願いは誰が為に(↑続)


情事の後眠ってしまったシルバーには申し訳ないと思いつつも先にシャワーを使わせて貰った。

風呂からあがり、浴室が空いたことを伝えようとシルバーのいる部屋に入り、起きたか確認する。

するとどうしたことか。シルバーが泣いている。
しかも何故か狸寝入り中。
何故か悲しそうな顔をして、寝ているフリ。
そんなに俺とすんのが嫌なんかな。
正直にいって貰えれば俺はシルバーにすがり付くのをやめれるけど、
シルバーが言わないのをいいことに俺はシルバーに依存している。

そっと触れ、涙を掬うと眉間を寄せ、嗚咽を洩らされた。

そのあとも涙は止まらなかったが、臆病な俺は名前を呼ぶことももう一度涙を掬ってやる事も出来なかった。

最初から、好意を寄せられてる訳無いの知ってるから、
拒絶されるのが怖くて。

ベッドの脇に力無く座り込んで静かに自分も涙する。
誘ったのは自分だから、どうせ向こうは一人より都合がいいとか感じたんだろう。
もう、ご近所のコトネによりも全然恋愛対象にしか見れないってのに、一方通行で終わるとか虚しいな。
まあ、ホモとか「キモチワリー」とか言われそうだし言えないんだけど。
言ったら楽になれんのかな。
このモヤモヤ晴れんのかな。
シルバーは楽になれっかな。
シルバーが拒絶して好きでもない男としたくないって言える場を作ったら楽になれるかな。
拒絶するのは本当は優しい奴だから辛いかもだけど、コレから先が辛くないなら、

「なあ、シルバー…」

肩が小さく震えすくむのが、気配だけでも十分に伝わってきた。
それだけで次に続く言葉を言うのが辛くなる。
ゴメン、シルバーもう少しで自由だから…










「好きだよ、シルバー愛してる。」
ガバッ!!

気だるいであろう体を勢い良くシルバーが起こす音。
勢いで揺れたベッドのスプリング。
俺もつられて 振り返る。
そこには綺麗な瞳を目一杯に見開きながら今もポロポロと涙を流すシルバーが俺を上から見ていた。
白い綺麗な肌は相変わらず綺麗で、コレが最後と思うと少しどころか凄く胸が痛んだが、気づかないフリして言葉を続ける。

「今まで無理強いさせてゴメンナ、でも嫌って拒絶してくれたらもうしないから…」

言っていて案の定辛くなって顔は見れなくなってたけど、震えていく声が憎かったけど、なんとか
なんとか最後まで言い切った。



返事がこない。
んだよ、お前も言いづらいだろうが俺だってかなり必死こいて言ったんだぞ。と、拒絶される恐怖を振り切るように考える。
にしても遅い。
チラリと少し上を覗くと半開きにしてる口が見えた。
ただ、口の横を通り過ぎてく涙の量がさっきの何倍もあって、

「シルバー?」

と思わず名前を呼ぶと弾かれたように肩を揺らし、
俺の頬を勢い良く手で挟んできた。バランスを崩して前のめりに落ちそうになるシルバーがやっぱり愛おしかった。

「嘘だろ、……そんなに処理する相手に居て欲しいのか。」

嘘じゃない。というか、シルバーの声まで震えてる。
ていうか、
「なんだよ、ソレ。好きだからその、ソレ…コレに誘ってんだよ。嫌いな奴誘うかよ」

恥ずかしさと恐怖で固定されてる頬を残して目だけ反らす。
すると、
「嘘だから、目反らすんだろ…」
と、安心したのか力無く手と体をを元に戻すシルバー。
違うって、いってんのに!
否定されたのに少しムッときて、今度は自分が身を乗り出して片足ベッドに膝をつき、シルバーの頬を俺が押さえて目を見つめる。


「シルバー好きだよ、愛してる!!悪かったなホモ野郎で!」

と近い距離力一杯愛を告げた。
顔を見るのが怖くて勢いに任せてシルバーが倒れるんじゃないかって位抱きついた。
すると涙の感触が下着しか身に付けてないせいで肩にはダイレクトに伝わってくる。
それがまた悲しくて、
「覚悟してっから拒絶してくれて構わないから…」と今度は消えてしまいそうな声で言う。
背中に少しヒンヤリとした、それでも体温をしっかりと持った手が回される。
シルバーの腕、
慰めなんて要らないのに。
それでも悲しさの捌け口を見つけたと言わんばかりに目からは涙が溢れて、嗚咽なんて止まらなかった。
この手が俺から離れてかない未来が良かったな。

少しだけ回された手の力が強くなったのに気づける余裕が俺にはなかった。

「お前は男とするのが嫌じゃないのか?」

「シルバーならっ…」

「俺の事、嫌いなんだろ…?」
「大好きだよバーカ!さっきからいってんだろ…?」
負けじとゴールドもシルバーの背中を強く抱き締める。
「……お前としたのが初めてじゃないんだぞ?独占欲なんて意味成さないのに?」
待て、ソレ初耳。
「そっか、ソイツから離して悪かったな、でももう自由だから。」
「イヤ、アレは…、でもお前とが…良い。」
……
俺と…?
「…マジか?」
さっきとは違う意味で声が震えた。
「…マジ、だ。」
体温をあげながら更に強く抱き締められる。
でも、
「俺の事嫌いなんじゃ…」
「嫌い。」
やっぱそうだろ!?
「の反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対だ!」
え、は!?
「ちょ、数え損ねた!!何回だよ!?
っていうかどっちだ?」
「知るか馬鹿!」
少しだけ離れると真っ赤なシルバー。
答えは期待していいんだろうか?もういいや、ポジティブだ。
「ありがとうな、シルバー!!俺も大好きだ!!」

いままで以上に本音で笑い合えた気がした。


一抹の不安を残して。






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