神様、どうか。
俺を人形扱いしたって良いから。
だから、
一生のお願いです。
神様どうか一生アイツといさせて。
ベッドの上に力無く打ち捨てられた腕が目に入る。
アレは俺の手。当然の事を頭の中でわざわざ考える。それでも客観的にみつめてしまい、どうも自分の手と認識してないようだ。
この手は俺の中ではアイツに触れるために存在している。
だが、それがいつか
違う人間に引っ張られるためのモノに変わってしまうんだ。
ロケット団の執念深さは知っている。だから、遠くない日に復活するかもしれない、その恐怖に取り憑かれている。
その時俺はココから連れていかれてしまうんだ。
連れていかれるときは、一緒に居るアイツはロケット団に恨まれてるから殺されてしまうのかもしれない。
俺が止めようともその事実は変わらないんだろうな。
不意にベッドに残る体温に触れたくなった。
……この温もりを残したアイツは俺のこと何とも思ってないんだろうな。
そんな当然の事実すら今の俺には堪えた。
寒い、
怖い。
いつか来るかもしれない事実、
良くて性欲処理としか思われてない事実、
引き離されるかもしれない事実。
神様なんて信じてないが、居るならば、
せめて、
せめてコレだけは叶えてください。
どうかアイツを俺から離さないで下さい。
あんなに俺を気に掛けてくれたのはアイツが初めてだから、
俺が三年間で心を許せたのもアイツが初めてだから。
アイツが何とも思ってなくても、それでも良いから、どうかアイツから俺を離さないで。
シーツが濡れる。
ソコで、現実に引き戻された。なんて女々しい事をしてんだ自分は。
鼻で笑うが、流れる涙はむしろ増えていく。
そんなの無理に決まってんのに。
後ろから扉の開く音がして、急いで目を閉じる。
深い呼吸の物真似をした。泣いてることを悟られたくなかったから。
「シルバー、起きたかー?……シルバー?」
顔を覗き込む気配。覗きこんでんじゃねーよ、バーカ。
どうせ、俺の事なんか何とも思ってないくせに。
頬に温かいアイツの手が触れる。
触んな!
そう言うのを堪える。
「ヒクッ…」
ああ、なんて馬鹿な喉なんだ。言う代わりに嗚咽を漏らすなんて、意味ないだろ。
ホラ、もう触れてこない。
やっぱり引かれた。
俺の事を思ってないから。
もう一回だけ、同じことを心の中で呟く。
神様、どうか、アイツが俺の事を見捨てませんように。愛想を尽くして消えてしまいませんように。
俺の事をどう思ってるかなんて怖くて聞けなかった。