騙してまでも(赤緑前提ゴーグリ)
どうしても影がちらつく。昔、英雄と讃えられ今は亡霊と云われている忌々しい影が。
強さは確かに尊敬するものがあるが、3年前に果たして彼は本当に正義感で悪の組織に挑んだのだろうか。寡黙な彼がいつそう証言したんだか。
俺の大好きな人はいっつもその影を引き摺って遠い目をする。愛しそうな寂しそうな目をする。儚い瞳は彼がかなりナーバスな時に顕れる。
それが俺の喉を締め付けて来て声を出す邪魔をしてくるし、あろうことか心臓まで握り潰そうとしてくるんだ。
なんで俺が今近くに居てやらないような冷酷な男のために苦しめられてるか解らない。
だから……………
「グリーン………」
「レッド…!!」
喜びに満ち溢れた顔が向けられる。こんなに嬉しそうな顔久しぶりに見た。
「何で今まで顔見せなかったんだよ!」
怒っているのだろうが、顔は泣きそうに潤んだ瞳と上がった口角で真逆の気持ちが勝っていることが丸分かりだ。
「ずっと待ってたの?」
そう聞くと少し言葉を詰まらせ顔を赤らめながらそっぽを向いて小さく頷く。ああ、なんでこんなに可愛いんだよ。
しかし、俺の口は真逆の言葉を紡いで空気に浸透する。
「待たなくて良かったのに」
小さく口角をあげそう伝えると「え」とだけ小さく呟き、目を見開く。
ああその顔がコレから起こる衝撃で更に歪められるのと、俺が手に入れる幸せを象徴しているようで、上がる口角が抑えられない。
「だから、迷惑なんだよ、」
「レッド……?」
驚きと動揺により揺れる瞳と震える手が向けられる。
その伸ばされた手をはたき落として、止めの一言。
言葉って呪いのようなもんだよな。この一言で彼の心を一瞬に奈落の底に突き落とせるんだから。
「だって僕、グリーンの事嫌いだし」
目を見開き、あまりの事に涙を忘れたように潤すこともなくただただ目を見開き、茫然としている。
コレは成功したな。ソレを確信し「じゃあね」と言ってその場を立ち去る。
そろそろ表情を抑えるのに限界があったから踵を返し早々にグリーンから離れた。
建物の陰に行き、モンスターボールを懐から取り出す。
「戻れ、メタモン」
自分に向けて赤い光線が放たれ、全身を包んだ後自分を纏っていた物ごと消えた。
建物を一回りして隠れたところとは違うところから覗くと横からの姿が見えた。
さっきの場所から殆ど、いや動いていないのかもしれない。
優しい彼の事だからきっと追い掛けたらアイツが嫌がると思ったのだろう。だから動けなかった。
眺めているとフラフラッと頼りなく足を踏み出し、今にも倒れてしまいそうだった。余りに力のない歩きだから「あ、支えてやらなきゃ」と思い急いで後ろに回り駆け寄る。
「グリーンさん!」
間。
一呼吸おいて深呼吸したのか肩がゆっくりと大きく揺れる。
「よぉゴールド!相変わらず元気そうだな!」
明るい声音で返されるが、やはり顔は憂いが帯びている。
やっぱ影からの一言は大きかったようだ。
「どうしたんすか…?」
「なにがだよ」
明らかにまた揺れる大きな琥珀のような瞳が報せる。傷付いてますよって。
「隠し事せんで下さいよ。」
追い討ちをかけて瞳を向ける。すると少しだけ迷った後に口を開きゆっくり話し出した。
「レッドが戻って来てたんだ。」「良かったじゃないスか?」
適当な相槌を打つ。
「俺も嬉しかったんだけど、その後、」
声が徐々に震えていく。
一旦言葉を区切る。言葉を切ってしまわないようにと、無言で待った。
「嫌いって言われた。」
うるうると瞳に膜が張っていき、輝いているようで本当に綺麗で見とれていると、ソレに気付いたのかグリーンがはっとし涙を手で拭ってしまい瞳が隠れる。
せっかくの綺麗な瞳が隠れてしまったことに残念に思っているとグリーンが話すのを再開した。
「わ、わりぃみっともねーとこ見せちまったな。」
「何でみっともねーんすか」
「は」
そういって抱き着く。理解が追い付かないグリーンはかなりわたわたしているが無視して、彼の形を確かめるように、俺が抱き着いてるのがグリーン自身だと確認するように強く抱き締める。
「ゴールド…?」
「何もみっともなくなんかねえっスよ。グリーンさんが苦しいのは俺もイヤッス、だからイヤなのも全部吐き出して楽になってください。」
苦しめたのは俺だけど。
「俺が全部受け止めますから、だから俺の前では全部隠さないで下さい。俺はどんなことがあっても嫌いになんかなりませんから。」
影もグリーンさんが好きだろうけど。
その後「わりぃ」と謝りながら泣きじゃくった彼の隣には俺がいる。
それでも影が消えることはなかった。
なら俺は────