どうすればよかったの


少しだけコイツと話すのを許して欲しい。

独白

壁の向こうから語りかけてくる気配に目を覚ます。
ああ、懐かしい…。
俺の手持ちのフーディンだ。
近くに居るであろうアイツに悟られないように心の中でだけ呟く。

久しぶりだな、

そうフーディンに向かって念じればフーディンはやけに心配そうな意思を伝えてきた。
俺はなんてなついて貰っていたんだろうか。
出来るなら心配してくれる手持ちを抱き締めて撫でてやりたい。
ただ、叶わないことだが。

なあ、フーディン。今から俺の言うことを図鑑に念写してくれないか。そして誰でもいい、誰かに渡してくれ。

始めるぞ。

いきなり、フーディンに図鑑を渡されれば驚くだろうが、出来れば最後まで読んで欲しい。
最近トキワのジムリーダーが行方不明になっている筈だ。だが、オーキド・グリーンは死んだ。そういう事にして欲しい。
いきなり死んだとは何事だ。なんて思うかもしれないが、彼には罪がある。大事な友人の狂気に甘えた罪がある。彼はジムリーダーの仕事に疲れていた。だから、友人の言葉に乗ってしまった。悪いのは全て自分なんだ。
疲れていた俺に対して、アイツは「疲れてるんでしょ?来なよ。」とだけ言った。
アイツのその言葉がどんな意味かを解っていた筈なのに。乗ってしまったんだ。
そして、最初は優しかったアイツを同性だが確かに好いていた。なのに、徐々に愛情の求め方がおかしくなっていくのを止めれなかった。その責任は俺に有るんだ。だから、今なら逃げれるかもしれないが、逃げれないんだ。

「どうしたの、グリーン。」

俺を閉じ込めた犯人の声が姿と共に部屋に入ってくる。
無機質な笑顔に俺はもう幸せを見出だせない。
レッドが俺の目の前までやって来る。
そんなのフーディンと話してましたなんて言えるわけない。そんなことを言ったら間違いなく殺される。
俺がじゃない。フーディンが、だ。

「なにもしてない。」
「嘘はダメだよ。」

そう言ってゆっくり手が首元を這う。
「ひっ、」
喉が条件反射でひきつる。次に何が来るか解っているから頭はこんなに冷静な癖に体が怯える。
なら、避ければよかったのに、反射でもなんでも。
まあ、鎖や体調がその行為を邪魔して、更に避けたときの未来が邪魔するんだろうが。
首を這っていた指の動きがいつのまにか止まっていた。
ほら、来る。

徐々に入っていく力。あまり回らなくなる酸素。
喉が閉まっていく感覚。そのどれもが自分に起こっている現実には感じられない。
白んでいく視界の中目の前にいる赤の人物が自分に見えない壁の向こうから問い掛けてくる。
「僕の事考えてたんだよね、だってこんなに一緒にいるのに他の事考えらんないよね、君の大好きな僕が目の前に居るのに他の事考えられる訳無いよね。そうでしょ?ねえ、そうだって言ってよ。ねえ、グリーン。ああ、そうかゴメン力入ってた。ほら、言えるようにしたよ。」
殆ど自分を納得させるように言った俺を監禁した相手に
好きだった、だよ。バカレッドと心の中だけで呟き、出すのもツラい声で建前を呟く。

「腹減った。」

「一緒になんか食べようぜ、レッド。」

何日飯を食べさせて貰ってないことか。
なんせ、二日は放置され、その前も解らないくらいの日にちをメシヌキだ。
本当は違う誰か、ねーちゃんとかと温かい食事を摂りたいが、必要として欲しがっているコイツに答えてやるのがココまで狂わせてしまったことへのせめてもの罪滅ぼしだから。






end
すみませんオチ見失った



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