これ以上愛せないから。




一緒に暮らすようになって一ヶ月が過ぎた頃。

俺にはレッドが壊れたように見えた。



これ以上愛せないから。



レッドはいつも家にいる訳じゃない。奔放癖があるから、よくいない。

けれど、夜になれば必ず帰ってくるし、耳元で愛までも囁いてくれる。

だけど、俺には壊れたようにみえた。
レッドは、確かに、俺に、「愛している」と伝えてくれている。
筈なんだ。

帰ってきてから暫くしたら再開される行為。
その行為から好意を感じ取れるのかすら解らない。

「っぅ………!!!いっ、……」

「ねえ、痛い?グリーン」


「い、ってぇ………」
感情をダイレクトに伝えるとアイツは酷く嬉しそうな表情で「そう」と返し、また作業かのように手をあげる。
ソレに俺は体を震わせることしか出来ない。

後は反動で壁に体をぶつけ、むせかえり、続く暴力を寛容するだけ。
そして、レッドからの甘い囁きに「俺もだよ」と返すしかない。意識が途切れるまで続く行為にただ、流されていく。

だって、折角性別の壁を越えて通じ合えたのに。
否定の意を唱えてレッドの癪に触れてみろ。
俺にはレッドを横に縛れるものなんて無いんだ。
入籍してないんだから、俺はレッドに置いてかれてしまう。

俺にはレッドが壊れたように見えた。

だが、あのレッドだ。
きっと無意味に暴力をふるっている訳じゃないんだろう。
だって、愛しているって言ってくれているんだ。
レッドの心に何かつっかえるものがあるに違いない。
きっとレッドは苦しいんだ。きっと俺に何か有るんだ。きっとこの関係の境遇とかのストレスもあるんだ!
そうだ、そうに違いない。俺が悪いなら、俺が苦しみをサンドバッグになってでも何をしてでも埋めてやらないと!!





俺には誰かが壊れたように見えた。











嗚呼、体が動かない!

この体を動かして抱き締めてやれたらいいのに!




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