一日千秋(レッド独白)



前に幼馴染みが訊いてきた。

地獄みてーな場所に独りでいて怖くねーのかって。

僕は答えた。
そりゃ怖いよ。でも独りじゃない、ポケモンがいてくれる。

僕からすればよっぽどみんながいる方が恐い。
それは、ポケモンがいれば尚更増す恐怖なんだ。


チャンピオンになった。
殿堂入りだけして旅立った。地位や名誉に興味ないから。
道端で色んなトレーナーと闘う、色んな世界を知る。そういったのが好きだったし、殿堂入りだって強い人と、出来れば闘い慣れたグリーン以外と闘いたくて挑んだものだ。まあ、チャンピオンにはグリーンがついてたけど。ワタルさん達と戦えたから良いや。

でも実質チャンピオン以上の実力、つまり地方最強が旅してると聞けば、歩くだけで向こうから試合を仕掛けてくるわけで。
あの時もそうだった。
仕掛けられて、普通に、

普通に戦っただけだった。

でも強くなりすぎた僕の手持ちは力加減をいくら頑張っても相手を必要以上に傷つけてしまう。
気づけば血の海だった。
辺りは鉄臭くなってて、呆然としてるともう仕掛けてきたポケモンもトレーナーも居なかったが、残った血の量が尋常ではなく、助からないのがいるかもしれない。

だから、隠れながらマサラに戻った。罪悪感というよりも挑まれる恐怖の方が大きかった気がする。
遠目で見た短パン小僧達のバトルは楽しそうだった。

そして、真っ先にオーキド博士の元へ行き、相談すると
シロガネ山を紹介された。
あそこなら野生も傷付ける心配もない位強く、トレーナーは強いものしか通されないようだ。

だから、僕が居ることは生半可な強さの者が来るのを避けるため内緒にして貰い、僕は山に引きこもった。
最初は地下にいたけど、強い人が来るのが待ちきれなくて見えるように頂上へ登った。

挑みに来るトレーナーなんて一人だけだった。
幼馴染みで親友でライバルのグリーン。
彼が僕を山から下ろそうと挑んでくるんだ。
だから、答えた。
強い人が沢山居たなら降りるよって。

後で知ったことだけど、地上では「闘いを求めてるシロガネ山の赤い亡霊」って都市伝説が密かに広まってるらしい。
僕がいるのを知っているのは最初は博士だけだったから博士が強い人が僕を訪れるように配慮してくれたのだろう。
グリーンもソレで僕としって来たらしい。
なんでも、最初は「赤い半袖の強い人がシロガネ山にいるらしい。」だったのが尾ひれがついていったらしくて、半袖って死ぬだろって事で既に死んでると解釈されたんじゃないか、そうグリーンが言ってた。

グリーンはやっぱり強くてバトルは出来るんだけど毎回僕が勝つ。
ほぼ決まった時間に毎回くるんだけど、今日は来ていないな。

変わりに電話が来る。
着信音がポケモンマスターになってやると言う歌だったので、グリーンからだと解った。
グリーンがポケギアを寄越してくれたときに既に彼専用の着信音が設定されていたのだ。

「グリーンだけど、近い内にゴールドっつうガキがそっち行く筈だぜ。ジョウトのトレーナーで今俺に勝ってった、強かったよ。じいさんには手配して貰えるよう話はつけといたからな。」

心臓が高鳴る。
グリーンよりも強い人が来る。僕と闘いに。
そう考えるとそれだけで楽しかった。
ジョウトの子供か、なら来るのは向こうからだろうか。
漠然とジョウトの方を眺める。律儀に洞窟を入ることなんてしなくても岩山を昇ればスグに来れるし。
3年も僕の専属状態になっていたジョーイさんも違う人と話せるし、僕も初対面のトレーナーと闘える。
旅立った最初の頃はソレが普通だったのにな。

僕は当たり前の幸福を噛み締めながら間もなく来るだろう金色を今か今かと待つ。


後ろから声かけられるその時を。




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