昔、グリーンなるものありけり。


好きだった。

いつまでも君の事をずっと思ってたのに。
過ぎ去ってしまった時間をもとに戻そうなんて無理な話だけど。
いつまでも関係が続くって思ってたのに。
過ぎ去ってしまったから後悔することが出来たんだろうけど。

とにかく、好きだったんだ。
違う。
今も好きなんだ。

だから、苦しくて。助けて欲しくて。
でも、きっと僕より君の方が辛いんだろうね。
別れた時、無表情な僕に対して、君は泣きそうで。
今もくっきり記憶に残ってる。
眉間にシワをよせて、君は無理矢理笑顔を作って、こう言うんだ。
「面倒な奴が一人減って清々するぜ!」

君がそう言ってくれたから、だから、僕は旅に出てしまったんだよ。
辛かった。寒さなんかどうでも良いほどに身体を孤独が蝕むんだ。
独りが苦痛なんて知らなかったよ。
ポケモンは確かにいてくれるけど、言うでしょ?
人肌が恋しくなるって。
数学みたいに原点だ、ラスボスみたいに化物だ言われるけど、僕も人間だってことだよ。

だから、綺麗な金色の瞳をした、僕よりも年下の少年が僕に勝ったとき、
ポケセンで回復が終わるのを待ちながら
ずっと考えてたんだ。

思い返したら金色の少年が泣きそうな顔で言ってたな。
「山を降りてください。」

無理矢理勝ちに来たのかな。
だって勝てるんならもっと早くに来てくれてれば間に合ったのに。

いくつものコードをこれほど恐ろしいと思ったことは無いよ。なんで君から伸びてるの。
死人に口無しなんて誰が言ったの。僕は信じないよ。
いつの間にか後ろにいた金色の少年は僕の事を軽蔑してるのかもしれないけど、彼の持ってるポケギアって奴を僕にくれれば山をスグに降りれたのに。逆ギレって知ってるけど。

人肌が恋しいって思った時に降りとけば良かったな。ねぇ

「グリーン」

ゴメンね。
名前を呼んでも起きることはないんだろうけど。

薄く開いた瞼の隙間からのぞく森のような色の澄んだ目が僕を捉える。



……………………………
………………………………………
………あれ?
なんで?常磐の森でグリーンが血塗れで、見つかったって。危篤って。え?危篤って峠を悪い風に越したことを言うんじゃないの?

驚いて目を見開くグリーンにこっちも負けじと目を見開く。
だって、あれ?
ゴールドは目を覚ました!!なんてバタバタと医者を呼びにいってしまい訳も聞けない。

とりあえず本人に聞くしかない。
「心配したんだよ」
なんで血塗れで倒れてたの。
って意味も勿論込めた。というより、それしかこもってない。

「街に迷い込んだピカチュウが、トラックに跳ねられそうで、ポケモンは間に合わないから………で、森に返した。」

で、記憶終了?

おお。

バカじゃないの。

うるせーな。半袖で雪山いる奴に言われたくねー。

そうやって2人は笑い合えていた。





僕を呼ぶ騒がしい声がする。
僕を倒した暫定的に最強となっている少年だ。
今からグリーンのお見舞いに行くから構ってあげないけど。

なんて、思うだけで隠れもしなかったから簡単に見つかってしまった。

「グリーンさんの容態が急変して…!!」




「え?」



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