真夜中の雑音 中


あれから暫くレッドが一緒に帰ってくれてる。どうせなら昼間も一緒に居て欲しいのだが、視界が悪いわけでもなければ一人になることがないため生憎レッドに助けを求める理由もない。

レッドに会えるなら少し、ストーカーに感謝した。

だって毎回シロガネとトキワを往復してくれてんだぞ?
まあ、おばさんに心配かけんなとも言いたいが、俺だけのために下山してくれるって言うのが嬉しく言えていないのが現状なんだが。
今日も遅くなってしまったがなんとか日付を跨ぐ前にジムを閉めることが出来た。
鍵を閉め、扉の横を確認すればいつも通り壁に凭れてレッドが待ってくれていた。
「わりぃな」
「気にしてないよ」
という常例となった言葉を交わし、一緒に歩く。

以前、レッドは何時からいるのだろうと気になって聞いたことがある。すると辺りが暗くなったら来てると言った。
しかし、先日暗くなったからそろそろ来るのだろうかと思い外に目を向けると既に壁にはレッドが居て、しかもなかなか爆睡していた。その時は流石に風邪を引くと思いジム内に引き摺ったが、ジムトレーナーに勝負をかけすぎてまともにジムを開いてられなくなった為、ジムトレーナーに入れるなと言われてしまった。

話は脱線したが、その後いつ来るか見てたことがある。その時レッドが来たのは日が沈み出してすぐ。ジムが何時閉まっても良いようにアイツは夕方からずっと待ってくれていた。
多分今もそうなんだと思う。事実、たまに早く閉まってもレッドは外に既に居た。最近ではココアを出してるが、見てるコッチが寒くなる。
だって秋とはいえ、夜は大分冷え込むし、半袖だぞアイツ。

「お前寒くねーの?」
「………寒くないよ」
「俺が見てて寒いんだけど」
「グリーンって文句ばっか」

文句ばっかで悪かったな!そう言おうとすると、さっきまで目を前に向けたまま話していたのにいきなりレッドが自分の方を見て抱きついてきた。

「なっ、ななな何だよ!?」
いきなりの事にまともに喋れなくなり、周りには誰も居ないのに恥ずかしくなる。

「グリーンが居るから寒くない」

まあ、そんなことを言われれば俺が顔を真っ赤にしてしまうのは見え見えな訳で、意識してしまうと更に恥ずかしくなってしまった。
ああ、レッドってあったけぇな、なんてテンパってた結果考えていると勢いよくレッドが俺から離れる。
さっきまでレッドと降れていた箇所が外気に晒され、普段以上に寒く感じる。
レッドの体温に名残惜しさを感じながら、幼馴染みの珍しく機敏な行動に面食らう。
「どうしたんだ?」
「……………」

返事が来ないが、何かは解った。殺気がレッドから放たれている。レッド曰く「僕のグリーンに近づくなオーラ」。
レッドが無言で腰につけているモンスターボールを開き、名前も呼ばずに「火炎放射」と指示をする。
すると赤い光とともに巨躯から火炎放射が放たれる。
火の粉は辺り一面を焼き付くし、危うく火事になるかと思ったが、草むらだけに留まってくれたようだ。

「ありがとう、リザードン。」と言いながらリザードンをボールに戻すレッドを見てから辺りを確認する。
レッドが草むらに放ったと言うことはアソコに居たと言うことだ。まあ、人に向けて破壊光線を打つよりはまだ相手も生きる方法は有るだろう。…無傷は無理だろうが、
しかし、辺りには焼け焦げた死体どころか火傷に苦しんでる人間すら居なかった。野生は俺たちがゴールドスプレーを使っていたから居ないだろう。
レッドが灰になるほど火力を強めたか?

「穴………」

レッドが呟いて気づく。焼けた土で見つけにくいが、確かに人が通れるだけの穴がある。
「あなをほるか……。」

「僕が抱き着いた瞬間に殺気が来た…」

嫉妬されたね。

そう言って薄く笑ったレッドは次の日ジムに来なかった。



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