思考ジャック



「今ココで俺に倒されるんだからな!」
そう言いながら俺の後ろから階段を登ってきた彼に釘付けになる。

「行くぞ!「いやいやいや、ちょっと待て!」

問答無用でバトルを始めようとした妖怪アンテナ立ちっぱなしの赤毛に制止をかける。
先にツッコミ入れさせて貰わないと顔の筋肉がつりそうなんだよ。
「なんでそんなにキッチリしてんだよ!」

やっぱりツッコまれたと言ったような表情で渋るシルバーは、髪が前と後ろで分けられ、後ろは結われている。
服装と言えば、いつもと大差なくも見えたが、スーツを着ており中にはフリルが中心にあしらってあるシャツだ。どこの貴族だよ。

「アイツに、着せられたんだ………。」

くっ、と言った感じで恥ずかしさの余り両手で顔を隠してしまう。
アイツと言うのはカントージョウト総合リーグの現チャンピオンの事で、いつの間にかロケット団のチョウジアジトで会っていたらしく、かなりのトラウマになっているらしい。ただ、何がトラウマかは解らないが。
今回は、リーグに居座っていたらしくそれが見つかり「その場にあった格好をしてもらわないと」など言いながらイツキの手持ちだか本人の力だかよく解らないエスパーで捕まり、着替えさせられたらしい。

「着替えちゃえば」

心の中にある火の気に心地悪さを感じながらも一番の打開策を告げる。
姿だけならいいのにワタル関係の理由があるとこんなにも不快になるだなんて想像もしてなかった。
不機嫌な思いが滲み出ていたらしく少し顔色をシルバーが窺ってくる。

「一回試したんだが…」

ほう、直ぐにまたエスパーに捕まって、次は恥ずかしい格好にすると、脅された?
あの野郎共、俺が行く前から随分と余裕じゃないか。チャンピオンめ、イツキまで遣いやがって。

「シルバー、一時間だけ待ってて。」

「?」

「一時間でアイツラぼこしてくる。」
「は、ちょ…バカか!?おま」

リップ音をたてたキスをすれば、罵声の嵐は激化する前にやみ、一瞬呆ける。
その隙に
「だからさ、チャンピオン倒したら俺ともっと良いことしような?」
と耳元で話しかける。
このあとはみるみる顔が真っ赤になってまた罵詈雑言の嵐なんだけどよ………

紅くなった可愛いシルバーだけ拝んで走り出す。
ほら、やっぱ後ろからなんか言ってきた。
でも俺はシルバーのそのモヤモヤに応えてやらない。
だって、最近お前ワタルで頭一杯だったじゃんか。
だからさ、


今度はオレのこと考えててよ。



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