縛水(赤金緑)
終わりは来るんだろうか
どうしてこうなったんだろうか
「ぅ、げほっ………ぉえッ…!!」
水槽から引き上げられ恋しい酸素を思い切り吸い込んだ。
暗い、水槽の照明と反射した天井で波打つ光しかない部屋で今日も水底へ沈んでいく。
「「綺麗………」」
二人はまるで酔いしれるようにつぶやいた。
何が綺麗なんだ
何が普通なんだ
何が、
「げほっ……」
冷たい、体が冷える
呼吸なんて当然のものだというのに必死になって馬鹿馬鹿しい。
肩で息をして歯をガチガチとならす。しかし、こんなめに俺を遭わせている奴等はこの辛さをなかなか理解してはくれなかった。
抵抗する体力なんか残っていない。生き延びることで精一杯。
あがる息で不足した酸素を補うが足りない。
だからといってアイツ等が待ってくれるわけもない。
また腕を掴まれ引っ張られる。次に来る行為なんてわかりきっている。
「………も、やめ」ドポンッ!
重いものが水に落ちる音が暗い部屋にこだましたんだろう。俺には水に叩きつけられる音しか聞こえなかったが。
なんで俺って生きようとしてたんだっけ。
腕と足、更には体全体に巻き付けられた鎖から解放されようともがいてるときに誰かがいった。
絡み付く鎖が痛い。
絡み付く心が痛い。
絡み付く水が痛い。
だからさ、
もう、終わりにしようぜ。
今までは生きようと頑張ってたさ。
でもさ、お前等聴いてくれなかったからな。
もうわかんねーよ、何が愛してるなんだ。
抵抗するのはやめる。
そして口でとどめていた酸素を一気に吐き出した。
「──大好きだぜ、───。」
どうせ音は厚いガラスの向こうに届くことはない。
届いても聞いて貰えることはない。
水が一気に口に入り込む。入ってくる瞬間はすげぇ苦しいじゃねーか。
ガボリッと反射的にもがいてた俺の口から最後の生きる絶望が出ていった。
目に光を取り戻したのはどちらだったか。