド!」

肩口に顔を埋めながらいう、涙はコイツの服で拭いてやった。
幸せな気持ちに浸かっていると、「グリーン」と名前を呼ばれる。

「トリックオアトリート。」
「え、」

しまった。言われるなんて全く予想だにしてなかった。っていうかこのタイミングに言うかよバカレッド。

「……なんだ、自分もお菓子もってないのかよ、こっち向け。」

イタズラっ子の笑みのレッドを不服だが見上げる。すると、予想以上に近かったレッドの顔。


唇にあたる感触。


「グリーンからのイタズラはなんだよ?」
顔を赤くしながら聞いたレッドにポカンとしたあと釣られてこっちまで赤くなる。

「手だせ、」

釣られてぶっきらぼうに言ってしまったが、大人しく手が差し出される。
その手をしっかり握り込んだ。

「今日1日お前が恥ずかしくても離さねーから。」

「……おう」

レッドは手をまじまじと見つめた後に満面の笑みで返してくれた。

結局、このあと沢山の大人に叱られて泣かれたけど、その時もレッドはずっと手を握って一緒に怒られて泣かれてくれた。

検査は明日行うと連絡を受けたあとは沢山のお菓子をもらい、姉やみんなと笑いながら食べた。

頭の中に“負けたよ”なんて言葉が聞こえたがやっぱり意味は解らなかった。



高揚した気分のままに眠りにつくと、気づいたら寂しい静かな渓谷の中に俺は突っ立っていた。
向かいには奥からの緑の光を全身に受け逆光となっている何か。

カボチャ頭は聞きました。

“楽しかったかい?”

だから、俺は答えた。「おう、」と。
すると、カボチャ頭は困ったような声で言いました。

“やられたよ。楽しい人生を謳歌するがいい。”































だけど、忘れてはいけないよ。僕らは常に横にいる。




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